『火星の記憶』(レイモンド・F・ジョーンズ著、林清俊訳)
2009年 10月 05日
原作初出が1961年のSF。プロジェクト・グーテンベルクの版を底本にして翻訳され、「青空文庫」に収録されている。メル・ヘイスティングは同じ悪夢をよく見る。彼を追っている捜索隊から逃げている夢である。それに彼は宇宙恐怖症でもある。それなのに妻のアリスは、楽しかった火星旅行にまた行きたいという。「あなたもいっしょに行ったのよ」というが、メルには全く記憶がない。そのアリスが交通事故で死んだとき、検死の結果その身体が人間のものではない、何か異常なものであることが明らかになる。しかし死体の指紋はアリスのものと一致しているし、2年ほど前、妊娠・流産した時に撮ったX線写真にも異常はない。
アリスの遺品を整理していると、火星の光景を背景にアリスが写っている写真がたくさん出てくる。2年ほど前のものだ。しかし、いっしょに行ったとアリスが言っていたメルの写っている写真はない。アリスが行ったということもあり得ないことなのに証拠があるのだ。
事故で死んだのはアリスではなく、どこかで何者かがアリスと入れ替わったのだ、と考えたメルは、それを証明するために火星に行こうと決心する。火星旅行を扱っているコネモーラ宇宙航空会社に申し込みに行ったところ、「お客様は2年前に火星に行っているし休暇旅行は10年に1回に制限しています」と断られてしまう。それでメルは先輩のジェイク・ノートンに頼んで、ジェイクの名前で切符を買ってもらい、火星旅行に出発する。
古典的というか、ありきたりというか、結末が予測できてしまうのが残念ではあるが、それだけに安心して読める。(2009.8.17記)

