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『PACHINKO下』(ミン・ジン・リー、訳=池田真紀子、文芸春秋)

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主な登場人物と彼らに関する主要な事項は以下の通り。

❦パク・ソンジャ(朝鮮の影島に生まれた女性)牧師のパク・イサクと結婚して大阪へうつりすむ。イサクの死後は母と一緒に屋台で駄菓子を売る。

❦キム・ヤンジン(ソンジャの母)混乱した朝鮮を出て大阪に移り住み、ソンジャや孫たちと暮らす。

❦パク・イサク(大阪長老教会副牧師)

❦ノア(ソンジャの長男)早稲田に入学し、学ぶ楽しさを満喫。読書にも存分に時間を割く。コ・ハンスに資金援助を受けていたが、それが父から子への援助だと気づいて衝撃を受ける。退学して長野へ。

❦モーザス(ソンジャの次男)理不尽ないじめに暴力で対抗して警察沙汰になりかけた時に後藤に声をかけられ、学校をやめてパチンコ店に入る。1960年、20歳ですでに6軒のフロア長を経験。

❦後藤(大阪のパチンコチェーンのオーナー)16歳のモーザスを雇い入れる。店の従業員のほとんどは在日コリアン。経験を積んだモーザスを7号店の店長に抜擢する。

❦ソロモン(モーザスの息子)名付け親はヨセプ。「一歳のお祝い」では前に並べられた筆、糸、餅などの中から円の新札を選び取った。モーザスの希望で横浜のインターナショナルスクールで学ぶ。

❦パク・ヨセプ(イサクの兄)影島からやってきた弟一家を引き受ける。長崎で被爆。

❦パク・キョンヒ(ヨセプの妻。北の出身)美人で働き者。ヨセプを懸命に看護する。

❦コ・ハンス(闇社会とつながる実業家。ノアの実父)。

❦キム・チャンホ(コ・ハンスの部下。ひどい近視)キョンヒと結婚する夢をあきらめて平壌に旅立つ。

❦ジョン・メリーマン(コリアン系教会の牧師で英語教室の教師)幼い時にアメリカ人宣教師に引き取られ、プリンストンとイェールで学んだ。第一言語は英語で、物腰も完全に西洋風。

❦フィービー(ソロモンの恋人。コリア系アメリカ人)

❦外山ソトヤマ春樹(モーザスの友人)つらい学校生活から救ってくれたモーザスを崇拝している。刑事を目指して警察学校に進学。母の店で働いていたあやめと結婚。

❦外山(春樹の母)仕立てを営んで春樹と障害のある次男を育てている。

❦裕美(外山の店のお針子)母親はアルコール依存症の娼婦。アメリカ移住を目指して通い始めた英語教室でモーザスにであい、やがてソロモンを生んだ。ソロモンが3歳半の時、車にはねられて死亡。

❦あやめ(外山の店のお針子)春樹と結婚。春樹の母が癌に倒れた後、店を切り盛りし、春樹の弟大介の面倒を見た。母が死んだあとは春樹を説得して一家で横浜に転居。

❦梅木晶子(早稲田でノアが知り合った学生)いい家のお嬢さんで美人なうえに抜群に優秀。コリアン(つまり外国人)と付き合うことは教養のあるリベラルな人間であることの証明となる、と考えるような女性。

❦岩村理沙(コスモスパチンコ店の事務職員)ノアと結婚して4人の子をもうけた。

❦高野日出夫(長野のパチンコ店の支配人)食堂の給仕ビンゴから話を聞いて訪ねてきたノアを気に入って雇う。

❦長富悦子(モーザスの恋人)

❦花(悦子の娘)

この作品の存在は韓国語講座の講師の先生から教えられた。「アメリカでベストセラーになっているのに、日本では読書家の皆さんもご存じないなんて」というお言葉とともに。読んでみて、四世代の家族のそれぞれには共感できる部分も多く、それなりに感動的な物語ではあるが、やはり日本ではベストセラーにはならないだろうと思った。日本の読書人の中に在日韓国人、パチンコ業界、裏社会などなどについて積極的に知ろうとする人が大勢いるとは思えないからだ。翻訳物は原則として1部ずつしか置かない近所の図書館が、この本を3部そろえているのがむしろ以外だった。よほど見識のある担当者がいるのだろう。

nishinaの参加している韓国語講座では、韓国語訳の最初の2章を日本語訳、原文の英語と比較しながら読んだ。それぞれの表現の過不足や、翻訳者たちの努力の跡が見えて、なかなか面白い読書体験だった。なおnishinaの場合、日本語訳は図書館から借り、原文はKindleの電子書籍をダウンロードした。

2022.4.28読了)


Commented by shinn-lily at 2022-06-15 11:38
「パチンコ」はアメリカで評判になっていると聞いた時に翻訳が出ていないので、英語版で読もうとkindleにダウンロードしたのですが、とてもとても歯がたちませんでした(当然といえば当然)。翻訳が出てからすぐに読みました。在日の方々の生きざま、強さ、苦しさ、そしてその中でも自分の道を作ってゆく過程は興味深かったです。そんな平凡な感想しか言えないのに、心の奥に読後感が残っているのが不思議です。その後私が参加するハングルの会でも話題になっていました。日本ではベストセラーにならないのは、日本人の中に在日の方々に対する痛みのような棘を心の中にもっているか、まるで興味がないかのどちらかなのでしょうか?
Commented by nishinayuu at 2022-06-15 16:49
> shinn-lilyさん
コメントありがとうございました。この本が日本でベストセラーにならない理由は
①韓流ドラマ・映画やK-popは好きでも文学には関心がない
②「在日に対する痛みのような棘を心の中に持っている」というのは少数派で、それよりも韓国・韓国人になんとなく嫌悪感を持っている人が多い
のいずれかだと思います。私たちの講座では、時代考証がなっていない、人物造形がいいかげんで文学的価値が低い、という意見もありました。私個人としては、この作品の後半があまりに通俗小説的で、友人・知人には勧められない、と思っています。
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by nishinayuu | 2022-06-14 14:46 | 読書ノート | Trackback | Comments(2)

読書と韓国語学習の備忘録です。


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