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『For the Duration of the War』(H.H.MMunro)

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『戦争が終わる日まで』(マンロウ)

本作は『The Toys of Peace』に収録されている1篇で、第一次大戦中の西部戦線で著者が最後に書いた作品である。


ウィルフリッド・ガスピルトン牧師は、まあまあファッショナブルな教区からひどく田舎っぽいセント・チャドック教区へ移動になった。ガスピルトンの妻ベリルは、サロンの中心人物になれる資質があると自負しているのに、今や牧師の妻として田舎の教区をバックグラウンドとする運命になったのだった。

しかし彼女は田舎暮らしを甘受する気はなく、自分なりの生き方を通すことにした。医者の妻にちょっと意地悪く当たることをささやかな楽しみにしつつ、今はやっているBaptiste Leopoy (バティスト・ルポイ)作『LAbreuvoir interdit』(禁断の酒桶)の英訳作業をのろのろと続けていた。その作業にあまりに時間がかかっているので、翻訳が仕上がる前にルポイが流行遅れになってしまいそうだが、周りの連中は誰もフランス語など読めないし、『禁断の酒桶』なんて聞いたこともないだろうから、出版された暁にはベリルは教区のトップ人士とみなされるようになるはずだった。

というわけで牧師夫人は教区の人たちに背を向けて満足していたが、教区の人たちにそっぽを向かれた牧師は惨めだった。小鳥たちまで、芝生の上をちょんちょんと我が物顔で横切り、牧師には目もくれない。教区の人たちと近づきになろうとすれば、彼らの病気と近づきになるのが落ちだった。田舎ではリウマチ持ちでないのは大いなる欠陥だということを、牧師はまだわかっていなかった。そんな惨めな気分の夫には目もくれず、妻が翻訳とやらに没頭しているのが、牧師には理解できなかった。

牧師はいら立ちを抑えようと、また退屈を紛らわそうと、果実や野菜の植わっている一画に歩いて行った。そしてグズベリーの茂みの中、カリンの木の下にやってきたとき、牧師はふいに壮大な文学的ペテンを思いついた。数週間後、ティグリス渓谷で軍務についている牧師の甥の一人が訳したというペルシアの詩が雑誌に載って注目され、評判になったのだった。

このあと、牧師の甥が訳したという詩が数連紹介され、その原詩や訳者についての質問を牧師が巧みにかわして、いよいよ世間の好奇心をかきたてる。そんなことをやってのける牧師が、妻や教区の人たちをうまく操れないはずはない。著者が乗り移ったような牧師の突然の変身ぶりに首をかしげてしまう。

2025.9.21読了)


Commented by マリーゴールド at 2025-10-14 00:11
面白そうな物語ですね。牧師夫婦は文学的な趣向のありますね。
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by nishinayuu | 2025-09-21 21:13 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

読書と韓国語学習の備忘録です。


by nishinayuu