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『平和の玩具』(マンロウ、「サキ短編集」)

エレノア・ボウプが弟のハーヴェイに319日付け(作中には明記されていないが1914年)の新聞記事を見せる。子どもたちの情操教育のために「平和の玩具」を与えよう――すなわちドレッドノート(注)や砦の模型、兵隊の人形や武器のおもちゃの代わりに、一般の建物の模型や農具、工具などを、という趣旨の記事だった。そしてエレノアはハーヴェイに、今度のイースターの子どもたちへのプレゼントは「平和の玩具」にして欲しい、と頼む。

ハーヴェイは、戦争や政界で勇ましく戦ったことで知られる大おじや曾祖父を持ち、戦争ごっこが大好きな子どもたちに「平和の玩具」を与えても意味があるだろうか、と疑問を抱くが、それでも姉のたっての願いを受け入れて、イースターのときにエレノアに言われた通りのおもちゃを取りそろえてやってくる。期待でいっぱいのエリック(11歳前)とバーティ(9歳半)の前にそれらが取り出されると、子どもたちは失望を隠さない。とりあえずバーティは子どもたちに遊び方を教えた。そうしておけばそのうち遊び出すだろうと思ったのだった。さて、しばらくしてバーティが子どもたちの様子を見に行ってみると……

エリックは戦争や歴史・地理に関する知識が豊富なことを自負する少年だが、まだ11歳にもなっていないのでその知識は生半可なものでしかない。バーティがYMCAの建物の模型を取りだして、クリスチャン関係の建物だと説明すると、「ライオンは付いてないの?」と尋ねる。彼の頭の中には「クリスチャン⇒ライオンのえじき」という図式があるのだ。

(注)ドレッドノート:「不安ゼロ/恐れ知らず」という意味の名を持つ巨大戦艦。やがて「格段に大きい」という意味につながっていき、ここから「超ド級(超弩級)」という言葉が生まれた。

2018.10.31読了)


by nishinayuu | 2019-02-25 08:47 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

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『セルノグラッツのオオカミ』(マンロウ、『サキ短編集』)

セルノグラッツ城の主となった男爵夫妻が招いた客たちと歓談している場面から物語は始まる。こういう古いお城には伝説がつきものだ、と男爵夫人が語り始める。「ここの場合は、お城で誰かが死ぬと森の野獣たちが一晩中遠吠えする、という伝説があるのだけど、でたらめよ。去年の春に義母が亡くなったときだって何も起こらなかったわ」。

すると家庭教師のアマーリアが「それは違います」と声を上げる。普段は雇い主たちの会話に口を出すことはないのに。アマーリアによると、誰かが死ぬと獣たちの遠吠えが聞こえる、ということではなく、「セルノグラッツ家の人間が死ぬ時に」あちこちからオオカミがやって来て森の外れで吠えるのだという。普段はこの森に棲むオオカミの数は限られているのに、ものすごい数のオオカミがやって来て吠えるので、お城や村の農場の犬たちもおびえて吠えるのだという。「それだけではありません。死んでいく人の魂が身体を離れた瞬間、庭の木が裂けて倒れるのです。城と無関係の人が死んでもオオカミが吠えたり木が倒れたりはしません」 と彼女は挑むような、蔑むような調子で言い放つ。

アマーリアはさらに、零落して雇われる身になったときに名前を変えたが、本名はアマーリア・フォン・セルノグラッツだと告げる。男爵も夫人も家庭教師の不遜な態度にあきれて、当分は人手が必要なのでこのままにしておくが、年明けのパーティーが済んだら彼女を解雇しようと考える。ところが、クリスマス後の寒さのせいで家庭教師は病の床についてしまい、老齢のせいもあってどんどん弱っていく。そんなある日、男爵家の飼い犬が突然クッションから飛び降りて震えながらソファーの下にもぐり込む。それと同時に城の庭で犬たちが吠えだし、遠くからも犬の吠える声が聞こえてくる。耳を澄ますとあちこちからオオカミの遠吠えの声もするではないか。

深い森に囲まれた古い城に伝わる伝説が現実のものとなる、という神秘的な物語展開が魅力的。ただし、それだけでは終わらずに皮肉の効いた結末が付いているところがサキらしい。(2018.1028読了)
by nishinayuu | 2019-02-20 09:35 | 読書ノート | Trackback | Comments(2)

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『Чехов Њмореска』(Чехов)

本書はユーモア週刊誌に寄稿された初期の作品群を集めたもので、本邦初訳が14編収録されている。掲載誌名のあとに「検閲許可」の文字がある作品が7編あり、帝政ロシアの過酷な検閲制度をうかがわせる。タイトルに「ユモレスカ」とあるけれど、辛辣すぎてついていけないもの(ロシア人のユーモアは毒気がありすぎ?)もあれば、理解が届かないものもある。が、全体としては人間の普遍的生態が浮かび上がってくる作品群と言える。特に印象的な作品をいくつか挙げておく。

*男爵――役者の下手な演技に腹を立てて、思わず自分で台詞を言ってしまうプロンプター。

*心ならずもペテン師に――いろいろな人が自分の都合で時計の針を進めたり戻したり。

*フィラデルフィア自然研究大会――ダーウィンに反対するベルギー代表は言う。「あらゆる人種が猿から派生したわけではない。たとえばロシア人は鵲から、ユダヤ人は狐から、イギリス人は冷凍魚から派生したものだ」。

*年に一度――「名の日」なのに誰も訪ねてこない侯爵令嬢(腰の曲がったしわくちゃ婆さん)のために、令嬢の甥を無理やり呼び寄せる従僕のマールク。

*親切な酒場の主人――かつてわが家の農奴だった酒場の主人が、わが家の手入れに大金をつぎ込んでくれたわけは?

*客間で――客間で愛を語る男女(実は主の留守に貴公子と令嬢を気取ってみた使用人の男女)。

*ポーリニカ――ポーリニカへの愛と「荷馬車の5番目の車輪になんかならない」というプライドの間で揺れ動くニコライ・チモフェーイチ。

2018.10.27読了)


by nishinayuu | 2019-02-15 09:39 | 読書ノート | Trackback(1) | Comments(1)

翻訳練習 課題21

2018年度前期の韓国語講座「翻訳の秘訣」で練習したものの記録です。(7/30~10/1)

動詞17-したように

意味:생각남 듯이, 갑자기

原文:ときどき雲の間から、思い出したように月がのぞいた。c0077412_10272767.jpg

訳文:간혹 구름 사이에서 달이 불현듯 얼굴을 내비쳤다.

動詞18:~ている

意味:~하고 있다, ~했다, ~ 상태다

原文1:原油流出事故後、海岸沿いの水質はいまだに改善されていません。

訳文:원유 유출 사고 이후 해안가의 수질은 아직도 개선되지 않은 상태입니다.

原文2:結果、コストの削減のためのマニュアルが全く活用されていないことがわかった。

訳文:결과적으로 비용 절감을 위한 매뉴얼이 전혀 활용되지 않았다는 것이 밝혀졌다.

動詞19-~ていた

意味:過去完了(もともと韓国語にはなかった表現で、外国語が入ってきて使われるようになったもの。使い方には注意が必要)

原文1:無差別殺人を予告していた中学生が威力業務妨害の容疑で逮捕された。

訳文:무차별 살인을 예고한 중학생을 위력 업무 방해 혐의로 체포했다.

原文2:徳川吉宗は財政的に破綻しかけていた幕府を建て直した人物として知られている。

訳文:도쿠가와 요시무네는 재정 파탄 위기에 빠진 막부를 다시 세운 인물로 유명하다.

原文3:野原にはもう春が来ていました。

訳文:들판에는 벌써 봄이 왔다.

 (벌써は「もう?」という感じ、이제は「やっと」という感じ、이미は客観的に事実を伝える)


by nishinayuu | 2019-02-10 10:29 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)


c0077412_14270137.jpgOut ofAfrica』(Isak Dinesen, 1937

著者は『バベットの晩餐会』や『冬物語』(著者名はカレン・ブリクセンとなっている)で知られるデンマークの作家。デンマーク語で書くときはカレン・ブリクセン(Kren Blixen)を、英語で書くときはイサク・ディネセンを用いた、という話を聞いたことがあるが、1937年出版の本書はイギリス版とデンマーク版はカレン・ブリクセンの名で、翌年のアメリカ版はイサク・ディネセンの名で発表されている。

さて本書は1914年から1931年までアフリカで農場を経営した著者が、ずっと心に残っている「アフリカの日々」を綴った作品である。

「赤毛のせっかちな北欧人が熱帯地方と人種に寄せる熱い思慕は、異性間の思慕に似ている。北欧人は自分の国や同民族の中では理に合わないことを決して許さない。ところが彼らはアフリカ高地の旱魃、日射病、牛の疫病、雇い入れた現地人が与えられた仕事に適さないことなどなどを、自己卑下とあきらめをもって受け入れる。不一致故に一体となり得るこの人間関係のなかにひそむ可能性に、北欧人の個としての意識はのみ込まれてしまう」と著者は言う。はたして著者は「アフリカに着いて最初の何週間かでアフリカの人たちに強い愛情を覚え」、彼らと接するうちにますます彼らに惹かれていって、18年という年月を彼らと共に過ごすことになったのだ。

本書にはアフリカの大地が、アフリカの人々が、アフリカの動物たちが、そしてそれらと共にある著者の日々が、数々の迫力のあるエピソードとともに綴られている。それでいてなぜか読後には、静かな音楽の流れるなかで美しい映像を眺めていたような印象が残る。(2018.10.23読了)


by nishinayuu | 2019-02-05 14:28 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

読書と韓国語学習の備忘録です。


by nishinayuu