『おにぎりの使い方』(キム・ホヨン)『不便なコンビニ』その③
2025年 09月 27日
『불편한 편의점』(김호연)
この章はコンビニのおばさん店員であるオ・ソンスクから見た「理解し難い男たち」の話である。
彼女には理解し難い男が三人いる。一人目は30年近く共に暮らした夫。中小企業の課長の職を蹴ったのも、店を構えてから数年で家出してしまったのも訳が分からない。意地っ張りで融通の利かない男で、数年前に病気になって戻ってきたので、なぜそんなに自分勝手なんだと問い詰めたが答えない。腹が立って懲罰を与えるように毎日質問攻めにしたら、また家出してしまって、今は生死さえわからない。そんな夫のことは永遠に理解できないし、理解する必要もなくなった。
二人目は息子。ワンオペで可愛がって育てたのに血は争えないというか、大きくなるにつれて夫と同じく理解し難い男になり始めた。大学卒業後大企業に就職したのに1年2か月で辞めたことからして不吉だった。いきなり株の投資を始めてそれまでに稼いだ金を使い果たし、今度は映画監督になると言い出して養成所に通って、ごろつきのような連中と付き合い始めた。そのうち借金までして独立映画とやらをとり始めたが、途中で全部ひっくり返り、一時は鬱状態で病院の世話にまでなった。この二人の「理解し難い男」だけでもこれまでのソンスクの人生は難儀だったのに、ここにきて現在進行形の「理解しがたい男」が彼女の人生に押し入ってきた。コンビニの夜間アルバイト店員として登場した元ホームレスのドッコ氏である。目つきが悪く、動きがのっそりしていて、まともに挨拶もできない、およそコンビニの店員にはなれそうもないと思えた。ところがドッコ氏は、わずか三日でコンビニの業務をすべて覚え、さらに三日経つと動作も素早くなり、ソンスクにも客にも目を合わせて挨拶するようになったのだ。
そして事件が起こる。不良少年が万引きしようとしたのに気が付いたソンスクが少年の腕を押さえた。万引きしたものを出しなさいと言うと、少年は懐から出したおにぎりをソンスクの顔に投げつけて店を出ようとした。と、そこにドッコ氏が現れて「やあ、チャモン」と少年に笑いかけた。このあとドッコ氏は少年を諭してソンスクに謝罪させ、屋外テーブルに移動して少年といっしょにおにぎりを食べた。そんな二人を眺めながらソンスクは、自分も事件にかかわった三人のうちの一人であることを面白いと感じたのだった。
ここに出てくる独特の単語や表現を記録しておく。
*햄스터 손이라도 빌려야 할 (ハムスターの手でも借りたいような——猫の代わりにハムスターを使っている!)
*걸레는 빨아도 걸레 (雑巾は洗っても雑巾)
*알다가도 모를 (わかりそうでわからない)
*짜몽 (グレープフルーツの缶ジュース jjamong)
*천덕꾸러기 (嫌われ者、除け者、邪魔者)
*무슨 팝콘 터지는 소린가 (何の話なのか)


