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『コリーニ事件』(フェルディナント・フォン・シーラッハ、訳=酒寄進一、東京創元社)

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Der Fall Collini』(Ferdinand von Schirach, 2011

本作は『犯罪』『罪悪』などで知られる著者の初長編。舞台は2001年のベルリン。


始めに殺人がある。ホテル・アドロン5階の400号室。ベージュの絨毯、暗色系の家具、大きな窓のある高級で重厚なこの部屋を訪れたコリーニは、部屋にいた85歳の男の後頭部を4発の銃弾で撃ち抜いて殺した。殺したあと、コリーニは男の顔を何度も踏みつけた。靴のかかとが外れるまで。それからコリーニは1階まで降り、フロント係の若い女性に告げた。「警察を呼んでくれ、400号室であいつが死んでいる」と。コリーニはロビーの青いソファに腰掛けて、逮捕されるのを待った。フロント横の電光掲示板には、「2001年5月26日午後8時、シュプレーの間、ドイツ機械工業連盟」と表示されていた。

次に登場するのはかけだしの弁護士、カスパー・ライネン。刑事弁護士会のホットラインに名前を載せているライネンにティーアガルテン区裁判所のケーラー捜査判事から連絡が入る。「弁護人のいない被疑者」のための弁護の依頼だ。ライネンは弁護士になってやっと42日たったところで、「カスパー・ライネン弁護士」という表札を出したのは二日前のことだった。ライネンは張り切って区裁判所に出かけ、被疑者に接見する。コリーニは弁護士はいらない、なにも話したくない、というが、ライネンはそんな彼の「国選弁護人」になることを申請する。これこそがライネンが望んでいた仕事だったからだ。ところが、裁判に向けて準備を進めていく中でライネンは、コリーニが惨殺したマイヤー機械工業元代表取締役のジャン=バプティスト・マイヤーが何者なのかを知って愕然とする。彼はライネンの少年時代の親友の祖父で、ライネンを実の孫のようにかわいがってくれたハンス・マイヤーその人だったのだ。

一方、被害者のマイヤー機械工業元代表取締役ジャン=バプティスト・マイヤーの遺族であるヨハナは、マッティンガー老弁護士を公訴参加代理人に依頼する。ヨハナからハンス・マイヤーの本名がバプティスト・マイヤーであると知らされたライネンは、コリーニの弁護人を降りようとしたが、マッティンガーに諭され、全力を尽くして弁護することを改めて決意する。こうして新米の国選弁護師とベテランの辣腕弁護士が、法廷で対決することとなった。

はじめは全く接点がないように見えたコリーニとハンス・マイヤーだが、コリーニにはハンス・マイヤーを深く憎悪する理由があったのだ。そしてドイツの法制度にはコリーニにハンス・マイヤーを惨殺することでしか憎悪の念を晴らすことはできないと思わせた「法律の落とし穴」があったのだ。著者の祖父がナチ党全国青少年最高指導者だったと知るとなおいっそう重みが感じられる作品である。(2019.12.18読了)


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Commented by マリーゴールド at 2020-03-17 19:04 x
ドイツの小説もおもしろいので、これも読んでみたいです。ドイツはナチスの因縁が絡んでくるものが多いようですね。
Commented by nishinayuu at 2020-03-17 21:41
> マリーゴールドさん
この作品は翻訳者名を見て選びました。信頼できる翻訳者です。
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by nishinayuu | 2020-03-12 09:42 | 読書ノート | Trackback | Comments(2)

読書と韓国語学習の備忘録です。


by nishinayuu