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2019年 03月 07日 ( 1 )

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本作は1955年生まれの作家・梁貴子が1987年に発表した作品の邦訳。2018630日に出版されたできたての本である。

ウォンミドンは漢字で書けば遠美洞(京畿道富川市遠美区)。遠美山という幻想的な名前を持つ山の麓に位置する、大都市ソウルの周辺地域の一つである。時はソウルオリンピック(1988)の前で、町はまだ昔ながらの田舎町といった雰囲気のなかにある。そんな遠美洞に暮らす人々の日常が細やかな筆致で、しつこいくらい丁寧に描かれている。全体は11のエピソードからなり、各エピソードの主人公が他のエピソードに端役で登場したりもすれば、全体を通して出ずっぱりの人物もいて、興味深い群像劇になっている。11のエピソードのタイトルは以下の通り。

「遠くて美しい町」、「火種」、「最後の土地」、「ウォンミドンの詩人」、「一匹の旅ネズミ」、「雨降りの日はカリボンドンに行かなければならない」、「カワラヒワ」、「茶店の女」、「日用の糧」、「地下生活者」、「寒渓嶺」

以上のうち「ウォンミドンの詩人」は以前、韓国語講座で原文を読んだことがある懐かしい作品。また「雨降りの日はカリボンドンに行かなければならない」は別の翻訳集で読んだ覚えがあり、そのときは「カリボンドン」という響きだけが印象に残ったが、今回、集中でいちばん共感を持って読めた。

ところで、残念なのは翻訳文がこなれた日本語になっていないため、非常に読みにくいこと。韓国語の原文に囚われすぎているようだが、これは翻訳の問題でもあり、校閲の問題でもある。「訳者あとがき」はきちんとした日本語で書かれており、その内容もすばらしいのに、どうしてだろうか。この作品が読みでのある優れた作品であることは確かなので、訳文を吟味した改訂版が一日も早く出ることを期待する。

2018.11.9読了)


by nishinayuu | 2019-03-07 10:33 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

読書と韓国語学習の備忘録です。


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