『血盟の箱』(マーク・プライヤー、訳=渋谷正子、ハヤカワ文庫)
2019年 01月 26日
『The BloodPromise 』(Mark Pryor, 2014)
本書のカバーには続・『古書店主』とあるが、主人公が同一人物であるというだけで、『古書店主』の続編というわけではない。ただ、始めのほうにある「ブキニストの捜査の決着がついたときに、ブキニストの娘から父親のコレクションの一品だった『星の王子様』の著者サイン入りの初版本を贈られた」という言及が『古書店主』とのつながりといえばつながりといえる。
物語の冒頭は1795年のパリ。アルベール・ピジョンという老人が現代社会で最も影響力のある人物に宛てて手紙を認めている。書き終えると自分の血で署名を記し、蠟で封をした「ル・カドゥー(寄贈品)」とともに精巧に作られたチェストに納める。これがタイトルにある「血盟の箱」で、ある男に託されて遠くに送られることになるのだが、この段階ではピジョンが何者なのか、誰に宛てて手紙を書いたのか、チェストがどこに送られたのかはまだわからない。
本書はフランス革命の折にとらわれの身となったドーファン(王太子、マリー・アントワネットの息子)が、秘かに救い出されてある家族の息子としてアメリカで育てられた、という設定を基にして構築された歴史ミステリー。フランスの名門一族、アメリカの大統領候補などが絡み合って起こる窃盗事件や殺人事件を、主人公のヒューゴが友人のトム、部下のカミーユらとじっくり(のんびりゆったり?)解決していく。主な登場人物は以下の通り。
*ヒューゴ・マーストン――駐仏アメリカ大使館の外交保安部長。「ゲイリー・クーパーばりの容姿で、ジェイムズ・ボンドばりの活躍」をする元FBIのプロファイラー。好きな作家はオスカー・ワイルド(親近感が湧く!)
*トム・グリーン――ヒューゴのよき相棒。元CIA局員。
*クラウディア――ジャーナリスト。ヒューゴの恋人。
*チャールズ・レイク――アメリカ合衆国上院議員
*アンリ・トゥールヴィユ――フランス外務省欧州局の高官
*アレクサンドラ――アンリの妹
*ラウル・ガルシア――パリ警視庁主任警部
*カミーユ・ルラン――パリ警視庁警部補。男から女に性転換した人物。大きなサイズの婦人靴を探すのに苦労している。
(2018.9.26読了)