『木』(幸田文著、新潮文庫)
2010年 04月 18日
15の章からなり、「木」そのものを描写している章もあれば、「木」と出逢ったいきさつ、「木」にまつわる思い出、「木」に対する思い、「木」をよく知る人々のことなどを語っている章もある。そうした形や雰囲気がさまざまに異なる各章を一つに繋いで統一感をもたらしているのが、著者独特の語り口である。露伴のものほどは時代を感じさせないが、明らかに現代のことばとは異なる一昔前のことばに、時には懐かしさを感じたり、時にはとまどったりしながら読むのも楽しい。(2010.2.6記)