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『本にまつわるミステリー』(オットー・ペンズラー編)

本書には「本にまつわる奇妙な話」が三つ収録されている。

1.『カクストン私設図書館』(ジョン・コナリー)

The CaxtonPrivate Lending Library & Book Depository』(JohnConnolly,2013

2.『亡霊たちの書』(リード・ファレル・コールマン)

The Book ofGhosts』(Reed Farrel Coleman,2003

3.『巻物』(アン・ペリー)

The Scroll』(Anne Perry,2012

c0077412_17012447.jpg三つの中でいちばん気に入ったのは1の『カクストン私設図書館』。その前半の概要は――

1968年の秋、36歳のバージャー氏は、勤めていた役所の移転と母親の死をきっかけに退職し、母の遺したグロッサムの家で長年の夢だった物書きの生活を始める。しかしすぐに自分に才能がないことに気づくと、平凡な読者という立場に落ち着き、毎晩線路脇を散歩するのが習慣になった。そんなある日、バージャー氏は黒いドレスの美しい女性が、持っていた赤いバッグを放って列車に飛び込むのを目撃する。これがバージャー氏とアンナ・カレーニナとの出会いだった。2月に再びアンナが現れたとき、バージャー氏は彼女が列車に飛び込むのを邪魔する。そのまま立ち去ったアンナの後をつけると、アンナは古い倉庫群にある赤煉瓦の建物の中に消える。月明かりの中でバージャー氏がドアに刻まれた名前を読むと「カクストン私設図書館」とあった。

作中に次のような句節があり、共感を覚えた。

「新しい役所となる建物は寒々しいブロック建造物だ。個性や奇抜さをいっさい排除し、スチールやガラス、鉄筋コンクリートを用いた普遍的なデザインが特徴の建築家ル・コルビュジェの信奉者が設計したという。この建物は、かつて豪奢なヴィクトリア朝の駅舎があった跡地にその無個性で無粋な姿をさらしている。」

2018.7.22読了)


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by nishinayuu | 2018-10-13 17:07 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)


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『本にまつわるミステリーⅡ』(オットー・ペンズラー編)

本書はオットー・ペンズラーが電子書籍化した短編の中から10作品を選びだして3巻に分けたシリーズの2巻目である。オットー・ペンズラー(1942~ )はアメリカのジャーナリスト、作家、評論家、ミステリー蒐集家であり、「ミステリアス・プレス」というミステリー専門出版社の創設者でもある。

本書には「本にまつわる刑事・探偵小説」が三つ収録されている。

1.『本棚殺人事件』(ネルソン・デミル)

The BookCase』(Nelson DeMille,2011

冒頭に死体が登場するが胸の悪くなるような描写はなく、語り口も話の展開も軽快で楽しい作品。

2.『絵本盗難事件』(ローラ・リップマン)

The BookThing』(Laura Lippman,2012

紙の本の行く末を考えさせられる作品。殺人もなければ、「悪い人間」も出てこない。舞台はエドガー・アラン・ポーの出身地であるボルチモア。

3.『ブック・クラブ殺人事件』(ローレン・D・エスルマン)

Book Club』(Loren D. Estleman,2012

登場人物たちの丁々発止のやりとりが愉快な作品。舞台はニュー・メキシコ州の小さな町、グッド・アドヴァイス。元刑事で今は本屋の主であるシェアクロスと警察署長のドカティが手を組んで、愛書家殺しの犯人を追いつめる。

2.のタイトルとなっている「BookThing」は実在の施設で、本の寄付を受け付け、欲しい人は誰でも無料で本がもらえるようになっているという。開館日は毎週末。無料でもらえる本の上限は一日に15万冊。(捨てるに忍びない本を持ち込めるこんな場所がわが家の近所にもあればいいのに。)

2018.7.16読了)


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by nishinayuu | 2018-10-08 09:41 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)


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Puisquerien ne dure』(Laurence Tardieu, 2006

本作はパリ在住の作家・舞台女優の著者による3作目の著作。発表時の年齢は34歳だという。

パリのアパルトマンに手紙が届く。「ヴァンサン、私はもうすぐ死ぬの、会いに来てもう一度だけ会いに来て、あなたに会って、触れて、声を聞くのは最後になるわ、会いに来てヴァンサン」と鉛筆で書かれている。本文の下に、読みづらい小さな字でジュヌヴィエーヴとある。それは二人で結んだ暗黙の契約を破る手紙、ヴァンサンを抹消したはずの過去に引き戻す手紙だった。

手紙を読むなりヴァンサンは車に飛び乗ってジュヌヴィエーヴの許に向かう。出合った頃にジヴェルニーを散歩した日のことがふいに鮮明に蘇る。薄紫のワンピースを着たジュヌヴィエーヴが、そして二人の喜びが。30年前のジヴェルニーでの光に満ちたあの日は、その後に続くあのぞっとするような日々のとっかかりとしてだけ忘却の淵から現れる。ジュヌヴィエーヴと再会するなんてどうかしている、引き返そう、と思いながらも、ヴァンサンはアクセルを踏み込んでジュヌヴィエーヴの許へ急ぐ。まるで破滅へ突き進むかのように。

15年前、ヴァンサンが40歳のとき、それまで幸せいっぱいだった二人に、大きな禍が襲いかかる。悲哀は人を近づけるというが、ヴァンサンとジュヌヴィエーヴはそうではなかった。悲哀は二人を引き離し、二人の相違を明らかにした。ジュヌヴィエーヴは田舎の静けさの中で悲しみを抱きしめることを選び、ヴァンサンは都会の喧噪の中に身を置いてすべてを忘れることを選んだ。そして15年という歳月が流れた今になって、ジュヌヴィエーヴがヴァンサンに呼びかけたのだ。死ぬ前に会いに来て、と。

この作品は2005年のヴァンサンによる語り、1990年のジュヌヴィエーヴによる日記体の語り、そして再び2005年のヴァンサンによる語り、という3部構成になっている。それぞれの思いが細やかに綴られていて心に浸み、涙なしには読み進められない。

なお、本作はプリンス・モーリス恋愛小説賞とアラン=フルニエ賞を受賞しているそうだ。後者の受賞作にはアメリー・ノートンの『殺人者の健康法』の名も見える。(2018.6.26読了)


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by nishinayuu | 2018-09-28 11:03 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)


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Shosha』(Isaac Bashevis Singer

物語の舞台は第二次世界大戦前のワルシャワ。著者は「はしがき」で、「この小説は決して、ヒトラー以前の数年間におけるポーランドのユダヤ人たちを描いたものではない。またとない状況におけるまたとない数人の人々の物語である」と言っているが、その「数人の人々」がなんと鮮明に、印象的に描かれていることか。そして語り手が彼らと別れた後の、彼らの人生の終わりまでが、なんと懇切丁寧に描かれていることか。さて、その数人の人々とは

*アーロン(愛称アレーレ、別名ツツィク)――語り手。少年時代をワルシャワのゲットーとも言えるクロホマルナ通りで過ごし、後にイディッシュで著述する作家となる。

*ショーシャ(愛称ショーシェレ)――クロホマルナの幼なじみ。発育不全気味だったが、語り手にとってはかけがえのない存在。後に語り手と結婚する。

*バシェレ――ショーシャの母親。20年ぶりにクロホマルナの7番の建物を訪れた語り手を、以前と全く変わらない姿と態度で迎え入れる。語り手が再び現れたことに驚いた気配もなく。

*ドラ――20代の語り手が「作家クラブ」で知り合い、付き合うようになった女性。共産党員。

*モリス・ファイテルゾーン――語り手より25歳ほど年上の売れない哲学博士。最高級のディレッタントで、華麗な女性遍歴を誇る。語り手の才能を見いだし、作家デビューを支援してくれた、語り手にとって大切な友人。

*シーリア――ファイテルゾーンの崇拝者の一人。読書家で鋭い批評眼の持ち主。語り手にファイテルゾーンとの関係を打ち明けたことをきっかけに、語り手と親密な間柄になる。

*ハイムル――シーリアの夫。資産家の息子だが身体が小さくて虚弱なため、シーリアが母親のように世話をしている。ずっと後にエルサレムで語り手と再会し、昔の知人たちの消息を語り手に伝える。

*ベティ・スローニム――イディッシュ劇場に出演するためにポーランドにやって来たアメリカの女優。ファイテルゾーンから紹介された語り手に芝居を書くことを勧める。夫のサムは大金持ちでスポンサー的存在。

語り手の思いを伝える句節を以下にメモしておく。

*(作家クラブにて)ポーランド人たちはぼくたちを厄介払いしたがっている。彼らはぼくたちを片付ける勇気はないけれど、ヒトラーが代わりにやってくれたら涙一つ流しはしないだろう。

*(シーリアの家にて)会話は、なぜ私たちがワルシャワを立ち去らないかという疑問に行きつき、そして私たちめいめいが多かれ少なかれ同じ答を出した。私はショーシャを置き去りにはできない。ハイムルはシーリアなしに行くつもりはない。その上、三百万のユダヤ人が留まっているのに、逃げ出して何の意味がある?

2018.6.26読了)


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by nishinayuu | 2018-09-23 09:46 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)


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TheWashington Square Enigma』(Hary Stephen Keeler, 1933

物語は次のように始まる。所はシカゴの北東部にあるワシントン広場。時は11月。ミシガン湖から吹いてくる肌寒い風ががらんとした駐車場を吹き抜け、広場に散在するベンチを占領している浮浪者たちが、薄い上着の前をぐいと寄せ合わせる。そんなわびしいベンチの一つに座っていたハーリングは、誰かが捨てていった日刊紙の広告に目を見張る。広告の内容は「1921年発行の5セントの白銅貨で、自由の女神の頭を囲んだ星の数が13個ではなく12個のものを30日間貸してくれれば、1枚につき5ドル支払う」というものだった。(第1章)

ハーリングはたまたま星が12個の5セント貨を持っていた。実はこれがほぼ全財産だったハーリングは、広告主の家に行くための交通費を手に入れるために、広場に面した地区の空き家から何か換金できそうな物を盗み出すことにする。そしてハーリングが空き家の一つに入り込むと、床に老人の死体が転がっていた。(第2章)

このように本作は冒頭からめまぐるしい展開を見せ、本質は生真面目な青年である主人公の運命やいかに、という興味がかきたてられる。登場人物の名もサミュエル・ボンド・シニア、マイケル・ボンド、フェルプス・モーニングスター、ジョン・ヘミングウェイなどなど、どこかで聞いたような名でなじみやすい。豪邸に住む美女とフィリピン人の使用人、美女に纏わり付く従兄弟、無宿者に変相していた私立探偵など、登場人物たちの言動も興味深い。というわけでまあまあ楽しめる作品だと思うのだが、訳者の評価は手厳しい。「訳者あとがき」によると「本書は、そのあまりに荒唐無稽な作風から、史上最低の探偵小説家という称号を冠せられたキーラー(18901967)による15冊目の長編小説」であり、「作者には登場人物の内面を丁寧に描こうなどという意図はハナからないようであり」、「ぞくぞくするような緊張感とも縁がないようで」、ということになる。

また「訳者あとがき」に引用されているキーラー協会のリチャード・ポルトの言葉によると、「キーラー作品の特徴は、不可解な事件、方言、科学的事実、奇妙な人名や場所が織り込まれていること」だそうだ。まさにそこがこの作品の魅力ではないだろうか。ミステリー通から見れば駄作かもしれないが、様々なミニ情報が盛り込まれた読み物と思えばいいのでは?(2018.6.20読了)


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by nishinayuu | 2018-09-13 09:42 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)


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OffretSacrificatio』(Andrey Tarkovsky, 1984

本書は映画『サクリファイス』(1986,スウェーデンとフランスの合作)のもとになった小説で、タルコフスキーはこれを19842月にイタリアのサン・グレフォリオで脱稿している。

物語は6部構成になっている。第1部の「散歩」ではまず郵便夫のオットーが自転車で登場して、入り江にいるアレクサンデルに誕生日の祝電を届けにいく。アレクサンデルは幼い息子にこの土地に家を建てたいきさつを話している。そして大きな枯れ木を岩の割れ目に押し込んで「イケバーナだよ。ずっと昔ある人が枯れ木に毎日水をやっていたら3年後に花が咲いたんだ」と教える。子どもは声帯の手術を受けたばかりで話すことも笑うことも禁じられているので、黙って聞いている。郵便夫はアレクサンデルと神やらニーチェやらについて議論する。

2部「戦争」、第3部「祈り」、第4部「魔女」、第5部「朝」と続き、第6部「救急車」ではアレクサンデルがテーブルに椅子を積み上げ、テーブルクロスに火を付ける。家は燃え上がり、アレクサンデルは救急車で病院へ運ばれる。その途中、アレクサンデルは水の入った大きな桶を枯れ木のところに運んでいる子どもを目にする。

最初と最後の場面は映画と同じだが、その間の印象がかなり違う。映画はとにかく映像が素晴らしく、火事の場面などは美しさに圧倒されるが、登場人物たちの性格や心理がわかりにくい。場面転換が唐突でめまぐるしく、会話が断片的だからだ。一方本作は、場面転換は緩やかだが、今度は登場人物の饒舌さと会話の深遠さについていけない。

以前、映画『2001年宇宙の旅』を見たとき、内容がイマイチ理解できなかったので原作を読んでみたら、ますますわけがわからなくなった、という経験がある。この作品もそれとよく似ている。迫力のある忘れ難い映画なのだが、内容がしっかり理解できない、というもやもやが残るのだ。

映画では登場人物たちがスウェーデン語、英語、フランス語などをチャンポンに使いながら会話を進めている点が印象に残ったが、本書には言語についての言及はない。

2018.6.15読了)


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by nishinayuu | 2018-09-08 10:37 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)


c0077412_08574679.pngThe GlassSlipper』(Eleanor Farjeon, 1955

著者のファージョン(18811965)は第1回アンデルセン賞を受賞したイギリスの児童文学作家で、代表作は『リンゴ畑のマーティンピピン』。

本作の主人公は16歳のエラ。継母やその連れ子の姉たちはエラを蔑んでシンデレラ(灰だらけのエラ)とかシンダーズ(灰だらけ)と呼ぶ。しかもエラは2階の素敵な部屋を追い出されて、穴蔵のような地下室の台所で寝起きさせられ、朝から晩まで3人にこき使われている。けれどもエラには古い時計の「おじいさん」をはじめ、蛇口や箒、火かき棒と火箸、揺り椅子、食器などの「台所のものたち」という親しい友だちがいる。留守がちのお父さんも、旅から帰るとまず台所のエラに会いに来てくれるから、エラは寂しくはない。エラは寒さにも負けない丈夫な身体をしていて、仕事がいくら多くても音を上げないし、「台所のものたち」にも「おじいさん」にもぽんぽんものを言う。すなわち本作の主人公のエラは、はつらつとした、そしてかなり強かな娘として描かれている。

また、世のシンデレラ物語では全く影が薄いお父さんも、この作品ではかなり出番が多い。ただしエラの継母である自分の妻や、妻の連れ子たちの前では小さくなっている実にだらしない姿がリアルに描かれている。また、継母は粗野で意地が悪い女性として、義姉たちは教養の欠片もない娘として描かれているだけでなく、そろいもそろって不細工な姿形に描かれている。特に母親はカツラの下がツルッパゲであるとしてその無様さが示されているが、今だったら許されない不当な表現である。母と娘たちのやりとりは滑稽さがこれでもかというほど誇張されていて、ちょっとしらける。

人物の言動には精密さとリアリティーがある一方で、ものたちがしゃべったり妖精が登場したりというファンタジー的要素はそのまま生かされている。全体として、人物だけがやけに現実的な「シンデレラ物語」と言えよう。

ファージョンは『リンゴ畑のマーティンピピン』を読んで感動して以来いろいろな作品を読んだが、やはり最初に読んだ『リンゴ畑のマーティンピピン』がいちばんの傑作だと思う。(2018.6.14読了)


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by nishinayuu | 2018-09-03 09:03 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)


c0077412_08424088.jpgO HomenDuplicado』(José Saramago, 2002

主人公は中学校の歴史教師であるテルトゥリアーノ・マッシモ・アフォンソ。バツイチでひとり暮らしの彼は一時的な鬱状態に悩まされていた。そんな彼に同僚の数学教師があるビデオを勧める。「傑作ではないが一時間半楽しむことができる」というそのビデオは『たゆまぬ者は狩を征する』というタイトルだった。軽快であると同時にばかげて無分別な映画だった。テルトゥリアーノ・マッシモ・アフォンソは二回笑い、三、四回微笑んだが、同僚に乗せられて何かを期待してしまった自分を罰するかのように、持ち帰っていた試験の答案を深夜まで採点した。それから古代メソポタミア文明の本をベッドに持ち込み、ハンムラビ王と法典の章を4ページ読んだところで安らかな眠りに落ちた。

1時間後に目を覚ましたテルトゥリアーノ・マッシモ・アフォンソは「家の中に誰かいる」と感じた。家中を探索してその存在が感じられるところ――ビデオの映像に行き着いたテルトゥリアーノ・マッシモ・アフォンソはもう一度『たゆまぬ者は狩を征する』を見るために再生ボタンを押す。そしてビデオ開始から20分後、ヒロインがホテルのカウンターに向かって従業員の男に声を掛けると、その男の顔がこちら向きに映し出される。静止画像にしてテレビの前にひざまずき、顔を可能な限り近づけて見て、テルトゥリアーノ・マッシモ・アフォンソは確信する。「これはぼくだ」と。ただしビデオの男には口ひげがあり、ヘアスタイルも違うし、顔もほっそりしている。驚くほどよく似ているが、それ以上ではない、と思いながらビデオのケースを見ると、今から5年前の制作だとわかる。すると突然世界が揺れ動いた気がした。震える手で5年前の写真を取りだしてみると、そこには口ひげがあり、ヘアスタイルもほっそりした顔もビデオの男にそっくりな自分がいた。こうしてテルトゥリアーノ・マッシモ・アフォンソの「そっくりな男」を突き止めるための必死の探索が始まる。はたして「複製人間」というものは存在するのか。存在するとしたら、「複製人間」は端役俳優の方なのか、それともテルトゥリアーノ・マッシモ・アフォンソの方なのか。

この作品には身体的活動だけでなく精神活動も同じかそれ以上の比重で綴られているので、かなり難解である。さらにこの作者特有の「段落も改行もいっさいなし」の文体が難解さに追い打ちを掛ける。それでも最後まで読み進めずにはいられない強烈な魅力を持つ作品である。

この作品は「Enemy」というタイトルで2013年にカナダで映画化され、ジェイク・キレンホールの演じる主人公の名はアダムとなっているという。テルトゥリアーノ・マッシモ・アフォンソのままでいいのに。なお、日本でも2014年に公開されているそうだ。(2018.6.10読了)


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by nishinayuu | 2018-08-24 08:49 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)


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TheCasebook of Jeeves』(Wodehouse

文春文庫には「ジーヴズの事件簿」というタイトルの本がふたつあり、それぞれに「才知縦横の巻」、「大胆不敵の巻」という副題がついている。本書は2番目の「大胆不敵の巻」で、ウッドハウスの「ジーヴズ&ウースターもの」と分類される80近い作品の中から選ばれた下記の作品が収録されている。


*トゥイング騒動記(大説教大賞ハンデ戦/レースは神聖にして/都会的センス)

*クロードとユースタスの出港遅延

*ビンゴと今度の娘(その1――ビンゴと今度の娘/その2――終わりよければ)

*ジーヴズと白鳥の湖

*ジーヴズと降誕祭気分

*ビンゴはすべてこともなし

主要登場人物は以下の通り。

*バーティ・ウースター(有閑階級の青年。執事に頭が上がらない。)

*ジーヴズ(バーティの老練な執事。賭け事でもはかりごとでも主より数倍上手。)

*ビンゴ・リトル(イートン校以来のバーティの友人。万年振られ男。)

*ヘッペンストール師(グロスターシャー州トゥイングの牧師。)

*ミスター・ステグルズ(悪賢い賭け事師。)

*クロードとユースタス(バーティの従兄弟たちで双子。桁外れの悪ガキ。)

*アガサ叔母(双子の母親。ハーフォードシャーのウーラム・チャーシーに住む。)

*ミス・ロバータ・ウィッカム(派手な赤毛の女性。ジーヴズによると赤毛は危険。)

*ロージー・M・バンクス(著名な女流作家。ミセス・ビンゴになる。)

ジーヴズは主人であるバーティをうまくコントロールしつつしっかり支えている、バーティにとっては必用欠くべからざる存在である。ほぼ完璧な執事であるジーヴズは、実は勝つためなら裏工作も辞さないほどの賭博好きなのだが、平素はそれを表には出さずに丁重、慇懃な態度を崩さない。未熟な若造のバーティと経験豊かで強かなジーヴズとの上下関係を超越したやりとりが楽しい。(2018.5.27読了)


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by nishinayuu | 2018-08-19 16:12 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)


c0077412_09441000.jpgBookseller』(Mark Prayor, 2012

著者のデビュー作だという本書は、セーヌの河岸の露店で古書を売るブキニストの世界を舞台にしたサスペンス。主人公がセーヌ河を中心にパリのあちこちを歩き回るので、読んでいると一緒にパリを歩いているような気分になれる。ただしこの本を旅行案内書や参考書として使うのは止めたほうがいいかもしれない。というのも著者が前書きで次のように言っているからだ。

「私はパリをとても愛しているが、その歴史や地理にときおり勝手に大きな変更を加えることを余儀なくされた。私の身勝手な要求に合うように出来事を創作し、街を捏造した。あらゆる誤り、不当表示は、私のせい、私だけのせいである。」

主人公は元FBIのプロファイラーで現在はアメリカ大使館の外交保安部長であるヒューゴー・マーストン。別れた妻に未練があるヒューゴーは、妻へのプレゼントとして2冊の古書を馴染みのブキニスト、マックスから買う。その直後にヒューゴーは、マックスが屈強な男に拉致されて船で連れ去られるのを目撃する。すぐに警察に捜査を依頼するが、マックスが進んで船に乗ったという目撃証人が現れたとかで、事件性が否定されてしまう。そこで自ら捜索に乗り出したヒューゴーはマックスがナチ・ハンターだったという事実を突き止める。さらに、彼から購入した古書が極めて高価な稀覯本であることも判明する。やがてマックスが溺死体となってセーヌ河に浮かび、さらに二人の人間の死体がセーヌ河で見つかる。

何が彼らを死に追いやったのだろうか。そしてヒューゴーが手を打つ前に稀覯本は人手に渡ってしまったが、誰が何のために高価な本を慌てて購入したのだろうか。ヒューゴーは沈着かつ大胆に事件解決に向かって突き進む。

その他の主要登場人物は以下の通り。

*トム・グリーン(生真面目なヒューゴーとは性格が真逆の友人。元CIAの局員)

*エマ(ヒューゴーの秘書。非常に有能で、しかもユーモアセンス抜群)

*クラウディア(ジャーナリスト。ヒューゴーとは互いに引かれあっている)

*ジェラール・ド・ルション(伯爵で財産家。クラウディアの父親)

*ブルーノ・グラヴァ(パリ古書店組合の新会長)

2018.5.17読了)


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by nishinayuu | 2018-08-04 09:48 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

読書と韓国語学習の備忘録です。


by nishinayuu