『ぬしさまへ』(畠中恵著、新潮文庫)
2007年 04月 14日

「ぬしさまへ」は作りすぎの感じがするし、「栄吉の菓子」は繰り返し部分が多くて話がだれる。この2つに比べると「空のビードロ」は読むものをぐいぐい引き込む魅力がある。というのも、ここで『しゃばけ』において未解決だった一太郎の兄のその後が明らかにされるからだ。同じく「仁吉の思い人」では仁吉が何者なのか、どういういきさつで一太郎のそばについていることになったのかが明らかにされる。このように一話読み進むごとにこの物語の世界の骨格がしっかりと見えてくる仕組みになっているので、読みおえたときには満ち足りた気分で本を置くことができる。(2007.3.18記)