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『ギャザリング・ブルー』(ロイス・ローリー、訳=島津やよい、新評社)


『ギャザリング・ブルー』(ロイス・ローリー、訳=島津やよい、新評社)_c0077412_9401097.jpg『Gathering Blue』(Lois Lowry, 2000)
サブタイトルは『青を蒐めるもの』。『ギヴァー』(記憶を注ぐもの)の続編である。
本編の主人公はキラ(Kira)という「2音節」の名を持つ少女。キラの村では名前の音節によっておよその年齢がわかるようになっている。すなわち名前が「1音節」なら幼児、「2音節」なら青少年、「3音節」なら壮年、「4音節」なら老年である。キラも幼少期はキア(Kir)という名だった。
キラは生まれつき足がねじれていたので、この村では生きる資格がない者として処分されるはずだったが、母の必死の抵抗と有力者だった祖父のおかげで処分を免れた。キラは織物の名手である母の手伝いをしながら暮らしてきたが、母は病死してしまった。フィールド(旅立ちの野)で4日間、母の魂が立ち去るのを見守って村に戻ったキラには、住む家も頼るべき人もいなかった。母が病死だったため、村の掟に従って家は焼かれてしまった。父親はキラが生まれる前に亡くなっていたし、祖父もすでに亡くなっていた。しかもキラは、人々から働き手としても結婚相手としても期待されていない、無用の人間だった。キラはこの村で生きていく方法を必死で考える。
糸を操って模様を作り出すことにかけては他の追随を許さない才能を持つキラ。その才能のおかげで議事堂の一郭に部屋を与えられ、刺繍の仕事をすることになるキラ。仕事に必要な染色を学ぶために森に植物園を持つ老女の許に通うキラ。そうした毎日の中で、キラは次第に芸術家として遇されることの意味と、背後に潜むおぞましさに気づいていく。やがて、どうしても見つからなかった「青い糸」が外部から来た男によってもたらされた時、キラは新たな決断をする。

主な登場人物――マット(Mat。下層民の集落である沼地の住人で、キラの手助けをする活発な少年)、トマス(Thomas。彫刻の才によってキラと同じく議事堂の一郭に部屋を与えられている少年。文字が読めないキラのために植物と色の名を記録して手助けをする)、ジャミソン(Jamison。守護者評議会の一員。後見人としてキラの世話と監督を担当)、アナベラ(Annabella。キラに染色を教える老女)、クリストファー(Christopher。狩をしているときに命を落としたキラの父)

植物と色の関係――赤系(カワラマツバ、アカネ、)、黄色系(ヒトツバエニシダ、ヨモギギク、ノコギリソウ、オオハンゴウソウの葉と茎)、茶系(ホウキスゲ、聖ヨハネの草、秋のキリンソウ)、緑系(カミツレ、オオハンゴウソウの花)、紫系(タチアオイ、ニワトコ、バジル)、青銅色(ウイキョウ)、青(ホソバタイセイ)、色止めに使えるもの(ウルシ、木の虫こぶ、古いおしっこ)

最期のほうに他のコミュニティに住む「青い目の青年」についての言及があり、次作『メッセンジャー』への期待がかき立てられる。(2016.8.13読了)
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by nishinayuu | 2016-10-12 09:40 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

読書と韓国語学習の備忘録です。


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