『ショーシャ』(アイザック・B・シンガー、訳=大崎ふみ子、吉夏社)


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Shosha』(Isaac Bashevis Singer

物語の舞台は第二次世界大戦前のワルシャワ。著者は「はしがき」で、「この小説は決して、ヒトラー以前の数年間におけるポーランドのユダヤ人たちを描いたものではない。またとない状況におけるまたとない数人の人々の物語である」と言っているが、その「数人の人々」がなんと鮮明に、印象的に描かれていることか。そして語り手が彼らと別れた後の、彼らの人生の終わりまでが、なんと懇切丁寧に描かれていることか。さて、その数人の人々とは

*アーロン(愛称アレーレ、別名ツツィク)――語り手。少年時代をワルシャワのゲットーとも言えるクロホマルナ通りで過ごし、後にイディッシュで著述する作家となる。

*ショーシャ(愛称ショーシェレ)――クロホマルナの幼なじみ。発育不全気味だったが、語り手にとってはかけがえのない存在。後に語り手と結婚する。

*バシェレ――ショーシャの母親。20年ぶりにクロホマルナの7番の建物を訪れた語り手を、以前と全く変わらない姿と態度で迎え入れる。語り手が再び現れたことに驚いた気配もなく。

*ドラ――20代の語り手が「作家クラブ」で知り合い、付き合うようになった女性。共産党員。

*モリス・ファイテルゾーン――語り手より25歳ほど年上の売れない哲学博士。最高級のディレッタントで、華麗な女性遍歴を誇る。語り手の才能を見いだし、作家デビューを支援してくれた、語り手にとって大切な友人。

*シーリア――ファイテルゾーンの崇拝者の一人。読書家で鋭い批評眼の持ち主。語り手にファイテルゾーンとの関係を打ち明けたことをきっかけに、語り手と親密な間柄になる。

*ハイムル――シーリアの夫。資産家の息子だが身体が小さくて虚弱なため、シーリアが母親のように世話をしている。ずっと後にエルサレムで語り手と再会し、昔の知人たちの消息を語り手に伝える。

*ベティ・スローニム――イディッシュ劇場に出演するためにポーランドにやって来たアメリカの女優。ファイテルゾーンから紹介された語り手に芝居を書くことを勧める。夫のサムは大金持ちでスポンサー的存在。

語り手の思いを伝える句節を以下にメモしておく。

*(作家クラブにて)ポーランド人たちはぼくたちを厄介払いしたがっている。彼らはぼくたちを片付ける勇気はないけれど、ヒトラーが代わりにやってくれたら涙一つ流しはしないだろう。

*(シーリアの家にて)会話は、なぜ私たちがワルシャワを立ち去らないかという疑問に行きつき、そして私たちめいめいが多かれ少なかれ同じ答を出した。私はショーシャを置き去りにはできない。ハイムルはシーリアなしに行くつもりはない。その上、三百万のユダヤ人が留まっているのに、逃げ出して何の意味がある?

2018.6.26読了)


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Commented by マリーゴールド at 2018-09-28 09:48 x
ナチスの虐殺から生延びたユダヤ人の物語は厳粛な気持ちになります。読んでみたい。
by nishinayuu | 2018-09-23 09:46 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

読書と韓国語学習の備忘録です。


by nishinayuu