『かあさんの名は朝鮮ピーだった』(ユン・ヂョンモ著)
2008年 10月 02日
『母さんの名は朝鮮ピーだった』というタイトルの「朝鮮ピー」というのは、朝鮮人慰安婦を指す蔑称。前半は、自分が本当に父親の子なのか、もしかしたら日本人の血が混じっているのではないのか、と悶々とする息子の姿が描かれる。後半は、息子に問い詰められた母親が初めて息子に語って聞かせる自らの過去、という形で従軍慰安婦の無惨な姿が描かれる。
日本軍の蛮行に対して初めはひたすら耐えるだけだったのが、やがて一人の人間として生きる道を切り開いていく少女たちの健気なこと。それに対して日本軍兵士たちは十把一絡げにけだもの集団として描かれるだけなのは、この小説のテーマからすればやむを得ないことだろう。人間を描くことより過去の事実を描くことに重点を置き、著者の怒りを真っ向から突きつけて旧日本軍、現日本(政府)を糾弾しているのである。日本人としても、一個の人間としても読むのが辛く、苦しい作品であるが、韓国ではもちろん、世界各国でも広く読まれているからには、日本人として読まずにすますわけにはいかない。
日本語訳は『母・従軍慰安婦 かあさんは「朝鮮ピー」と呼ばれた』というタイトルで神戸学生青年センター出版部から出ている。1050円。(2008.7.12記)