『赤く微笑む春』(ヨハン・テオリン、訳=三角和代、早川書房)

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Blodläge』(Johan Theorin, 2010

本書は秋編に始まる「エーランド島 4部作」の第3作目に当たる。夏編でさえ『夏に凍える舟』というタイトルになるような北国の、しかも本土から離れた島の寒さと冷たさ、寂寥感が、本作からもひしひしと伝わってくる。「赤」「微笑む」「春」と一見温かそうなイメージの言葉が並んでいるにもかかわらず。

本作には、シリーズを通しての主人公であるイェルロフの他に二人の主人公がいる。一人は古い家を継いだ新参の住民であるペール、もう一人は古い民話の世界とともに生きてきたヴェンデラである。ペールは本作のストーリー展開の軸となる人物であり、ヴェンデラは1950年代を回想することによって過去と現代を結びつける人物である。主要登場人物は以下の通り。

*イェルロフ・ダーヴィッドソン――元船長。不自由な体ながら老人ホームを出て自宅で暮らし始める。

*エラ――イェルロフの亡き妻。残された日記には「とりかえっ子」に関する記述もある。

*ペール・メルネル――妻子と別れて島で暮らし始めた会社員。ふたごの兄妹(イエスペルとニーラ)の父親として彼らと過ごす時間も大切にしている。ニーラは危険な手術を控えて入院中。

*ジェリー・モーナー――ペールの父で元ポルノ映画の制作者。年老いてペールの許に転がり込む。

*ハンス・ブレメル――ジェリーの仕事仲間。写真講師。

*トマス・ファル――ハンスの教え子。最後の方でペールとの因縁が判明する(ネタバレ)。

*ヴェンデラ・ラーション――島育ちの女性。「作家で料理研究家」の夫マックスのゴーストライター。

*ヘンリ・フォシュ――ヴェンデラの父。島の石切場で働いていた腕のいい石工。

*ヤン-エリク――ヴェンデラの兄。障害のため家に閉じ込もったまま、17歳のとき姿を消す。

本書には幸せをもたらすエルフや禍をもたらすトロールの話がよく出てくる。ヴェンデラは子どもの頃はもちろん、大人になってからもエルフやトロールのいる世界で生きてきたのだ。父親がその存在を隠していた兄ヤン-エリクも、ヴェンデラにはそんな世界の住人のようだったのではないだろうか。エラの日記に残された「とりかえっ子」のエピソードや、ヴェンデラを救ったあと霧の中に消えた少年のエピソードなどから垣間見えるヤン-エリクの姿が、本筋の人物たちの姿より強く印象に残る。

2018.2.9読了)
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Commented by マリーゴールド at 2018-04-06 22:41 x
ヨーロッパの辺境といった所なのでしょうか。自然も豊かで民話も生活の中に息づいているような。機会があったら読んでみたいですね。
by nishinayuu | 2018-04-06 09:36 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

読書と韓国語学習の備忘録です。


by nishinayuu