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『ペンギンにさよならをいう方法』(ヘイゼル・プライア、訳=圷香織、東京創元社)

『ペンギンにさよならをいう方法』(ヘイゼル・プライア、訳=圷香織、東京創元社)_c0077412_22551124.jpgAway with the Penguins』(Hazel Prior

主人公のヴェロニカ・マクリーディ(85歳)は、スコットランドはエアシャーのバラハイスで暮らす独り者の資産家の女性。今のところ心身に特に問題はないが、何しろ高齢なので、死ぬ前にその膨大な資産をどうにかしなくては、というのが目下の悩み。ある日、通いの家政婦アイリーンが帰った後、テレビで動物に関するドキュメンタリーを見ていたヴェロニカは、アデリーペンギンの可愛さに魅了される。アデリーペンギンの研究センターが資金難に陥っていると知ったヴェロニカは、自分の資産の使い道はこれだと思った。そして本当に多額の資産を残す価値があるか自分の目で確かめなくては、と研究所のある南極に行くことにした(!)

驚いたのはヴェロニカから連絡を受けた南極の研究所の三人のスタッフ。研究所には訪問者を、それも高齢の女性を受け入れる場所も時間もないのだから、当然三人とも大反対した。そんな彼らの声には耳を貸さず、ヴェロニカは強引に押しかけてしまう。聞きたくないことは聞かず、見たくないものは見ないで突き進むのがヴェロニカなのだ。こうして南極のロケット島で、ヴェロニカと三人のスタッフの、のちにはさらにもう一人加わって四人の、厳しくてやがて愉快な暮らしが展開していく。タイトルからは自然保護をテーマに、かわいいペンギンに別れを告げる方法を綴った物語かと思ってしまいそうになるが、実は人生に別れる(人生をしまう)方法をテーマにした感動的なヒューマンドラマなのである。パトリックはどこから湧いて出たのか、彼が孫ならその父親は誰なのか、などなどミステリー・タッチのところもあれば、ヴェロニカがすっかり暗記しているという『ハムレット』が随所に引用されているのも読みどころの一つ。

ヴェロニカのほかに登場するのは

*テリー(ペンギン研究センターの若き女性スタッフ。ブログでペンギンたちを紹介している。温かい人柄で、ヴェロニカにも協力的。)

*ディートリッヒ(ペンギン研究センターのセンター長。)

*マイク(ペンギン研究センターのスタッフ。初めは冷たい人間に見えたが…。)

*パトリック(ヴェロニカがつい最近その存在を知った孫息子。汚部屋で暮らす若者だったが、ヴェロニカをばあちゃんと呼んで親しみを示す。)

*ギャブ(パトリックが月曜だけ働かせてもらっている自転車屋の主。ばあちゃんが見つかったパトリックを全力で応援する。癌に苦しむ娘の父親。)

*ジョヴァンニ(シークレット)

*パトリック改めピップ(みなしごのペンギン。ヴェロニカのもとで成長していく。)

著者はオックスフォードの生まれ。アイリッシュハープの奏者をしながら2019年に作家デビュー。2020年に発表された著者2作目の本作は、16か国以上で翻訳刊行され、〈リチャード&ジュディ・ブッククラブの1冊〉〈BBCラジオ2ブッククラブの1冊〉に選出されているという。


Commented by マリーゴールド at 2026-02-05 17:25
面白そうな本ですね。タイトルと絵を見たら子供向けの童話かなと思います。
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by nishinayuu | 2026-01-28 22:55 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

読書と韓国語学習の備忘録です。


by nishinayuu