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『いつか晴れた日に』(ジェイン・オースティン著、真野明裕訳、キネマ旬報社)

『いつか晴れた日に』(ジェイン・オースティン著、真野明裕訳、キネマ旬報社)_c0077412_17191081.jpgSense and Sensibilityの訳本で、一般には『分別と多感』というタイトルで知られている作品。
舞台は18世紀のイギリス。登場人物たちは中産階級(注)に属する人々で、その関心事は恋愛、結婚、交際、遊興、財産、相続などである。主人公のひとり、エリナは「分別の人」で思慮深くて冷静、もう一人の主人公、妹のマリアンは「多感な人」で情熱的なロマンチスト。もちろんふたりともとびきりの美人である。末の妹、マーガレットは物語の進行にほとんど何の貢献もしていないので、登場させる必要はなかったのではないかと思われる。ただ、この人物を削っても、作者がこの物語をより短くまとめる気になったかどうかは疑問で、日常の会話、エピソードが延々と語られている。おかげで、この時代の中産階級の人々の考え方や暮らしぶりがよくわかる。(2006.11.13記)
(注)中産階級――上は莫大な地代で優雅に暮らす大地主から、下は金利で細々と暮らす人まで。生活レベルは様々だが、とにかく不労所得で生活できる有閑階級のこと。

☆オースティンの主人公たちはいずれも花の盛りの若い女性たちで、この作品のエリナは19歳、マリアンは17歳です。未婚の女性であった作者の代弁者と思われる彼女たちは「若さ」の
基準が厳しく、たとえば第7章の最後に次のようなくだりがあり、のけぞってしまいました。

それにマリアンは三十五歳の男性ともなると感性の鋭さや、物事を楽しむ繊細な能力がたぶんすり切れてしまっているのだろうと認めるだけの物分かりのよさがあった。大佐の高齢に対して人道上必要とされる充分な斟酌をする気にすっかりなっていた。 (アンダーラインはnishina)
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by nishinayuu | 2007-01-07 17:38 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

読書と韓国語学習の備忘録です。


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