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『日韓併合期ベストエッセイ集』(鄭大均編、2015、ちくま文庫)

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編者はあとがきで次のように言っている——本書は日韓の間で政治的争点となっている日韓併合期を生きた人間たちのエセイをアッセンブリーしたもので、良きエッセイに特有の「自由の精神」をぜひ味わっていただきたい——
本書には43編のエッセイが7つの章に分けられて掲載されている。巻末には「執筆者略歴」と掲載作品の「初出・出典一覧」もあるきわめて中身の濃い作品集である。全作品のタイトルと著者は以下の通り。★印は特に印象に残った作品。
第一章 子どもたちの朝鮮
運命の足音(五木寛之)/僕の昭和史(安岡章太郎)/私と朝鮮の間(田中明)/日本人学校と新付日本人学校(任文桓)/回想の牧の島(金素雲)/詩を書き始めたころ(森崎和江)/★遠い憂愁(日野啓三/★ポプラ(日野啓三)
第二章 朝鮮の少年たち、日本へ行く
★こんな世界もあったのか(任文桓)/★図書館大学(金素雲)/兼職三冠王(任文桓)/玄海灘密航(金史良)/★故郷を思う(金史良)/★ノビル団子と篭脱け詐欺(全鎮植)
第三章 こんな日本人がいた
★衛生思想の普及(森安連吉)/救世軍育児ホーム(石島亀治郎)/★浅川巧さんを惜しむ(阿部能成)/★ビリケン総督(藤田亮策)/朝鮮を憶う(宇垣一威)
第四章 出会い八景
ある日の晩餐(安倍能成)/★蕨(李孝石——〈これぞエッセイ!〉)/壺辺閑話(安倍能成)/★恩讐三十年(金素雲)/★白秋城(金素雲——〈北原白秋が金素雲を日本詩壇に紹介する会を催してくれた話。費用300円は白秋が朝日新聞に短歌30首を持ち込んで得たもの〉)/カミもホトケもない話(金素雲)/金海(浅川巧)/林檎(柳宗悦)
第五章 作家たちの朝鮮紀行
朝鮮雑観(谷崎潤一郎)/朝鮮の子どもたちその他(佐多稲子)/京城の十日間(島木健作)
第六章 街と風景と自然
朝鮮所見二三(安倍能成)/京城の市街に就いて(安倍能成)/京城とアテーネ(安倍能成——〈京城は乾いた都である。ニーチェは天才の生まれた都はみな乾燥しているといったが…〉)/京城の夏(安倍能成)/季節の落書(李孝石)/貝殻の匙(李孝石)/★樹木について(李孝石——〈山楊木の爽やかさ、白樺の高貴さ〉)/★水の上(李孝石)/★金剛山の風景(安倍能成)/遥かな山々(泉靖一——〈朝鮮語の白は古くはbakあるいはbulと発音した。ツングース語のbulつまりbulkan=神々が語源である〉)
第七章 朝鮮を見て、日本をふり返る
朝鮮陶磁号序(柳宗悦——〈朝鮮のものは、こちらが訪ねても訪ねずとも、いつも吾々を待っている〉)/京城雑記(安倍能成)/京城街頭所見(安倍能成)

最後に金素雲の経歴をまとめておく。
金素雲(1907~1981)詩人、随筆家、翻訳家。
釜山に生まれ、1920年、13歳のとき大阪行きの貨物船に乗って一人で日本に渡る。開成中学夜間部に入学したが中退。帝国通信社(共同通信社の前身)に入社して記者となる。
1927年白鳥省吾主宰の「地上の楽園」に『朝鮮農民歌謡』を連載して詩壇に認められる。
1928年、白秋、岩波茂雄の後援で「朝鮮民謡集」を発表。引き続き詩やエッセイによって朝鮮文化を日本に紹介。萩原朔太郎とも親交を結んだ。
1945年2月に朝鮮に戻り、光復後に名前を素雲と改めた。
1952年、朝鮮戦争の最中にローマで開催された国際ペンクラブに出席する途中で日本に立ち寄った。その際の発言がもとで韓国政府から帰国の道を閉ざされ、以降14年間日本に滞在して室生犀星らと交友した。
(2025.7.28読了)

Commented by マリーゴールド at 2025-08-31 13:50
生き生きした、たくさんの人の体験記なので、時代の雰囲気を感じることができました。丁寧で詳細な説明をありがとうございます。
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by nishinayuu | 2025-08-28 21:27 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

読書と韓国語学習の備忘録です。


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