人気ブログランキング |

タグ:洋書 ( 113 ) タグの人気記事

c0077412_10081613.jpg


『クリスピナ・アンバリーの失踪』(マンロウ)

バルカンに向かう列車に乗りあわせた二人のイギリス人。一人はジャーナリストで、もう一人はワイン業界の人物。二人とも「おしゃべり」ではないので、そのためかえってときどきことばを交わすことになる、というわけでワイン業の男が伯母クリスピナ・アンバリーの数奇な失踪事件を語り始める。

伯母のクリスピナ・アンバリーは、家族をはじめ周囲のすべての者の上に君臨する恐るべき女性だった。伯父のエドワード・アンバリーは世間的には強い男性として通っているが、明らかに伯母に支配されていた。息子たちや娘たちにいたっては、勉強・友人・食事・娯楽・信仰から髪型まで、伯母の考えと好みによって決められていた。そんな伯母が何の前触れもなく不可解な失踪をしたため、家族は茫然自失した。セント・ポール大聖堂が、あるいはピカデリー・ホテルが一夜にして消えてしまい、その跡がぽっかりと空き地になったかのようだった。

しかし家族の立ち直りは早かった。娘たちはみんな自転車を買った(当時は女性の間でサイクリングが流行っていたのに、クリスピナは娘たちが自転車に乗ることを断固として許さなかった)。成績が思わしくなかった末の男の子は学校に行かないことにした。その兄たちは母親が外国を放浪しているという説を立てて、母親が行きそうもないところを熱心に探した。アンバリー氏の許には、クリスピナを誘拐してノルウェーの島に閉じ込めている。毎年2000ポンドを払えばずっとここに置いておく。さもないと彼女を家族の許に送り返す」という普通の誘拐犯の要求とは逆の脅迫状が来た。が、アンバリー氏は自由を思いきり楽しんでいる子どもたちのために、さらにはa strong manからthe strong manに昇格した自分のためにも、身代金を払い続けるほうを選択したのだった。さて、クリスピナ・アンバリーはいったいどうしていなくなったのだろうか、そして今、どこにいるのだろうか。

例によって、害のない皮肉を交えた突拍子もないお話でした。(2019.1.11読了)


by nishinayuu | 2019-05-11 10:14 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

『Tea』(H. W. Munro)

c0077412_10574271.jpg

主人公は、独身のまま34歳を迎えたジェイムズ・カシャット・プリンクリ。結婚する意思はありながら、大勢の女性の中からひとりを選ぶということができずに、一族の人たちや友人・知人をやきもきさせてきた。そんな彼も、伯父が亡くなってかなりの財産を残してくれたのをきっかけに、周囲がすすめてくれるジョウン・セバスタブルとの結婚を前向きに考え出す。

ジェイムズがプロポーズのためにジョウンの家に向かっているとき、4時半の時報が響く。ということは、ちょうど「午後のお茶」の時間にジョウンの家に着くことになる。ジョウンは銀の湯沸かしやクリーム入れ、陶器のティーカップの並んだテーブルを前にして「お茶は濃いめがいいかしら、それとも薄めにします?お砂糖はいくつだったかしら?ミルクは?クリームは?もう少しお湯を足しましょうか?」とかなんとか、楽しげに聞いてくるだろう。そういう場面を小説でも読んできたし、実際に経験もしてきたから、ジェイムズにはよくわかっていた。そして彼はそういう「午後のお茶」の儀式が大嫌いだった。女性は長椅子にゆったり掛けておしゃべりしたり、なにか考えごとをしたりしていて、そこへヌビア人の召使いがお茶を運んでくる、というのがジェイムズの理想とする「午後のお茶」だった。

「午後のお茶」のテーブルでジョウンと差し向かいになるのを怖れつつも、ジョウンの住むメイフェアに向かっていたジェイムズは、途中でふと、遠い親戚のローダ・エラムが近くに住んでいるのを思いだして立ち寄ることにする。そうすればジョウンと会う時間を30分ほど遅らせることができ、お茶の道具が片付けられたあとに顔を出すことになるだろうから。

ローダは帽子制作で生計を立てている自立した女性だった。ローダはジェイムズの訪問を喜んで、ジェイムズの手も借りながら手際よくお茶と食べ物を並べただけで、余計な儀式はなかった。彼女の出してくれた食べ物はとてもおいしく、互いのことを尋ねたり答えたり、というおしゃべりも楽しかった。そしてローダとのお茶の間にジェイムズの気持ちは固まった。ローダと結婚することにしたのだ。

その年の9月、ミノルカへの新婚旅行を終えて家に着いたジェイムズが居間に入って行くと、銀器や陶器のお茶の道具が並んだテーブルを前にしたローダが楽しそうに尋ねてきた。「薄めの方がいいかしら?もう少しお湯を足しましょうか?」

☆二人が新婚旅行で訪れたミノルカ(Minorca)は西地中海にあるスペイン領の島。1713年のユトレヒト条約でイギリス領となったが、1802年にスペインに返還された。

2018.12.17読了)


by nishinayuu | 2019-04-16 10:58 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

c0077412_22080276.jpg

『ルイーズ』(マンロウ)

『サキ全集』の「TheToys of Peace1923」に収められている1編。

場面は老姉妹スーザンとジェインのティータイム。ジェインはミドゥルセクスでいちばんのうっかり者で、いつも上の空。そのジェインが「今日の午後はわたし、珍しくとっても冴えていたのよ。訪ねようと思ったところはみんな訪ねたし、スーザンのためにデパートにも寄ったし」と姉に向かって得意げに語る。そんなジェインを見ながらスーザンが尋ねる。「ルイーズはどうしたの?」。そう、ジェインはその日、姪のルイーズを連れて出かけたはずなのに、帰ってきたときは一人だったのだ。

さあ、それからが大変。ジェインは、キャリウッズ家には立ち寄ったのかカードを置いてきただけなのか、デパートはハロッズだったかセルフリッジだったか、思い出せない。救世軍の行進に巻き込まれたのは覚えているけれど、そのときルイーズがそばにいたかどうかは覚えていないし、アダ・スペルヴェクシットのところに行ったときルイーズが一緒だったのかもはっきりしない。あいまいな記憶をたぐりながらその午後に行った場所、会った人たちの話をしながら、のんびりとお茶を楽しんでいるジェインにスーザンはあきれる。ジェインの話からわかったのは、キャリウッズのところにもアダ・スペルヴェクシットのところにも、ウエストミンスター寺院にもルイーズはいない、ということだけ。さて、ルイーズはいったいどこに?

この短編のおもしろみは、ロンドンの市街の雰囲気や、有閑階級の暮らしぶりを垣間見ることができることと、もう一つ、これは作者が意図したものかどうかわからないが、姉と妹の対比である。姉から見ると妹というのは幼いときも歳をとっても、なんとも頼りないものなのです。ジェインほどひどいのも珍しいでしょうが。(2018.12.13読了)


by nishinayuu | 2019-04-01 22:08 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

c0077412_08470116.jpg

『平和の玩具』(マンロウ、「サキ短編集」)

エレノア・ボウプが弟のハーヴェイに319日付け(作中には明記されていないが1914年)の新聞記事を見せる。子どもたちの情操教育のために「平和の玩具」を与えよう――すなわちドレッドノート(注)や砦の模型、兵隊の人形や武器のおもちゃの代わりに、一般の建物の模型や農具、工具などを、という趣旨の記事だった。そしてエレノアはハーヴェイに、今度のイースターの子どもたちへのプレゼントは「平和の玩具」にして欲しい、と頼む。

ハーヴェイは、戦争や政界で勇ましく戦ったことで知られる大おじや曾祖父を持ち、戦争ごっこが大好きな子どもたちに「平和の玩具」を与えても意味があるだろうか、と疑問を抱くが、それでも姉のたっての願いを受け入れて、イースターのときにエレノアに言われた通りのおもちゃを取りそろえてやってくる。期待でいっぱいのエリック(11歳前)とバーティ(9歳半)の前にそれらが取り出されると、子どもたちは失望を隠さない。とりあえずバーティは子どもたちに遊び方を教えた。そうしておけばそのうち遊び出すだろうと思ったのだった。さて、しばらくしてバーティが子どもたちの様子を見に行ってみると……

エリックは戦争や歴史・地理に関する知識が豊富なことを自負する少年だが、まだ11歳にもなっていないのでその知識は生半可なものでしかない。バーティがYMCAの建物の模型を取りだして、クリスチャン関係の建物だと説明すると、「ライオンは付いてないの?」と尋ねる。彼の頭の中には「クリスチャン⇒ライオンのえじき」という図式があるのだ。

(注)ドレッドノート:「不安ゼロ/恐れ知らず」という意味の名を持つ巨大戦艦。やがて「格段に大きい」という意味につながっていき、ここから「超ド級(超弩級)」という言葉が生まれた。

2018.10.31読了)


by nishinayuu | 2019-02-25 08:47 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

c0077412_09351186.jpg

『セルノグラッツのオオカミ』(マンロウ、『サキ短編集』)

セルノグラッツ城の主となった男爵夫妻が招いた客たちと歓談している場面から物語は始まる。こういう古いお城には伝説がつきものだ、と男爵夫人が語り始める。「ここの場合は、お城で誰かが死ぬと森の野獣たちが一晩中遠吠えする、という伝説があるのだけど、でたらめよ。去年の春に義母が亡くなったときだって何も起こらなかったわ」。

すると家庭教師のアマーリアが「それは違います」と声を上げる。普段は雇い主たちの会話に口を出すことはないのに。アマーリアによると、誰かが死ぬと獣たちの遠吠えが聞こえる、ということではなく、「セルノグラッツ家の人間が死ぬ時に」あちこちからオオカミがやって来て森の外れで吠えるのだという。普段はこの森に棲むオオカミの数は限られているのに、ものすごい数のオオカミがやって来て吠えるので、お城や村の農場の犬たちもおびえて吠えるのだという。「それだけではありません。死んでいく人の魂が身体を離れた瞬間、庭の木が裂けて倒れるのです。城と無関係の人が死んでもオオカミが吠えたり木が倒れたりはしません」 と彼女は挑むような、蔑むような調子で言い放つ。

アマーリアはさらに、零落して雇われる身になったときに名前を変えたが、本名はアマーリア・フォン・セルノグラッツだと告げる。男爵も夫人も家庭教師の不遜な態度にあきれて、当分は人手が必要なのでこのままにしておくが、年明けのパーティーが済んだら彼女を解雇しようと考える。ところが、クリスマス後の寒さのせいで家庭教師は病の床についてしまい、老齢のせいもあってどんどん弱っていく。そんなある日、男爵家の飼い犬が突然クッションから飛び降りて震えながらソファーの下にもぐり込む。それと同時に城の庭で犬たちが吠えだし、遠くからも犬の吠える声が聞こえてくる。耳を澄ますとあちこちからオオカミの遠吠えの声もするではないか。

深い森に囲まれた古い城に伝わる伝説が現実のものとなる、という神秘的な物語展開が魅力的。ただし、それだけでは終わらずに皮肉の効いた結末が付いているところがサキらしい。(2018.1028読了)
by nishinayuu | 2019-02-20 09:35 | 読書ノート | Trackback | Comments(2)

c0077412_09432117.jpg

『時のみぞ知る』(ジェフリー・アーチャー、US Kindle

Clifton Chroniclesの最初の巻。主人公の少年期から青年期への成長を、視点を変え、時期を少しずつずらしながら綴っていくという構成で、それによって主人公のハリー・クリフトンはもちろん、主人公を取り巻く人々の像もくっきりと浮かび上がってくる。心覚えのために各章のエピソードを列挙しておく。

1章「Happy Clifton」(1920-1933)港町ブリストルにおけるハリーの子ども時代の物語。父親のいない家庭の貧しい生活、聖歌隊のソリストとして活躍する日々、世捨て人のジャックとの出会い、St. Bede’s 校への進学と学校生活、Bristol Grammar Schoolへの進学など。

2章「Maisie Clifton」(1920-1936)ハリーの母メイジーの物語。アーサー・クリフトンとの結婚とハリーの誕生、アーサーの事故死、ハリーの進学に伴う苦労と喜び、Hugo Barringtonとの因縁など。

3章「Hugo Barrington」(1921-1936)バリントン海運の御曹司であるヒューゴの物語。アーサーを死に追いやった経緯。メイジーとの関係。メイジーとハリー母子を極力避ける理由などが綴られる。

4章「Old Jack Tar」世捨て人オールド・ジャックの物語。バリントン海運の社主ウォルターとの縁。アーサーの子ハリーへの肩入れ、ミスター・ホウルカム、ディーキンズ、ミスター・フロビシャーとの数奇なつながり、父の死と残された手紙など。

5章「Giles Barrington」(1936-1938)ハリーと親友になったジャイルズの物語。ハリーを嫌う父への反発、夏休みのトスカーナ旅行、演劇シーズンでのハプニング、ジャイルズの妹エマとハリーの交際に対するメイジーとジャックの懸念、母とエマの家出、ハリーと一緒に母方の祖父ハーヴェイ卿訪問、ハーヴェイに諭されてヒューゴが家族に語ったハリーを避ける理由、ハリーとディーキンズのオクスフォード入学決定など。

6章「Emma Barrington(1932-1939) ジャイルズの妹エマの物語。ハリーとエマが恋人になった経緯、母とエディンヴァラに行ったいきさつ、ハリーの父の死についてのエマの推測、ハリーとの交際をヒューゴばかりかメイジーもジャックも喜んでいないと知ったときの困惑、ジャックの「異議あり」という声で流れた結婚式など。

7章「Harry Crifton」(1939-1940)一瞬にして人生を閉ざされたハリーのその後の物語。衝撃を受けて式場を去る人々のその後の動き、エマがハリーに残した手紙、イギリスの開戦と町にあふれる軍服姿、心臓発作で倒れたオールド・ジャック、ハリーが老朽船デヴォウニアン号に乗ることになったいきさつ、ハリーの船員修行と高級船員トム・ブラドショウとの親交、ハリーがトム・ブラドショウになりかわったいきさつ、ニューヨークに入港したハリーを待っていた「第1級殺人罪」による逮捕、などなど。

本書で最も感動的なのは、ハリーの回りには母メイジーをはじめとして、ミス・マンデイ(聖歌隊長、ハリーのを見いだし、メイジーの仕事探しも助ける)、オールド・ジャック(世捨て人。ハリーに目をかけて教え導く。ハリーの父親の死の真相を知っている)、ミスター・ホウルカム(公立小の先生、ハリーを進学させようと個人指導にのりだす)、ミスター・フロビシャー(St. Bede’s の歴史教師)、オークショット師(St. Bede’s の校長)など、温かく見守って手をさしのべてくれる人が大勢いたという事実である。

2018.10.16読了)


by nishinayuu | 2019-01-31 09:46 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)


c0077412_09521460.jpg

☆この1年に読んだ本の中から特に気に入った本を選んで、「私の10冊」としてまとめてみました。また、「私の10冊」の選から漏れた本を「お勧めの10冊」として挙げてみました。

☆画像は「ウクライナ日記」です。


私の10

ウクライナ日記(アンドレイ・クルコフ、訳=吉岡ゆき、集英社)

海を照らす光(ステッドマン、訳=古屋美登里、早川書房)

ブラックウォーター灯台船(コルム・トビーン、訳=伊藤範子、松籟社)

落日礼賛(ヴェチェスラフ・カザケーヴィチ、訳=太田正一、群像社)

アウシュヴィッツの図書係(アントニオ・G・イトゥルベ、訳=小原京子、集英社)

Less than AngelsBarbara Pym, USKindle

複製された男(ジョゼ・サラマーゴ、訳=阿部孝次、彩流社)

階段を下りる女(ベルンハルト・シュリンク、訳=松永美穂、新潮クレストブックス)

アフリカの日々(イサク・ディネセン、訳=横山貞子、河出書房新社)

すべての見えない光(アンソニー・ドーア、訳=藤井光、新潮クレストブックス)

お勧めの10

低地(ジュンパ・ラヒリ、訳=小川高義、新潮クレストブックス)

城砦(クローニン、訳=竹内道之助、三笠書房)

偉大なる時のモザイク(カルミネ・アバーテ、訳=栗原俊秀、未知谷)

ウイルバーフォース氏のヴィンテージ・ワイン(ポール。トーディ、訳=小竹由美子、白水社)

The Interlopers H. H. Munro, Doubleday & Company Inc.)

また、桜の国で(須賀しのぶ、祥伝社)

ショーシャ(アイザック・シンガー、訳=大崎ふみ子、吉夏社)

夜想曲集(カズオ・イシグロ、訳=土屋政雄、早川書房)

Only Time Will Tell (Jeffrey Archer, USKindle

犬は勘定に入れません(コニー・ウィリス、訳=大森望、早川書房)


by nishinayuu | 2019-01-01 10:01 | Trackback | Comments(0)


c0077412_11065130.png


永井 淳の訳で新潮社から出ている版のタイトルは『十二本の毒矢』で、12の短編が収録されている。本書はそれより2編少ない10編の短編集となっている。講談社の出版なので、和書に分類すべきかもしれないが、英文の本なので原書としておく。


収録作品のなかで面白かったのは……

*The Chinese Statue――サザビーズのオークションに出品された中国の皇帝像。像そのものより台座に高額の値がつく。(ところでポンドとギニーという貨幣単位を併用しているイギリス人って賢い?)

*The Luncheon――よく覚えていない女性に高級レストランで食事を御馳走する羽目になった語り手。支払い額が心配で自分はサラダだけで我慢した語り手の手許に残ったのはバス代のみ。別れ際、女性はこの店のオーナーと再婚したの、としらっと言って去って行く。(これもまた作者お得意の?お金の話。)

*The Coup――ナイジェリアにやって来た二人のブラジル人事業家。クーデター勃発による大混乱、銀行融資の滞りなどに直面する中で、ライバルだった二人が急接近し、共同で事業を進めることに。(長編にしてもいいような読み応えのある話でした。)

*The First Miracle――時は紀元1年。キリストの奇跡に最初に遭遇したのは少年ピラトだった!

*The Hungarian Professor――イギリスを愛し、イギリス文学に一生を捧げたのに一度もイギリスに行けない教授。涙を誘う物語。

その他は――「One-Night Stand」「Broken Routine」「Henry’s Hiccup」「A Matter of Principle」「OldLove」。いずれもちょっと哀れだったりちょっと滑稽だったりする掌編で、「毒矢」と言うほどではない。

語句に関するメモ

*hiccup――ちょっとした不都合、妨害、挫折。(Henrys hiccup)

*statu pupillari――学生の身分。(Henrys hiccup」)

*V-J Day――Victory Over Japan。アメリカなどで92日に祝う。

(Henrys hiccup)

*Bonheur-du-jour――女性用の文机兼化粧テーブル。(Henrys hiccup)

*langouste――伊勢エビ。(Henrys hiccup)

*B.N.C.――Brasenose College(オクスフォード大のカレッジ)

(「The Hungarian Professor」)

*IBA――ITVとチャンネル4を統合した会社。(「Old Love」)

2018.8.30読了)


by nishinayuu | 2018-12-12 11:10 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)


c0077412_14233944.jpg

本作は『ショーシャ』の作家による最初の児童書で、ヨーロッパのユダヤ人社会に伝わる民話や伝説をもとにした7つの物語からなる。

Fool’sParadise」には怠け者の男が、「Grandmother’s Tale」には悪魔が、「The Snow in Chelm」「The Mixed-Up Feet and theSilly Bridegroom」「The First Shlemiel」の3編には愚か者たちの村「ヘルム」で起こったできごとが、「The Devil’sTrick」には悪魔より賢かった少年が、「Zlateh the Goat」には互いに助け合って雪嵐を切り抜けた少年と山羊が登場する。愉快な話もあれば、ぞわっと鳥肌の立つ話もあり、心温まる話もある。中では巻の最後に置かれている「Zlateh the Goat」がいちばん心に残った。表題になるだけのことはある。

作者のシンガーは1904年(もしくは1902年)ポーランドに生まれ、1935年に渡米してイディシュ語によって作家活動をした。邦訳書としては『ワルシャワで大人になっていく少年』(金敷力、新潮社)、『ヘルムのあんぽん譚』(関憲治、篠崎書店)、『やぎと少年』(工藤幸雄、岩波書店)、『ルブリンの魔術師』(大崎ふみ子、吉夏社)『父の法廷』(桑山孝子、未知谷)などがある。

ところで本書の表紙絵をはじめとする17点の絵は、絵本『かいじゅうたちのいるところ』で知られるモーリス・センダック(19282012)の作品である。実はこの本はわが家の本棚でずっとツンドク状態になっていたのだが、それはセンダックの絵が苦手だったからだ。子どもだけでなく大人も56頭身に描かれていて、しかも顔つきや目つき、全体の雰囲気がかなり不気味で。それが今回、捨てる前に一度だけ、と思って目を通してみたところ、この内容にはこの絵しかないと思えるほどのすばらしい絵であることがわかり、「食わず嫌い」を反省したのだった。センダックさん、ごめんなさい。(2018.6.28読了)


by nishinayuu | 2018-10-03 14:26 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)


c0077412_10251653.png『天使未満の人たち』(バーバラ・ピム)

この作者は教会を核にした穏やかなコミュニティーの日常を描くことが多いのでそのつもりで読み始めると、ちょっと面食らう。冒頭に描かれているのはオクスフォード大の人類学者たちが集うパーティーの場面なのだ。時は春4月の夕べ、所は人類学の重鎮Felix Byron Mainwaringの名を冠したFelix’s Folly――ゴシック風の模造廃墟で23号の建物である。集まったのは上記のメナリング、主任教授のフェアファクス博士、パトロネスのミニー・フォーサイト、秘書のエスター・クロウヴィス、アフリカ語のエキスパートであるガートルード・リギット等と、会場の図書室にたまたま居合わせた学生たち――1年生のディアドゥリ・スワン、3年生のマーク・ペンフォウルドとディグビィ・フォクス。

続く第2章の舞台は、ロンドンはリージェント・パークのぱっとしないフラット。3部屋にキッチンとバスルームのこのフラットの主は小説家のキャスリン・オリファント。同居人である前途有望の若き人類学徒トム・マロウズはアフリカのフィールド・ワークを終えて来週、2年ぶりに帰ってくる予定。トムの家はシュロプシャーの大地主だが、家族はトムが人類学を専攻したことに失望している。母方の叔父のように植民地行政官になる道もあるのに、と。家族や親戚のいないキャスリンは、トムの母親やハロッズのお得意様の姉妹と知り合いになれたら、と思っているが、トムは結婚ということに思い至らない様子。トムの後輩のディグビィはそんなキャスリンの心を読んで優しく接する。

3章の舞台はディアドゥリ・スワンが家族といっしょに住んでいる、ピカデリー・サーカスからバスで1ペニーの所にある家。ここでやっとこの作者の定番の人々――教会の仕事が好きな中年の姉妹――ディアドゥリの母メイベルと結婚経験のない姉のローダが登場する。メイベルとローダの姉妹とメイベルの息子マルコムの三人が夕食のテーブルに着いた頃、ディアドゥリはバスで家に向かっている。翌日のランチタイムにディアドゥリは「貴族的で明るい灰色の瞳の青年」トムに声を掛けられて一目惚れすることになるのだが、この日はまだそれを知らない。この話は次の第5章で語られる。

そして第5章。スワン家の隣には長年トムの研究を指導してきたアラリック・リギットが住んでいる。ガートルードの兄であるアラリックは、自分は失敗者だ、なぜなら植民地行政官だった11年の間に相応の地位を得ることもできなかったし、人類学や言語学の分野でもこれといった成果を上げられなかった、と考えている。偏屈な変わり者で、人に顔を見られたくないからと仮面を付けて庭を歩き回るし、11年間の研究ノートをトランクにしまい込んでいて誰にも見せようとしない。世間に一つだけ知られているのは皮肉なレビューを書くライターであること。几帳面なアラリックは出版社に送る原稿を封書に入れたあと、目覚まし時計を600にセットして床につく。翌朝、ローダがその目覚ましの音で目を覚ます。

こんな具合に主要人物たちが紹介されていき、続く6章から最後の23章まで、人類学者たちの権謀術数に未来の学者たちの恋愛が絡んだ物語がテンポよく展開していく。

2018.5.26読了)


by nishinayuu | 2018-08-14 10:30 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

読書と韓国語学習の備忘録です。


by nishinayuu