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『The Disappearance of Crispina Umberleigh』(Munro)

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『クリスピナ・アンバリーの失踪』(マンロウ)

バルカンに向かう列車に乗りあわせた二人のイギリス人。一人はジャーナリストで、もう一人はワイン業界の人物。二人とも「おしゃべり」ではないので、そのためかえってときどきことばを交わすことになる、というわけでワイン業の男が伯母クリスピナ・アンバリーの数奇な失踪事件を語り始める。

伯母のクリスピナ・アンバリーは、家族をはじめ周囲のすべての者の上に君臨する恐るべき女性だった。伯父のエドワード・アンバリーは世間的には強い男性として通っているが、明らかに伯母に支配されていた。息子たちや娘たちにいたっては、勉強・友人・食事・娯楽・信仰から髪型まで、伯母の考えと好みによって決められていた。そんな伯母が何の前触れもなく不可解な失踪をしたため、家族は茫然自失した。セント・ポール大聖堂が、あるいはピカデリー・ホテルが一夜にして消えてしまい、その跡がぽっかりと空き地になったかのようだった。

しかし家族の立ち直りは早かった。娘たちはみんな自転車を買った(当時は女性の間でサイクリングが流行っていたのに、クリスピナは娘たちが自転車に乗ることを断固として許さなかった)。成績が思わしくなかった末の男の子は学校に行かないことにした。その兄たちは母親が外国を放浪しているという説を立てて、母親が行きそうもないところを熱心に探した。アンバリー氏の許には、クリスピナを誘拐してノルウェーの島に閉じ込めている。毎年2000ポンドを払えばずっとここに置いておく。さもないと彼女を家族の許に送り返す」という普通の誘拐犯の要求とは逆の脅迫状が来た。が、アンバリー氏は自由を思いきり楽しんでいる子どもたちのために、さらにはa strong manからthe strong manに昇格した自分のためにも、身代金を払い続けるほうを選択したのだった。さて、クリスピナ・アンバリーはいったいどうしていなくなったのだろうか、そして今、どこにいるのだろうか。

例によって、害のない皮肉を交えた突拍子もないお話でした。(2019.1.11読了)


Commented by マリーゴールド at 2019-05-14 14:39 x
気楽なお話のようですね。お茶と一緒に読みたいですね。
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by nishinayuu | 2019-05-11 10:14 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

読書と韓国語学習の備忘録です。


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