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『ケレー家の人々』(ケート・D・ウィギン、訳=村岡花子、角川文庫)

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Mother Careys Chickens』(Kate Douglas Wiggin)

著者のケート・ウィギン(1856~1923)は19世紀後半から20世紀初に活発な文筆活動をする傍ら実践教育にも時間と才能を捧げた人物である。本作の他に『バード家のクリスマスキャロル』『サネーブルーク農場のレベッカ』『私の記憶の花園』がある。本書の巻末に訳者である村岡花子の次のような言葉がある。

これらの作品は家庭の読み物として推奨されるべきもので(…)『若草物語』『小公子』『小公女』『秘密の花園』などばかりが再読されてきた我が国の青春読み物の中へ加えられていくべきであり、その意味においてこの『ケレー家の人々』や『少女パレアナ』『リンバロストの乙女』などを送り出したことを喜びとする。

物語はキングズレーの『水の子』の一節から始まる。

「やがてそこへ海ツバメのひとむれがやってきました。ケレ―母さんのひな鳥たちでした…ツバメのように波から波へとんだり跳ねたり、小さな足をいかにも優雅にうしろのほうへ蹴上げながら飛び交っていましたので、トムはたちまちこの海ツバメの群れを夢中に好きになってしまいました」

ナンシー(長女)が読むのをやめて「今はこれだけよ、ピーターちゃん」と弟に言って本をテーブルに載せたところへ、母のケレー夫人がギルバート(長男)とキャスリーン(次女)をしたがえて玄関への階段を下りてくる。ギルバートは母のカバンと旅行用の外套を抱え、キャスリーンはこうもり傘を持って。夫人は長い旅行に出かけるところだった。モンロー要塞からケレー海軍大佐の病気を知らせる電報が来たのだ。

ケレー夫人は子どもたちに「かわるがわる手紙を書いてよこすこと、ほんとうに困ったことができたらアランおじさんに電報を打つこと、ちょっとした心配事の時はアンおばさんにいらしていただくこと、家の中のことはジョアンナとエレンがとりしきってくれるでしょうし、そのほかのことはいっさいナンシーに責任を持ってもらいますよ」と言うと馬車に乗って出かけて行った。

そして4週間ほど経ったとき、アンおばさんからケレー大佐の訃報がもたらされ、ケレー夫人が大佐の親友であるアドミラル(海軍大将)に付き添われて馬車から降り立った。ケレー母さんとひなどりたちの新しい出発の時が訪れたのだった。

何不自由ない暮らしから厳しい状況に追い込まれたケレー家の人々が、移り住んだ先で出会った人々との交流や、様々な試練を通して成長していく様子が生き生きと描かれた魅力いっぱいの作品である。詩の引用なども多い文学の香り高い作品であり、登場人物たちも実に魅力的。訳者の言葉通り、家庭の読み物、青春の読み物としてもっと読まれてもいい作品である。

2023.7.25読了)


Commented by マリーゴールド at 2023-10-02 16:26
殺伐とした世の中でほっとするような物語ですね。読んでみたいですね。
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by nishinayuu | 2023-10-01 14:42 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

読書と韓国語学習の備忘録です。


by nishinayuu