『イチレツランパン破裂して』(高島俊男著、文藝春秋社)
2007年 03月 28日
堅苦しい内容のものを、柔らかい語り口で易しく解説し、読者の意見にもよく耳を傾けている、自説に固執しないおおらかな著者……と思いきや、間違いやいいかげんなもの(物・者)には容赦がなく、時には実名をあげて痛烈な皮肉を浴びせている。どうやら著者は、低姿勢のようでいて、実は恐い人のようである。
特に興味深かった項目は――杏仁豆腐、はかってくれた背のたけ、木くずと木屑(ぼくせつ)、白髪三千丈、お送りいただきますよう、表外字の字体、手書きと印刷文字、天が落ちて来やしないか、植うる剣。
たとえば「白髪三千丈」の項を見ると、五や八ではなく三、百や万ではなく千、寸や尺ではなく丈でなければならない理由が、この詩句を書いた李白の時代の中古漢語における声調に始まり詩の技巧にいたるまで、懇切丁寧に説明されている。(2007.3.12記)
☆「白髪三千丈」の項の末尾にある「あとからひとこと」の部分に――これはちょっとむずかしかったかな?と心配していたら、「わたしはバカです」と自称してはばからない大和書房小宮編集者が「よくわかった」と言ってくれたのでホッとした。――とあります。私(nishina)もバカですがよくわかりました。