『아무도 아닌』(황정은, 문학동네)
2019年 04月 06日
『誰でもない』(黄貞殷)
本書は1976年ソウル生まれの若手作家による3冊目の小説集。2012~2015に発表された8編が収録されている。登場するのは孤独でわびしい男女(著者のポートレートが象徴的!?)だが、悲惨さやむごたらしさはなく、おおむね共感できる。凝った文章、難解な言い回しもないので読みやすい
*『上行』――語り手と男友達のオジェがオジェの母親と一緒に、母親の養母が暮らす田舎に出かけて唐辛子やら柿やらの収穫を手伝い、収穫したもの以上のお土産をもらってソウルに帰る。(集中で唯一明るくて楽しい話。)
*『ヤンの未来』――書店員のヤンは不良たちと談笑している少女チンジュを目にするが、そのまま仕事を続けていたらチンジュが行方不明になった。何日も書店の前に座り込んでチンジュを待ち続ける母親。ヤンは黙って立ち去り、今は目立たない所でひっそり暮らしている。同僚のホジェのかわいがっていた猫たちのことを思うこともあれば、チンジュに関する情報を求めて夜を過ごすこともある。
*『上流には猛禽類』――ジェヒとその母親と樹木園に行った語り手。それなりに楽しい一日だったのだが、2年後にジェヒと別れることになったのは自分のせいでは、と思う。
*『ミョンシル』――長年連れ添ったシリルに死なれて長い間ひとりぼっちのミョンシル。ふと思いついてノートを買うことにした。机の抽出にはシルリが使っていた万年筆もあるし。
*『誰が』――アパートの上の階と下の階の騒音問題に悩まされる語り手は、やがて社会の階級問題を意識することに。(李孝石文学賞受賞作品。)
*『誰も行ったことのない』――ふと思い立って初めての海外旅行に旅立った夫婦。ヘルシ
ンキ、ワルシャワ、クラクフを経てプラハへ。そこで2回、はぐれそうになる。ベルリン行きの列車内で険悪な雰囲気になり、ベルリン駅では降り損なった妻を乗せたまま列車が出発してしまうという事態に。
*『笑う男』――決定的な瞬間に思わず回避する人間は、次の時も回避してしまう。語り手の父がそうだった。語り手はバスを待っていたとき、自分の方に倒れかかってきた老人を支えずに身を引いてしまい、しかも地面に頭を打ち付けた老人をそのままにしてバスに乗ってしまった。ディディが死んでしまったのも、彼女を引き寄せるべきときに自分の鞄を引き寄せてしまったからだ。狭い部屋に閉じこもって男は考え続ける。男は笑ってはいないのだが、この部屋を出て行けばやがて笑うこともあるだろう。
*『作り笑い』――デパートの寝具売り場で働く女性。他人との摩擦を避けるためにいつも笑っている。笑いたいわけではないのに笑ってしまう。(感情労働に携わる人間の日常を描きつつ、暴力について考察した作品。我々は日々、他人からの暴力に曝されていると同時に、自分も他人に対して暴力的な存在になり得るのだ。)
(2018.12.16読了)

