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『千里眼の村―クリスマスストーリー』

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A. キングスフォード、訳=The Creative Cat、青空文庫)

AVillage of Seers』(Anna Kingsford


クリスマスの前日か前々日のことだった。英国からスイスのバーゼルに仕事で出かけることになった語り手は、カレーに向かう蒸気船の中で見かけた「尋常ではない感じの男に」興味を抱いた。カレーで列車に乗り換えた際、その男が語り手のコンパートメントに入ってきた。

「薄明かりの下でちらっと顔を見た限りでは、見知らぬ男は五十絡みだったと思う。繊細で上品な顔付きで、目は暗く落ち窪んでいたが、知性と思慮を漲らせていた。全体の雰囲気から、生まれが良く、勉学と瞑想向きの性格で、人生の中でとても悲しい経験をしてきたことが伺えた。」

何気ないやりとりから、男がパリからバーゼルへ、そこからさらに遠くへ行くことがわかった。

パリでは別々に朝食を取ったが、語り手は男がバーゼル行きの列車に乗るのを見届けて同じコンパートメントに飛び込んだ。二人ともはじめは眠っていたが、スイスの国境が近づくと目が冴えて、ぽつぽつとことばを交わすようになった。男の目的地が普通の旅行者なら夏にしか訪れない山岳地帯だと知った語り手は、ますます興味をかきたてられ、なにか手助けしたい、と申し出る。すると男は語り手が自由に使える日数を確かめる。こうして二人は名刺を交換する。

男の名刺――チャールズ・デニス・セント=オービン(ロンドン、グロブナー・スクエア シュルーズベリー、セント=オービンズ・コート

語り手の名刺――フランク・ロイ(マーチャンツ・クラブ、ウェスタン・セントラル)

こうして語り手は、セント・オービン氏の「息子に会う旅」に同行することになった。この夏、父親と登山を楽しんでいた息子(12歳)が渓谷に滑落し、そのまま行方不明になっていた。滑落直後に父親はガイドと共に急いで下に降りたが、少年の姿はなかった。大声で呼んでも応える声はなかった。聾唖のため耳も聞こえなければ声も出せない少年だった。何日も探し回った末にすべての希望が潰えた。しかし今、セント・オービン氏は「息子は生きている」と確信してアルプスの山懐にある小さな村に向かっているのだという。年に一度、クリスマス・イヴの時だけに発揮される「千里眼」を持つ人々の住む村に。(2019.12.8読了)


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Commented by マリーゴールド at 2019-12-29 17:53 x
興味がふつふつとわいてきます。
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by nishinayuu | 2019-12-23 09:03 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

読書と韓国語学習の備忘録です。


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