『Cranford』 (Elizabeth Gaskell 著、Oxford World’s Classics)
2007年 09月 11日
このようにエピソードの寄せ集めのような構成になっているが、ストーリーがないわけではなく、ジェンキンス家の次女ミス・マティルダを主人公とする物語になっている。強烈な自我を持っていた姉を失ってからは、頼りなげに、けれども束縛を解かれたように気楽に暮らしているミス・マティルダを、語り手はずっと傍らで見守っている。そして、ふたりで古い手紙類を整理するうちに、ジェンキンス夫妻の出会いから始まる一家の歴史が明らかになっていく。マティルダの弟ピーターは少年時代に家を出たまま行方不明となり、マティルダの母は心労がもとでなくなっていた。海軍に志願して海に出て行ったピーターも、おそらく異国の土になっているだろう今、マティルダは一人静かに老いていく覚悟を決めている。ところがそのマティルダの穏やかな日々はある日突然崩れ去る。(2007.7.9記)
☆時代といい、中産階級の女性たちが主役であることといい、日常生活が細々と描かれていることといい、ジェイン・オースティンの作品を彷彿とさせます。けれども、結婚にあこがれる若い女性が主役であるオースティン作品とは違って、クランフォードの主役たちは結婚しないまま歳を重ねた女性たちや、夫を亡くした女性たちです。結婚というものには懐疑的で、男性一般を疎ましく感じ、身分の上下にはひどく敏感で、古くからの慣習を頑なに守っている、かわいいおばあちゃんたちなのです。
☆この本で苦労したのは、とてつもなく小さな活字が使ってあることです。大文字の高さが2mmしかありません。漢字やハングルだったら判別できない大きさ(小ささ)です。その点アルファベットは、こんなに小さくても判別はできますから、非常に優れた文字であることは確かですが、それにしてももう少し大きな字にしてくれないと。
『Cranford』 (Elizabeth Gaskell 著、Oxford World’s Classics) : 晴読雨読ときどき韓国語... more