『The Interlopers』(H.H.munro, Doubleday & Company,Inc.)


c0077412_11421960.jpg『闖入者』(モンロー)

本作は『サキ全集』の「TheToys of Peace」の1編。

舞台は東部カルパチア山地にある広大な山林。狩猟に適した野獣の宝庫であるこの山林は、かつて所有権をめぐって裁判が行われ、大地主のグラドヴィツ家が正統な所有者として認められた。しかし訴訟の相手だった小地主のズネーム家はその裁判結果を受け入れず、両家は3代にわたって争い続けている。その争いは今や土地争いの域を超えて、互いに相手の不幸を願うという個人的憎悪にまで発展している。

ある冬の夜、グラドヴィツ家の当主はライフルを手にして、数人の部下とともに領地の外れをパトロールしている。彼が耳を澄まし、目を凝らして待ち構えているのは野獣ではなく、ズネームとその部下たちだ。風の強い夜なのに、いつもなら茂みに隠れているはずの牡鹿たちが駆け回り、眠っているはずの獣たちもなぜか落ち着かないのは、密猟者が入り込んでいるからに違いないのだ。今日こそは決着を付けてやる、という思いでグラドウィツは、部下を山の上に潜伏させて、一人で麓の深い森に降りていく。そして、いきなりズネームと出くわしてしまう。ズネームも部下と離れて一人きりだった。

二人は銃を向け合ってにらみ合うが、やはりそう簡単には発砲できずにためらっているうちに、風に煽られて倒れてきた橅の大木の下敷きになってしまう。二人とも怪我をして身動きもできないまま、このときとばかり積年の憎しみをぶつけ合う。が、やがてどちらも部下たちの助けを待つしかない身であることに気づくと同病相憐れむ気持ちが起こる。徐々に相手への憎しみは薄れていき、ついには仲直りをして世間を驚かせてやろう、ということで一致するに至る。

そこで二人は声を合わせて部下たちを呼ぶ。どちらの部下が先に来ても、まず相手を助けさせてから自分も助けてもらう、と心に決めて。やがて遠くにいくつかのシルエットが浮かび上がり、こちらに向かって力強く走ってくるのを目にしたグラドウィツは、目に怪我をして何も見えないズネームに、9人か10人のようだ、と教える。じゃあ、そっちの部下たちだな、こっちは7人しか連れてきていないから、とズネーム。が、近づいてくるシルエットを見つめていたグラドウィツは、いきなりばかのように笑い出す。恐怖に戦慄しながら。

巧みな語り口とブラックな結末という「サキらしさ全開」の作品。(2018.4.13読了)


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Commented by マリーゴールド at 2018-06-06 19:41 x
続きを知りたくなります。
by nishinayuu | 2018-06-05 11:44 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

読書と韓国語学習の備忘録です。


by nishinayuu