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『ママ、嘘を見抜く』(ジェイムズ・ヤッフェ著、神納照子訳、東京創元社)

『ママ、嘘を見抜く』(ジェイムズ・ヤッフェ著、神納照子訳、東京創元社)_c0077412_18155441.jpg2冊目のジェイムズ・ヤッフェ。原題はMom Among The Liars。
語り手は公選弁護人アン・スウェンソンの事務所で主任捜査官として働いているデイヴで、ユダヤ人の未亡人であるママはデイヴの家から2、3マイルのところに独りで住んでいる。妻を亡くして一人になったデイヴは、ママが同じ街に住むことになったときに、一緒に住もう、と申し出たのだが即座に断られている。「あんたと父さんのために20年間、身を粉にして家事に精出したわ。そして父さんが死んであんたが家を出てから20年、一人で暮らしてみると、まあその快適なこと。あんたはそのあたしにまた身を粉にして働けって言いたいの?」というのがママの言い分だった。それでデイヴは時々ママのところにご機嫌伺いに行き、食事をご馳走してもらうのだが、そのお返しに捜査中の事件について話すのが習慣になっている。ママがあれこれ聞きたがるので仕方なく……というのがデイヴの建前だが、ママが抜群の推理力の持ち主だからでもある。
今回の事件は、マッサージサロンを経営する韓国系の女性エドナ・プラスキーが絞殺された事件で、死体が発見されたときに現場にいたホームレスの老人スタビンズが犯人と目されている。事件を担当する地方検事のマクブライト、その妻と娘、地方検事補のグラントリー、エドナの母親、エドナの別れた夫、そして弁護人から見ると犯人でないことが明らかなスタビンズまで……だれもかれもがなにかしら嘘をついている。その嘘の一つ一つを、ママが解き明かしていく。
血なまぐさい場面描写もなく、身の毛のよだつような異常な人間も出てこない。お茶目で、一見おっとりしていて、ちょっとくせ者のママが、捜査官の息子に代わって事件を解決する、という設定も面白い。伏線もわかりやすいし、最後のほうになっていきなり新しい事実や新しい人物が現れてなにもかもひっくり返す、というようなこともないので(推理小説の中には時々こういうのがあるのですよね)楽しく読める。(2010.7.31読了)
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by nishinayuu | 2010-11-25 18:16 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

読書と韓国語学習の備忘録です。


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