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『ゲド戦記 Ⅰ 影との闘い』(アーシュラ・K・ル=グウィン、訳=清水真砂子、岩波書店)

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A Wizard of Earthsea』(Ursula K. Le Guin,1968

本作は主として大人向けのSFを書いてきた著者(1929~2018)1968年に発表したハイ・ファンタジー3部作の第1部。壮大な物語の舞台はアースシーという多島海世界で、そのアースシーの詳細な地図が表紙の裏一面に掲げられている。

物語はこのアースシーの東北の海にある島ゴントで生まれた若者が、おごりと妬みの心から呼び出してしまった「死の影」と闘う苦難の日々を綴っていく。

登場する人物、場所、ものなどを書き留めておく。

*ゴント——アースシーの東北に位置する全島が山から成る島。ここで生まれた魔法使いや賢者は多島海の領主たちに仕えたり、まじない師として島々を巡ったりした。

*ハイタカ——ゴント生まれの魔法の力を持つ若者。幼名はダニー。のちの名はゲド。

*オジオン——ゴントの大魔法使い。ハイタカをゲドと名付けた。オジオンの意味はマツカサ。

*ローク——アースシーの中心部にあり、魔法使いを養成する学院がある。

*ネマール——ロークの学院長。大賢人。

*ヒスイ——ロークの院生。

*カラスノエンドウ——ロークの院生。東海域のなまりがある肌の黒いずんぐりした若者。ゲドに心からの友情を示す。本名はエスタリオル。

*クレムカムレク——ローク島最北端の岬に建つ隠者の塔に住む「名づけの長」。弟子たちに眞の名を知っていく作業を課す。

*セゴイ——この世に陸地を造った者。彼が語ったのが「太古のことば」。

*オタク——隠者の塔から解放されたゲドがスズカケの木の下で夜を過ごした時にマントに潜り込んだ動物。太古の言葉による真の名はペグ。

*エルファーラン姫——エンラッドの全滅、ハブナーの魔法使いの死、ソレア島の海底沈没の原因となった人物。

*ジェンシャー——ネマールの後を継いだ大賢人。ウェイ島の人。皮膚が黒く、濃い眉の陰には黒々とした目が光っていた。

*ロークの九賢人——風の長、手わざの長、薬草の長、詩の長、姿変えの長、呼び出しの長、名づけの長、様式の長(一人足りない、とゲドは思った)。

*ペチバリ——船大工。ゲドの友人となる。

*ペンダー——龍の島。太古の言葉を操る龍をゲドは次々にやっつけた。年とった龍のイエボーは名前を呼ばれてゲドに屈した。

*スカイアー——ゲドがオスキルへ行くために乗った船にいたオスキル人。心を魔物に食いつくされて一瞬のうちに顔が変わった。

*セレット——昔、緑の野でゲドをからかって呪文を読ませ、影を放つ原因をつくったル・アルビの領主の娘。

*テレノン——宝石の名。これに精霊を閉じ込めたものがテレノン宮殿の塔の礎石になっている。

*ノコギリソウ——カラスノエンドウの妹。14歳くらい。兄と同様肌が黒い。小型の龍ハレキを手に持っている。本名はケスト(めだか)。

*ウミガラス——カラスノエンドウの弟。19歳くらい。木彫り細工職人。

*はてみ丸——ゲドが影を追う旅で乗った船。この船で行きついた世界の果てでゲドは「影」と対決し、「影」を吸収して「影」と一体になった。こうしてゲドは初めて「全き人間」になったのだった。

印象的なのは、カラスノエンドウ(エスタリオル)とハイタカ(ゲド)が本名を教えあった場面。

友を見送ったゲドは「本名を教えてくれるとは!なんという贈り物だろう」と茫然と立ち尽くす。

というのも人の本名というものは、本人と名付け親しか知らないものだからだ。よほど信頼している相手でなければ本名は明かさないのだ。危ない目にあうことの多い魔法使いともなれば、なおさらのこと。人の本名を知る者は、その人の命を掌中にすることになるのだから。〈このような考えはかなり普遍的なもので、日本の万葉集にもこれを示す歌がいくつもある。〉のちにカラスノエンドウの妹もゲドに本名を教える場面があって興味深い。

2025.6.19読了)


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by nishinayuu | 2025-07-05 15:52 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

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