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『Decline and Fall』(Evelyn Waugh, Project Gutenberg)

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1928年に出版された本作はイーヴリン・ウォー(1903~1966)の最初の長編小説で、第1次大戦後の崩れ行く旧社会と信用ならない上流社会をダークなユーモアで風刺したもの。

主人公のポ-ル・ペニフェザーはオクスフォード大学で神学を学ぶ学生で、父親を亡くしたためロンドンの後見人の家に住んでいた。父親が残した遺産5000ポンドは11か月後の21歳の誕生日にはポールのものとなるが、それまでは利子で学費を賄っていた。ある日ポールは学生たちのおふざけに巻き込まれ、ネクタイの模様のことで難癖をつけられた挙句、衣服を剥ぎ取られてしまう。そしてズボンをはかずに校内を歩いた「不品行」のかどで、理不尽にも被害者のポールが放校処分を受けてしまう。そのうえ後見人には、こんな事件を起こしたポールには遺産は渡せないし、家にも置いておけない、と言われてしまう。(因みにその春、後見人の娘はイヴニング・フロックを2着手に入れる。)居場所もお金も無くなったポールは教会の紹介で地方のパブリックスクールで住み込みの教師として働くことになる。給料は120ポンドということだったが、面接の際に放校の理由を正直に話したせいで90ポンドに値下げされる。翌日、ポールはユーストン駅から出る列車で学校のあるラナバ城(Llanabba Castle)に向かうのだった。

ラナバ城でポールを待ち受けていたのは絶大な権力者の校長(Dr Fagan)と一癖も二癖もある教師たち(Captain Grimes, Prendergast)、そして10歳~18歳の50人余りの生徒たちだった。他にも校長の娘たち(Flossie,Dingy)や食堂の執事(Philbrick)、生徒の親たち(Mrs Beste Chetwynde)まで絡んだてんやわんやの日々が展開する。やがて複雑で怪しい経歴を持つPhilbrickが失踪し、Flossieとの結婚を嫌ったGrimesも姿を消す(実は偽装自殺)。一方ポールはマーゴット(Mrs Beste Chetwynde)と結婚することになり、彼女の邸宅、ホテル、別荘を行き来する生活が始まる。結婚前に彼女の事業のためにマルセーユで一仕事片づけることになり、ポールはコスモポリタンになった気分を味わう。「今日はリッツ、明日はマルセーユ、その翌日はコルフ(アドリア海の別荘地)。そのあとは世界が待っている」と。実はマーゴットは南米で売春ビジネスを展開している女性で、マルセーユの仕事もそれにかかわるものだったため、ポールは警察につかまって牢屋行きとなる。その後もポールの運命は二転三転していくが、ポールはいつも運命を淡々と受け入れていく。ポールは決して自分から何かをする人物ではなく、いつも何かに巻き込まれてしまう人物なのだ。

この作品との出会いは大学1年の夏休み。受験勉強からも大学の授業からも解放されて、手当たり次第に読んでいたpenguin booksの中の1冊だった。この作品が気に入って夏休み中に他にも3冊イーヴリン・ウォーを読んでいる。が、今回読み返してみて、本当に大学1年の時に読んだのだろうか、と信じられない思いがした。

とにかく人物や事件がごちゃごちゃ登場し、ウエールズの不思議なスペリングの地名もでてくる。インターネットなどなかった時代だったから、人名、地名、発音などはわからないまま強引に筋を追っただけだったにちがいない。

2021.6.10読了)


Commented by マリーゴールド at 2021-08-05 07:25 x
面白いですね。翻訳があるといいんですが。英語の本だったら、読み終わるのに時間がかかって投げ出したくなります。読むスピードが速くさすがですね。
Commented by nishinayuu at 2021-08-05 09:21
>『大転落』というタイトルで翻訳が出ています。
いろいろ調べながら少しずつ、それも他の本数冊と並行して読んでいますので、読み終わるまでにあきれるほど長くかかっています(涙)。大学1年の夏休みにペンギン叢書を10冊ほど読んだと記憶していますが多分記憶違いでしょう。
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by nishinayuu | 2021-08-03 18:12 | 読書ノート | Trackback | Comments(2)

読書と韓国語学習の備忘録です。


by nishinayuu