『黄昏に眠る秋』(ヨハン・テオリン、訳=三角和代、早川書房)

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Skumtimmen』(Johan Theorin, 2007

タイトルに「秋」が入っている本作は、冬、春、夏と続いていく「エーランド島シリーズ」の第1作目。2017426日にupした『冬の灯台が語るとき』はシリーズの2作目となる。非常に印象的だった第2作と同様、この第1作もエーランド島の厳しい気候と美しい自然、そこに生きる人々の思いが切々と伝わってくる傑作である。主な登場人物は以下の通り。

ユリア・ダーヴィッドソン――看護婦。草原に出たまま戻らない息子を何年も待ち続ける。

イェンス――ユリアの息子。6歳の誕生日を控えたある日、一人で草原に出てそのまま行方不明に。

イェルロフ――ユリアの父で老人ホーム暮らし。シェーグレン症候群を病んでいる。第1作にも登場。

エルンスト・アドルフソン――元石工の彫刻師。イェルロフの友人。

ヨン・ハーグマン――元船長。イェルロフ、エルンストの友人。

レナルト・ヘンリクソン――ユリアに好意を持つ警官。同じく警官だった父親は公務中に死亡。

アストリッド・リンデル――元医師の健康的女性。イェルロフに友好的。

グンナル・ユンイェル――ホテルのオーナー。

マルティン・マルム――アルム貨物の創業者。

ヴェラ・カント――ステンヴィークの資産家で、世捨て人。ニルスを溺愛している。

ニルス・カント――ヴェラの息子。「ステンヴィークの贖罪を背負う者」。

物語は19729月のある午後、6歳の少年が祖父母の庭を抜け出してジュニパーの茂みに向かうところから始まる。一人で庭を抜け出したのは初めてのことで、少年は行く手には冒険が待っているはずだった。しかし、辺りは次第に深い霧に包まれて行き、霧の中から男が現れて、ニルスと名のって少年の手を取る。そして少年は行方不明になり、近所中で探し回って警察も捜索に当たったが、少年はついに家に帰ることはなかった。それから20年以上の月日が流れたある日、祖父イェルロフのもとに少年のスニーカーの片方が送られてくる。それをきっかけに、少年の失踪以来島によりつかなかった母親のユリアがイェロフノもとに戻ってくる。

再会した二人の交流が、二人の視点で語られていく本筋と交互に、もう一つの物語が語られていく。それは1930年代中頃に10代の少年だったニルスの物語だ。軽い意地悪から弟を溺死させ、平原に隠れていた二人のドイツ兵をはずみで殺してしまい、逃亡するために警官を撃ったニルス。そのまま島からいなくなったニルスは、やがて遠い南米から棺に入って母親の許に戻ってくる。しかしニルスの埋葬が済んだあとも、母親のヴェラの許には手紙が届き続け、人々は墓で眠るのはニルスではないのではないか、と噂し合った。ニルスは確かに生きて島に戻ってきていたのだった。それはちょうど少年が行方不明になった時期と重なっていた。そのとき平原でいったい何があったのか。謎は最後の最後まで持ち越され、物語はしみじみとした情感を残して終わる。

ニルスといえば、鵞鳥たちと不思議な旅をしたあのニルス少年を思い出します。ニルス少年も空を飛ぶ前はとんでもない悪い子だったのだから、この物語のニルスもまともな大人になったのでは、と淡い期待を抱きながら読んだのでした(?)。(2017.12.5読了)


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Commented by nishinayuu at 2018-01-31 12:04
「二重の謎。惹きつけられますね。」(マリーゴールドさんのコメントを転載)
by nishinayuu | 2018-01-26 09:46 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

読書と韓国語学習の備忘録です。


by nishinayuu