『偉大なる時のモザイク』(カルミネ・アバーテ、訳=栗原俊秀、未知谷)


c0077412_10333460.jpgIl mosaico deltempo grande』(Carmine Abate, 2006

南イタリアの七つの州にはアルバニア系住民アルバレシュの共同体が50もあり、そのうち33が半島の長靴の先に位置するカラブリア州に集中している。アルバレシュの祖先は15世紀の初めから18世紀後半までにオスマン帝政下のアルバニア(当時の名はアルベリア)からイタリアに逃れてきたキリスト教徒たちだという。

本書にはアルバレシュの架空の共同体「ホラ」を舞台に繰り広げられる三つの世代の三つの恋物語が描かれている。それはアントニオ・ダミスとドリタの物語、ミケーレとラウラの物語、そしてジャンバッティスタ・ダミスとエレオノーラ(美しきロッサニーザ)の物語、という順に語られるが、時系列においては最も古いのが15世紀のジャン・バッティスタの物語、次が20世紀のダミスの物語で、最後がミケーレの物語となる。これらの三世代の人々の物語が、時と所を行ったり来たりしながら複雑に絡み合って進行していく。耳慣れない地名や人名、さらにはカタカナ表記されるさまざまな言語などのせいで、3分の1ぐらい読み進まないと全容が見えてこないのがもどかしいが、そのもどかしさが薄れる頃には魅力溢れる物語の世界にすっかり取り込まれている。

以下に主要人物をメモしておく。

*ヅィミトリ・ダミス(5世紀前に人々を引き連れてカラブリアにやって来た最初のパパス=正教会神父)

*ヤニ・ティスタ・ダミス(ヅィミトリの長男。苦難の中にいる同胞を救うためにアルバニアのホラへ旅立ったが、結局トルコ兵に捕らえられ、生きたまま皮をはがれて死んだ)

*コントラニ・ダミス(ヤニ・ティスタ・ダミスの次男で二人目のパパス)

*ジャンバッティスタ・ダミス(コントラニの息子。三人目のパパス)

*ゴヤーリ(モザイク工房の主。20世紀末に社会主義体制下のアルバニアから脱出した人々のうちの数少ない生き残りの一人。ホラの歴史をモザイク画で描き、若者たちに語って聞かせる、物語の進行役。本名はアルディアン・ダミサ)

*ミケーレ(大学を卒業したばかりの若者でゴヤーリに信服している。卒業祝いパーティを終えたらホラを出るつもりでいる)

*アントニオ・ダミス(ヅィミトリの直系。若い頃はミケーレの父親の親友だった。アルバニアの「ひとつめのホラ」へのあこがれから故郷を離れ、やがてブリュッセルへ、さらにアムステルダムへ)

*ドリタ(アルバニアの踊り子。ブリュッセルまで追ってきたアントニオと結婚する)

*ラウラ(アントニオとドリタの娘。レポートを書くためにカラブリアのホラへやって来てミケーレと知り合う)

*ゼフ(ラウラとともにホラにやって来た男の子。ラウラの甥)

*ツァ・マウレルア(アントニオの隣人だった女性。ラウラがアントニオの娘であると知りながら、ゼフのめんどうを見る)

*ロザルバ(ツァ・マウレルアの娘。ホラいちばんの美しい娘だったが、恋人のアントニオが去ったあとは家に閉じこもったまま)

『風の谷』や『ふたつの海のあいだで』と同様に、アバーテの登場人物たちは異邦人に惹かれて遠くへ旅立つ。そして故郷を憧憬し続ける。(2018.3.25読了)


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Commented by マリーゴールド at 2018-05-18 14:21 x
ヨーロッパの移民の歴史はとても長いのですね。ぜひよんでみたいですね。
by nishinayuu | 2018-05-16 10:37 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

読書と韓国語学習の備忘録です。


by nishinayuu