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『何があってもおかしくない』(エリザベス・ストラウト、訳=小川高義、早川書房)_c0077412_09214790.jpg








Anything is Possible』(Elizabeth Strout)

エリザベス・ストラウトの6冊目の小説。9篇からなる短篇集の体裁をとっているが、各篇の登場人物が別の篇にも顔を出し、絡み合って話が進む。舞台はイリノイ州の架空の町アムギャッシュ。シカゴまで車で2時間半かかる田舎町である。各篇を順番に見ていくと――






♣標識――主役はトミー・ガプティル。放課後の教室に居残りたがるルーシーにやさしかった用務員のおじさんである。35歳のとき牧場を火事で失って学校の用務員になったのだった。今は子供も独立して妻と二人暮らし。車で近くの町に行き、もうすぐ82歳の誕生日を迎える妻のために花柄のスカーフを買う。本屋を覗くとルーシー・バートンの新刊本があった。帰りにピート・バートンのところに立ち寄る。牧場の火事はピートの父親が火をつけたらしいと初めて知った。トミーは、「あの火事の夜に神が来たと感じた」と言う妻にも隠していた秘密を思わずピートに明かしてしまう。そのあとピートは元の家の道路わきに出しっぱなしになっていた「縫物直し、いたします」という古い看板をハンマーでたたき割った。

♣風車――主役はパティ・ナイスリー。高校で進路指導を担当している。指導室にライラ・レーン(ルーシー・バートンの姪)がやってきて、パティに暴言を浴びせて冷笑しながら出ていく。昔、町でも飛びぬけて貧しかったルーシー兄妹、いとこのエイベルとドティーは、ごみ箱で食べ物をあさっていた。そんなルーシーが大学に進学して作家になった。街にでたとき、パティは本屋でルーシーの新刊本を見かけた。

あらためてライラ・レーンを呼んで、成績優秀なのだから何とか進学させてあげたい、と言うとライラは涙を流す。優しくされると辛くてたまらない、と。

郵便局に行くとチャーリー・マコーリーがいた。今は亡き夫の外に、パティが心惹かれたただ一人の男性である。いい年になってからベトナムに行ったことからPTSDになっているチャーリーと並んで、外の階段に座りこんだ。時間の流れの外にいるようだった。

♣ひび割れ――登場するのはリンダ・コーネルと夫のジェイ、写真フェスティバルの関係者であるイヴォンヌ・タトルとジョイ・ガンターソンなど。

♣親指の衝撃論――主役はチャーリー・マコーリー。ネット広告で知り合ったトレーシーとなのる女と会ってきたが、彼女の目的はお金だけとわかって、妻マリリンの銀行口座から引き出したお金を渡して別れる。

♣ミシシッピ・メアリ――主役は5人の娘が大人になるまで待ってから家を捨て、今78歳になったメアリ。他に登場するのは、69歳の誕生記念旅行で出会って以来ずっとメアリを待っていてくれたパオロ/末娘のアンジェリーナ/ナイスリー・ガールズ(ナイスリー家の3姉妹。一番下がパティ)。

長い間ママが出て行ったことを乗り越えられなかったというアンジェリーナに、メアリが言う。「あんたが生まれた時、ああ、そうだ、あんただよねってわかった。あんたのおかげで幸せだった」。

♣妹――主役はピート・バートン。17年は会っていない妹のルーシーがペーパーバック刊行のツアーでシカゴに来ると知り、PCで妹の講演を見る。ツアーの途中でアムギャッシュにも顔を出すというので、家を大掃除。街に出て散髪もした。白い車でやってきたルーシーとぎこちなく抱き合う。いとこのエイベルのこと、昔バートン家の子どもたちをいじめたキャロル・ダーがサイン会にやってきたことなどを話す。偉くなった妹に会いにヴィッキーもやってくる。妹に感心しているわけではない、と態度で示しながら。昔話をするうちに父や母の凄まじい行動が思い出されてヴィッキーが涙を流すとルーシーが慰める。が、しばらくするとルーシーがパニック症状を起こす。ルーシーがここに帰ってきたのは間違いだった、ここを出てよかったのだ、と兄と姉は悟る。

♣ドティーの宿屋――主役はバートン家の母方のまたいとこであるドティ・ブレイン。舞台はイリノイ州ジェニスバーグにあるB&B。他に登場するのは客としてやってきたドクター・スモールと妻のシェリ―。そして深刻に落ち込んでいて涙を流し、言葉が全くでなくなっているチャーリー・マコーリー。

♣雪で見えない――主役はアプルビー家の人々。閉じた本のようにまるで読めない男である父親のエルジン、母親のシルヴィア、娘のシンディとアニー(前の作品に名前がちらっと出ている)、息子のジェイミー、近所のディグル家の息子二人と末っ子のシャーリーン、そして学校のポッター先生。

アニーは16歳のときにポッター先生の紹介で劇団に入って家を離れた。父のエルジンは認知症になって歯止めが利かなくなり、ずっと秘密にしていたもの(ホモセクシュアル)が漏れ出すしかなくなっていた。兄のジェイミーによると、エルジンがいつもアニーが森に行くのを嫌悪していたのは、父とポッターの二人が森の中でアニーを見かけたことがあったかららしい。

メイン州を舞台にしたこの作品は「ヴァージニア・クォータリー・レヴュー誌」2013年春号に掲載され、2015年にO.ヘンリー賞を受賞しているという。

♣贈りもの――主役はルーシーのまたいとこで、B&Bをやっているドティーの兄であるエイベル・ブレイン。ボスの娘と結婚して貧しい家族、貧しい町と縁を切った。妻のエレイン、娘のゾーイ、孫たちと劇場に「クリスマス・キャロルを見に行く。スクルージの演技も劇全体もバカらしくて眠くなる。ふと去年ルーシー・バートンのサイン会でルーシーにあったときのことを思い出す。サインをしてもらう列に並んでエイベルの番になったとき、ルーシーが「エイベル」と言うと立ち上がって涙を浮かべた。それが彼に幸福感をもたらしたのだった。劇場の電気が消えて観客がざわつく音で目が覚める。家に帰ってみると孫のソフィーが抱いていたぬいぐるみが見当たらない。劇場に取って返したエイベルはスクルージ役をやっていたリンク・マケンジーにつかまって独りよがりの話を聞かされるはめになる。最初は逃げ出したかったのにだんだんいやでなくなって、リンクの話に耳を傾けているうちに視野が暗くなった。救急車に載せられ、ドアが閉まるとリンクの顔が近くにあった。救急車のスピードが上がってエイベルが感じたのは極上の歓喜だった。ようやくものごとが自分の手を離れていく、ほどける、ほぐれる、という幸福感だった。

2021.3.31読了)


# by nishinayuu | 2021-06-14 09:24 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)


옛날 옛날에, 카모신사의 齋院(사이인)에서 봉사하고 있던 무라카미-천황의 황녀는 와카를 지었다. 어느 후지와라 노부노리라고하는 남자가 황녀를 모시는 여자 관리를 남몰래 만나려고 齋院 안에 있는 여자 관리의 방을 방문했어. 그것을 목격한 齋院 문지기들이 누구냐?” 물었는데, 이미 안에 둘어가 있던 노부노리는 대답하지 않았다. 이에 문지기들이 齋院 문을 닫았기 때문에, 노부노리는 밖에 나갈 없게 됐단다.

일이 되어가는 형편에 당황한 여자 관리가 황녀에게 이렇게 되고 있사옵니다라고 호소했다. 노부노리가 와카를 한다는 사실을 들은 황녀는 문지기를 시켜 문을 열어 주었어. 이에 노부노리는 문밖으로 나가면서 다음과 같이 노래했다.

齋院 코노마로전인가 이름을 댔다며 나무람을 받았네

코노마로전 옛날에 천지천황이 세자 시절에 살던 별궁인데, 세자는 이곳에 다니는 모든 사람에게 이름을 대는 것을 요구했다고 전해진다.

「藤原惟規、和歌を読みて免されし語」 『今昔物語』巻二十四第五十七_c0077412_11080909.jpg今は昔、賀茂神社の齋院で神に仕えていた村上天皇の皇女は優れた歌人だった。ある晩、藤原惟規という人が、齋院の女官に密かに会おうとその女官の局を訪れた。これを見た齋院の侍たちが「何者だ」と聞いたのだけれど、惟規はもう局に入っていたので答えなかったんだ。すると侍たちが齋院の門を閉めてしまったので、惟規は外に出られなくなったんだ。

事の成り行きに当惑した女官が皇女に「こんなことになっています」と訴えた。惟規が和歌を上手に詠むと聞いた皇女は侍に命じて門を開けてやった。それで惟規は門を出るときに次のような和歌を詠んだのだよ。

神垣は木の丸殿にあらねどもなのりをせねば人咎めけり

(神聖な齋院は木の丸殿でもないのに、名前を言わなかったら咎められてしまったよ)

「木の丸殿」はかつて天智天皇の皇太子時代に筑紫にあった行宮。ここにいたとき皇太子は百官に名前を告げることを要求したという。


# by nishinayuu | 2021-06-09 11:15 | 再話 | Trackback | Comments(1)

『飛ぶ教室』(ケストナー、訳=上田敏郎、国土社)_c0077412_17415334.jpg


Das Fliegende Klassenzimmer』(Erich Kästner、1933)

高等部の生徒たちと彼らを見守る大人たちを描いた本作品は、ケストナーが34歳のときに発表されたもの。子どもたちへのメッセージが込められた作品であるが説教臭さはなく、読後感は爽やかである。

前書きに、美しい夏の風景の中で『クリスマス物語』を書こうとしている作家が登場する。その『クリスマス物語』が第1章から始まって第12章まで続き、最後にまた作家が登場して、ベルリンに戻ってからの偶然のすてきな出会いを語って全体を締めくくる。

さて、『クリスマス物語』の舞台はキルヒベルクという町にあるヨーハン・ジギスムント高等学校。この学校の寄宿生で高等部の1年生、日本でいえば中学三年の少年たちがクリスマスに上演しようとしている演劇のタイトルが『飛ぶ教室』である。登場人物は以下の通り。

♣寄宿生たち――*ヨーナタン・トロッツ(ジョニー。劇『飛ぶ教室』のシナリオ担当。4歳のときにニューヨークからハンブルクに送られた。迎えに来ると父親の言っていた祖父母はすでに死んでいた。船で世話をしてくれた船長がそのまま身元引受人に)/*マルチン・ターラー(マッツ。半額給費生。勉強はクラスで一番。舞台の背景画担当)/*マチアス・ゼルプマン(マッツ。ボクサー志望。しょっちゅう腹ペコ)/*セバスチアン・フランク(ゼップ。とても頭のいい生徒)/*ウリー・ジンメルン(劇で妹役をする少年)

♣通学生たち――*フリードリン(実家学校の生徒に襲われて怪我をする)/*ルディー・クロイツカム(実家学校の生徒たちに襲われ、ドイツ語の書き取り帳とともにさらわれる。父親はジギスムント校のドイツ語教師)

♣実家学校生――*エーガーラント(フリードマンやルディーを襲った連中のリーダー)/*ハインリヒ・バベルカ(両校の争いに決着をつけるためにマチアスと1対1で殴り合いをする生徒)

♣先生たち――*禁煙先生(35歳くらいの世捨て人。菜園にある鉄道車両の禁煙室で暮らしている。車両はドイツ国有鉄道から180マルクで買ったもの。毎晩、町はずれの居酒屋でピアノを弾き、1マルク50ペニヒと晩御飯をもらっている。)/*ヨーハン・ベック先生(寄宿舎の舎監。あだ名は正義先生。学生時代に舎監のせいでつらい経験をしたことから、自分はその同じ学校で理解のある舎監になろうと決心したという)

ベック先生が舎監になったいきさつは第5章で明かされるが、そのときに力になってくれた親友がいたという話を聞いたヨーナタンとマルチンは、それが禁煙先生であることを見抜いたのだった。禁煙先生とベック先生にまつわるエピソードは本作品の中でも特に印象的なものの一つである。

2021.3.25読了)


# by nishinayuu | 2021-06-04 17:43 | 読書ノート | Trackback | Comments(2)

『音もなく少女は』(ボストン・テラン、訳=田口俊樹、文春文庫)_c0077412_14184992.jpg

Woman』(Boston Teran,2004)

冒頭にナタリーという女性が書いた手紙が出てくる。「わたしは殺人の隠蔽工作の手助けをしました。(…)残念ながら、しかし、わたしはこのドラマでは、三人目の犠牲者があらわれたあとからすべてを知った端役に過ぎません。(…)運命が試練を課したのがこのわたしだったら、果たしてわたしには銃を撃つ勇気があったかどうか。」

続いて「五十四歳のブロンクスの女性店主フランコニア・カール(54)が四八分署に出頭して麻薬の売人ボビー・ロペス殺害を認めた」という新聞記事(1975年8月26日付)と、17歳のイヴが恋人のチャーリー(21歳)といっしょにブロンクスの夜の魂のような空を見上げている場面が出てくる。

手紙は物語の最後のエピソードを、新聞記事は第3部の121を、若い二人の場面は第2部の74を予告するものとなっている。こうして殺人事件とそれに関わる女性たちの物語が始まる。

登場するのは――*イヴ(耳の不自由な少女)/*クラリッサ(イヴの母親。暴力的な夫に殺害される)/*ロメイン(イブの父親。麻薬の売人)/*フラン(キャンディストアの主。ナチの暴力を経験した女性)/*チャーリー(イヴの恋人。母親はジャマイカ人。父親は耳が聞こえなかった)/*ミミ(チャーリーの義妹で耳が聞こえない)/*ドーア夫妻(チャーリーとミミの里親)/*ナタリー(記者志望の大学生)など。

音のない世界でもがきながら生きる少女を主人公としたこの作品の邦題『音もなく少女は』は原題『Woman』より情感があってすばらしい。ただし、この作品には耳の聞こえないことによって理不尽な暴力にさらされる人々や、国家や社会による暴力、家庭内の暴力に苦しむ人々(特に女性たち)が数多く登場する。その人々が静かに、けれども大音量の激しい戦いを繰り広げるハードボイルド的作品である。

作者は「アメリカ合衆国のイタリア系アメリカ人作家。ニューヨーク市サウス・ブロンクス生まれ。覆面作家であり、性別も不詳」とあちこちで紹介されている。『その犬の歩むところ』を読んだときは女性作家だろうと思い、『ひとり旅立つ少年よ』を読んだときは男性作家かもしれないと思ったが、この作品を読んだら、女性作家に違いない、と思えてきた〈作者の性別は別にどうでもいいことですが。〉もう一つ、どうでもいいことを付け加えると、「イヴは(チャーリーに)ナタリー・ウッドを思わせた」という文が第2部の66にある。

これでイヴにもチャーリーにも断然親近感が湧いた。

(2021.3.13読了)


# by nishinayuu | 2021-05-30 14:19 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『炎の道』(テレンス・ラティガン、訳=能見武功、青空文庫)_c0077412_08532405.jpg

Flare Path』(Terence Rattigan)

Flare pathは離着陸する飛行機を誘導するための照明が点された滑走路のことであるが、「燃え上がる恋の道」のことでもある。1942年8月13日、ロンドンのアポロ劇場で初演されたこの作品の舞台は第二次大戦中のイギリス空軍基地。話は始めから終わりまでファルコン・ホテルの広間で展開する。3幕構成で、第1幕は土曜の18:00、第2幕第1場は21:00、第2場は翌朝の5:30,第3幕は同じ日の正午に設定されている。

はじめに登場するのはピーター・カイル。35歳くらいの田舎男のいでたちだが、往年の映画スターである。妻子のある身で共演者のパトリシアと恋に落ちたが、パトリシアはカイルと結婚できないことに耐えられずに他の男と結婚して去っていった。若さにも名声にも翳りが見えはじめたカイルは、パトリシアとやりなおそう、相手の男と正々堂々と決着をつけようとやってきたのだった。パトリシアはカイルの気持ちにすぐに応えるわけにはいかない。1,2歳年下の夫はパトリシアを愛し、頼りにし、信じ切っているからだ。ホテルに出入りする飛行機乗り、彼らの妻たち、ホテルの従業員たちが絡み合い、爆撃機の出動と事故と感動の帰還などのエピソードが展開していく、涙あり笑いありのドラマである。登場人物は以下の通り。

*ドリス(スクリジェヴィンスキー伯爵夫人。33~34歳。こぶとり。戦争が終わったら夫の伯爵とポーランドへ行くことになっている)。

*ジョニー(スクリジェヴィンスキー伯爵。43~44歳。ウエリントン爆撃機の第2パイロット。いつも微笑を浮かべている背が高く痩せているポーランド人。英語がうまく話せないため言い間違いや発音の間違いが多く、みんなを笑いに包む「お笑い担当」)。

*ダスティー(ミラー曹長、35歳くらい。背が低くて色黒。ウエリントン爆撃機の砲手)。

*モーディ(ダスティーの妻。1泊だけの休暇をもらって夫に会いに来たが、バスの乗り換えを間違って到着が大幅に遅れ、帰りは帰りで爆撃機の事故騒ぎのせいでバスに乗り遅れる。周囲をやきもきさせる「ドジ役担当」)。

*テディー(グラーム空軍大尉、24歳、パトリシアの夫。ウエリントン爆撃機の機長。明るく元気な「盛り上げ担当」)。

*スワン遜中隊長(テディーはふざけてグローリアと呼ぶ。55歳くらい。空軍基地作戦本部の副官)。

*ミスィズ・オウクス(ホテルの仕事を一手に引き受けている背の高い骨ばった女性)。

*パーシー(ホテルのラウンジ担当ウエイター。15歳くらい。「テディに対するとき驚くほど尊敬の念あり」)。

2021.2.16読了)


# by nishinayuu | 2021-05-25 08:54 | 映画・ドラマ | Trackback | Comments(0)

読書と韓国語学習の備忘録です。


by nishinayuu