『説得』(ジェイン・オースティン著、大島一彦訳、キネマ旬報社)
2006年 12月 04日
ヒロインのアン・エリオットは気立てのよさ、思慮深さ、知性、感受性、姿形の美しさに恵まれた理想的な女性である。物語はこのようなヒロインの視点から、整然とした筆致で丹念に描かれているので、猥雑さやどぎつさとは無縁である。読書会の課題図書(11月)の関連図書として、あまり期待もせずに読んでみたのだが、意外や意外、最後のクライマックスでは感動の涙が出てしまった。翻訳者によるとこのクライマックスの部分は「イギリス小説の中でも指折りの美しい愛の場面のひとつ」なのだそうだ。
アンの恋人であるウェントワース大佐を始め、海軍関係者が多く登場するのは、イギリスが「七つの海を制覇」していた時代の物語なればこそであろう。
☆画像はWordsworth Classicsのものです。