タグ:洋書 ( 100 ) タグの人気記事

『Where or When』(Anita Shreve, Harvest Book, 1993)

c0077412_108176.jpg
『いつかどこかで』(アニタ・シュリーヴ、ハーヴェストブック)
45歳のチャールズはある日、ふと手にした新聞の中に新刊を上梓したという女流詩人の写真を見つける。写真の女性は彼が14歳の時にサマーキャンプで出会った初恋の相手ショーンだった。仕事にも家庭生活にも行き詰まっていたチャールズは、それらの重圧から逃れるようにショーンに近づいていく。愛し合っていながら幼さのために手放してしまったあの美しい愛をとりもどしたい、という思いに駆られて。どうみても彼の言動はストーカーのそれだが、驚くべきことに最初は冷静に対処しているかに見えたショーンも、いつしか彼の思いに応えるようになり、二人は「行方も知れぬ恋の道」に突き進んでいく。
事業がつぶれるとわかっていながら有効な手段を講じることもせず、子どもたちを愛していると言いながらその子どもたちの待っている家庭を顧みることもせず、31年という時を隔てて再会した相手の現在までの生き方や現在の状況に対する配慮もなく恋に突き進む――こんな主人公が身を滅ぼすのは自業自得であって、同情する気にもなれない。つまり、全く共感を覚えることのできない主人公であり、こんな主人公が好む音楽談義にも耳を傾ける気がしない(タイトルもそうだが、この小説にはやたらにポップスの名曲や歌手、クラシックの曲や演奏家の名が出てくる)。
主人公や相手の女性には共感できない一方で、考えも趣味も合わない女、とチャールズの目に映っている妻のハリエットを、あるいはショーンの夫で農場主兼大学講師のステファンを語り手とした小説だったら読んでみたい、とも思う。ハリエットには彼女と子どもたちが事件のあとどういう風に生きていったかを語ってもらいたいし、ステファンにはチャールズが現れる前までのショーンとの人生、チャールズが現れたことによって壊されていった人生について語ってもらいたいからだ。(2014.10.1読了)
[PR]
by nishinayuu | 2015-01-30 10:09 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

『Ozma of Oz』(L.Frank Baum, illustration: John R. Neill, Del Rey Books)

c0077412_10292016.jpg
『オズマのオズ』(ライマン・フランク・ボーム、絵:ジョン・ニール)
著者のボームはオズの世界を描いた作品を全部で14作出しているが、これはその第3巻目で、1907年の出版。


ヘンリーおじさんと船旅に出たドロシーは、嵐に遭って船から落ちた鳥籠を追って海へ。船からどんどん遠く離れてしまったドロシーは、めんどりのビリーナとともに海上を漂流しているうちにオズの近くにあるエヴの国にたどり着く。この国は国王の死後、地下世界に君臨する妖精ノームよって王家の人々が地下世界に閉じ込められてしまったため、完全な無法地帯となっていた。王城に住むラングウィディア姫は付け替え用の頭部を30も所有していて、その日の気分によって頭部を付け替えるのだが、姫の気分も性格も新しくつけた頭部に合わせて変化する。そして気まぐれで欲張りなラングウィディア姫は、なんとドロシーの頭をNo.26の頭部と交換しろ、と言い出し、それを拒否したドロシーを塔屋に閉じ込めてしまう。そこへオズのオズマの一行が緑のカーペットを繰り広げながら登場する。このカーペットは行く手に道を作り、通った後はくるくると巻きあがって後になにも残さない魔法のカーペットである。オズマと一行によって塔から救出されたドロシーは、今度は自らがエヴの王妃と5人の王子たち・5人の王女たちを救い出すために、仲間とともに地下世界へと下りていく。彼らはノームの王が魔法を掛けて、色も形も様々な置物にされているというのだが、さてドロシーは彼らを無事に救い出すことができるだろうか。

ドロシーを取り巻く主要キャラクターは以下の通り。
ビリーナ:黄色いめんどり。人間の言葉を話す。
チクタク:考える、話す、動くという3つの機能を持つ優秀なロボット。スミス&ティンカーズ社製で、1000年間の完全保証付き。
ラングウィディア姫:亡くなったエヴ王の姪。エヴ城にメイドのナンダと二人で暮らしている。国を治める力はない。
オズマ姫:オズの世界の支配者。ドロシーと同じ年頃、同じ背格好。
オズマ姫に付き従う一行:案山子、馬の形の木挽き台、ブリキの木こり、臆病ライオン、腹ぺこタイガー

威厳のある大人の登場人物がいないせいか、『ナルニア』や『指輪物語』などに比べると児童書の色合いが強ようにも思えるが、大人でも充分楽しめる。「Oz—where the young stay young and the old grow young forever—these books are for readers of all ages」とRay Bradburyも言っている。なお、本書にはイラストがふんだんに挿入されており、動物たちは実に写実的に描かれている。これに対して主人公のドロシーは、服装がオールドファッションなのはやむを得ないとして、身体のバランスがちょっとおかしいような……。(そういえばアリスのイラストもバランスがおかしかった。)(2014.11.4読了)
[PR]
by nishinayuu | 2015-01-26 10:30 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

『The Winter’s Tale』(Shakespeare, Greenwich House)


c0077412_10414722.jpg
『冬物語』(シェイクスピア)
これは1610~11年頃に作られた、シェイクスピアの後期作品の一つである。「A Midsummer Night’s Dream」と対をなすようなタイトルを持つこの作品は、前半は嫉妬による悲劇の物語、すなわち「冬の物語」であり、後半はすべての不幸が解消されるハッピーエンディングの物語、すなわち「春の物語」となっている。そのため初期には喜劇に分類されていたが、現在は「シンベリン」「テンペスト」などとともにロマンス劇という項目に分類されている。
物語の大筋の覚え書きを兼ねて、主な登場人物を以下に記しておく。
レオンティーズ――シシリア王。友人であるボヘミア王と自分の妻の関係を疑い、嫉妬に狂う。
ハーマイオニー――シシリアの王妃。王によって幽閉されたあとで女の子を出産。
ポリクシニーズ――ボヘミア王。シシリア王の友人として王宮に滞在していたが、シシリア王に王妃と密通したと疑われ、ボヘミアに逃げ帰る。
カミーロ――シシリアの貴族。王からボヘミア王の暗殺を命じられるが、それをボヘミア王に打ち明けて一緒にボヘミアに逃れる。
アンティゴナス――シシリアの貴族。王妃の産んだ子を殺せという王命を受けて、その子をボヘミアの森に捨てる。そのとき熊に襲われて食われてしまう。
ポリーナ――アンティゴナスの妻で、王妃付きの侍女。横暴な王に逆らって王妃を守ろうとする。
コーラス――劇の前半と後半の間にある16年という時の流れを30数行の詩で語ってしまう、というすご技をみせる。
フロリゼル――ボヘミアの王子。羊飼いの娘(実はシシリアの王女)と恋仲になる。
パーディータ――羊飼いの娘でフロリゼルの恋人。その名Perditaはラテン語のperditus(lost)から来た語で、「失われた女の子」を意味する。

この劇ではシシリアとボヘミアが海路で繋がっていたり、羊飼いに育てられたパーディータが容姿も教養も申し分のない女性になっていたりするが、一種のおとぎ話なので、詮索しても意味がない。アンティゴナスが熊に食われるシーンを除けば、グロテスクなところも恐ろしいところもないので楽しめる。(2014.10.29読了)
[PR]
by nishinayuu | 2015-01-18 10:42 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

私の10冊(2014年)


c0077412_10151749.jpg
☆この1年に読んだ本の中から特に気に入った本を選んで、「私の10冊」としてまとめてみました。また、「私の10冊」の選から漏れた本を「お勧めの10冊」として挙げてみました。
☆画像はThe Amateur Marriageです。


私の10冊
友情(フレッド・ウルマン、訳:清水徹・美智子、集英社)
ナチと理髪師(エドガー・ヒルゼンラート、訳:森田明、文芸社)
四人の兵士(ユベール・マンガレリ、訳:田久保麻理、白水社)
카스테라(박민규, 문학동네)
二度生きたランベルト(ジャンニ・ロダーリ、訳:白崎容子、平凡社)
The Amateur Marriage(Anne Tyler, Ballantine Books)
달에게 들려주고 싶은 이야기(신경숙)
思いでのマーニー(ジョーン・ロビンソン、訳:松野正子、岩波少年文庫)
火曜日の手紙(エレーヌ・グレミヨン、訳:池畑奈央子、早川書房)
Hamlet (Shakespeare)

お勧めの10冊
立原正秋追悼(編:白川正芳、創林社)
死の舞踏(ヘレン・マクロイ、訳:板垣節子、論創社)
鏡の中の言葉(ハンス・ベンマン、訳:平井吉夫、河出書房新社)
しずかに流れる緑の川(ユベール・マンガレリ、訳:田久保麻理、白水社)
よみがえる昭和天皇(辺見じゅん・保阪正康、文藝春秋)
第五の山(パオロ・コエーリョ、訳:山川紘矢・山川亜希子、角川文庫)
猫は山をも動かす(リリアン・ブラウン、訳:羽田詩津子、早川文庫)
The Blue Bird(Maurice Maeterlinck)
画家の妻たち(澤地久枝、文藝春秋社)
いにしえの光(ジョン・バンヴィル、訳:村松潔、新潮クレスト文庫)
[PR]
by nishinayuu | 2015-01-14 10:16 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『Coriolanus』(Shakespeare, Greenwich House)


c0077412_10141437.png
『コリオレイナス』(シェイクスピア)
この作品はシェイクスピアの後期に書かれた5幕からなる悲劇で、テキストの初出は1623年。典拠はプルタルコスの『コリオラヌス』で、古代ローマの貴族ガイウス・マルキウス・コリオラヌスが、本作ではケイアス・マーシアス・コリオレイナスという英語読みの名で登場する。

コリオレイナスはローマと敵対するヴォルサイ軍との戦いに勝利を収めた英雄として、また名門貴族として、ローマの執政官選挙に出馬する。同じく貴族で彼の友人であるメニーニアスは、彼の傲岸不遜な性格を危ぶんで、執政官に選ばれるためにはローマ市民に迎合してみせなくてはならない、と説く。しかしコリオレイナスは貴族としての誇りから市民への反感と侮蔑を抑えることがでず、結局ローマ市民全体を敵に回してしまう。ローマ市民との対立は、ローマという都市国家との対立を意味した。ローマから追放されたコリオレイナスは、なんと宿敵ヴォルサイの将軍タラス・オーフィディアスのもとに走る。そして、ヴォルサイ軍の武力を借りてローマに復讐することを企てるのだが、ローマから遣わされた母親、妻、息子の訴えによってその企ては挫折する。

すなわちこの作品は護民官たちが代表するローマの民主制と、コリオレイナスが代表する貴族制の対立を描いたものであるが、民主制の代表たちが健全で意気軒昂なのに比べると、主人公コリオレイナスのアンバランスな人格や友人メニーニアスの頼りなさが目立つ。メニーニアスは貴族としては市民への理解もあり、穏健でとても「いい人」なのだが、次のようなやりとりでは完全に護民官に負けている。

護民官ブルータス: Caius Marcius was/A worthy officer i’the war; but insolent, /O’ercome with pride, ambitious past all thinking, /Self-loving, ……
メニーニアス: I think not so.

なおこの作品は2011年、舞台を現代に移して『英雄の証明』(監督・主演:レイフ・ファインズ)というタイトルで映画化されているという。(2014.9.14読了)
[PR]
by nishinayuu | 2014-12-17 10:14 | 読書ノート | Trackback | Comments(2)

『The Amateur Marriage』(Anne Tyler, Ballantine Books, 2004))

c0077412_10252251.jpgタイトルは素直に訳せば『アマチュアの結婚』。『技量不足の結婚』といったところか。作者が「最上の作品で、とても誇りに思っている」と言うだけあって、読みでのある傑作である。
物語は1941年12月のSt. Cassian Streetに始まり、それから60年後まで、ある家庭に起こった出来事が年代記風に綴られていく。

St. Cassian Streetはメリーランド州東バルチモアにあり、住民の大多数はポーランド系の人々である。1941年の12月、街は戦意高揚のためのパレードに沸き立っていた。Szapp兄弟が掲げたプラカードにはWatch out, Japs! Here come the Szappsという文字が躍っていた(みごとに脚韻を踏んでいますねえ)。若者達は先を争って軍に志願していく。彼らとペアになった娘達は、戦地に赴く若者を見送る娘、という役割に陶酔する。そんな雰囲気に押されてペアになったのがマイケルとポーリンだった。マイケルは黒髪、短髪、やせ形、ひげが濃い若者で、食糧雑貨店を営むミセス・アントンの一人息子。ポーリンは深い金色の髪、目は青紫、声は低いハスキーヴォイスで、すらりとしていて赤いコートがよく似合う娘だった。このとき二人は20歳。バスが志願兵達を迎えに来て、マイケルとポーリンはドラマチックな別れを演じる。そして、若者達の戦死の知らせが相次ぐ。Szapp兄弟も立て続けに死んだ。けれどもマイケルは死なずに帰ってくる。ただし脚に大きな障害を負って。戦争が終わり、恋の季節がやって来て、結婚するものも増える。だからミセス・アントンが店の客達にマイケルとポーリンが結婚すると言っても誰も驚かなかった。二人はパーフェクトなカップルだと人々は思ったのだった。
しかし二人の結婚は嵐の連続だった。マイケルは非社交的で、店の仕事が最優先でどこにも出かけようとしない。興奮したりはしゃいだりすることは全くなく、口べたで寡黙。ポーリンはマイケルとは逆に、楽しく元気に暮らしたいのにそれがうまくいかないと怒り狂う、という感情の起伏が激しい性格。これほど相反する性格の上、二人の結婚観も全く違っていた。マイケルは「結婚は別々の人間が並んで歩く道」と考えているのに対し、ポーリンは「結婚というのは魂が混じり合うことで、なにもかも一致すべきだ」と考えている。それでポーリンはことごとくマイケルに不満をぶつけ、マイケルはなぜ彼女がそんなに怒り狂うのか理解できない。三人の子どもに恵まれたが、幼い頃から反抗的だった長女のリンディーが17歳で家を出て行ってしまう。このリンディーの失踪はポーリンを生涯苦しめることになるのだが、ポーリンの苦難はそれだけでは終わらなかった。

ポーリンは一緒に暮らすには大変な人間だ、と作者自身が言っている。ということはつまり、彼らの結婚を「アマチュアの結婚」にした責任の大半はポーリンにあるということだろうか。それで作者はポーリンのほうにより過酷な運命を与えたのだろうか。それでも物語の最後の場面は、作者の愛情がポーリンとマイケルの二人に同じように注がれていることを感じさせる。(2014.8.23読了)
[PR]
by nishinayuu | 2014-12-01 10:27 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『Le Petit Prince』(Antoine de Saint Exupéry, A Harvesut/HBJ Book)

c0077412_10284310.jpgたまたま手許にあったので、『星の王子様』の原書を読んでみた。フランス語の読みはすっかり忘れているので、声に出して読むのはむりだが、字面を追うだけならなんとかなるだろう、と思ったのだが、甘かった。文法、語彙ともほとんど頭に残っていないことを思い知らされ、苦戦した。内容がわかっているおかげでなんとか最後までたどり着くことはできたが、「読んだ」とはとても言えない。
それでも「読んだ」というか「目を通した」おかげで気づいたことがある。この本は数字がアルファベットで示されているので、手許の英語版にあるようなミスがないのだ。問題の箇所は16章の冒頭部分。英語版は次のようになっている。
The earth is not just an ordinary planet! One can count, there, ⅠⅠⅠkings
オレンジ色の部分はローマ数字である。文脈からわかるといえばわかるのだが、ローマ数字に引っかかって立ち止まってしまうと、何が何だかわからなくなる。それがフランス語版では次のようになっているので、戸惑うことなく読み進めることができる。
La Terre n’est pas une planète quelconque! On y compte cent onze rois
これに続く部分にも数字が次々に出てくるが、英語版ではアラビア数字、フランス語版はアルファベット表記になっている。つまり、英語版が上記の部分だけローマ数字になっているのは単純な表記ミスなのではあるが、そのおかげで、常日頃ややこしくてめんどうだと思っていた数字のアルファベット表記が、正確さという点では優れた表記だということに遅ればせながら気がついたのだった。 (2014.5.27読了)
[PR]
by nishinayuu | 2014-09-08 10:32 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

『The Little Prince』(Antoine de Saint-Exupéry著、英光社)

c0077412_14294719.jpg
『The Little Prince』(Antoine de Saint-Exupéry著、英光社)(Translated into English by Katherine Woods,1966)

本書は1944年7月に地中海上空で消息を絶ったサン=テグジュペリの遺作『Le Petit Prince』の英訳版である。手許にあるのは福田陸太郎による注釈付きの本で、20代の頃に購入して以来、何度か読み返している。毎回、いいなあと思うところも同じなら、あまりおもしろくなくて飛ばし読みしてしまうところも同じで、それにしても絵はいまいちだなあ、と思うのも同じである。作者もそういう反応を見越してか、星の王子様に「Your baobabs—they look a little like cabbages」と言わせている。それはともかく、ほっとしたとき、あるいはほっとしたいときにふと繙いてみたくなる作品である。
いちばん好きなのは[6](一日に何度も夕日を眺める話)。その次は[19](高い山に登ってこだまを聞く話)、それから「20」(自分のバラが何の変哲もないただのバラだとわかる話)と「21」(狐のおかげで、自分のバラはやはり特別な存在だと気づく話)。
最後に、本書の中の名言を並べてみる(あるサイトにサン=テグジュペリの名言集というのがあったのでそれを真似て)。
One loves the sunset, when one is so sad…
It is the time you have wasted for your rose that makes your rose so important.
What makes the desert beautiful is that somewhere it hides a well.
(2014.3.28読了)
[PR]
by nishinayuu | 2014-06-28 14:30 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

『Not a Penny More, Not a Penny Less』(Jeffrey Archer著、 St.Martin’s Paperbacks, 1976)


c0077412_2111509.jpgこれは詐欺小説である。昨今世間を騒がせている「〇〇詐欺」が弱い人間をターゲットにしているのに対して、この作品で詐欺に遭った連中は現役ばりばりの、己の知能や良識を自負している男たちなので、悲惨さややりきれなさはない。というよりこの作品は、大金をだまし取られた被害者たちがそのお金を取り戻すために、今度は逆に詐欺師に詐欺を仕掛けるという痛快なエンターテイメント小説なのである。登場人物は以下の通り。
ハーベイ・メトカーフ:ポーランド出身のアメリカ人。貧しい移民の身から、詐欺によって、つまり頭脳ひとつで大富豪にのし上がった。
スティーブン・ブラッドレー:アメリカ人。オクスフォード大の数学教授。対メトカーフのために結成された4人組のリーダー。対メトカーフ作戦が一つ終わるたびに、取り戻した金額と必要経費を計算して記録。
ジェームズ・ブリグスリー:イギリス人貴族。企画力で他のメンバーに後れをとるが、演劇経験を生かして変装や演技指導を担当、貴族という身分による貢献も大。
ジャン・ピエール・フランソワ:フランス人の画廊経営者。絵画の贋作づくりの名人。
ロビン・オークリー・ニコラス:イギリス人。ハーレー・ストリートで開業している医師。
アン・サマード:アメリカ人のフォトジャーナリスト。元モデルで人目を惹く美人。

登場人物たちは、それぞれの出身国や身分の代表であるかのようにわかりやすく描かれている。数学者は理論的でめっぽう数字に強く、貴族は能がなさそうなのに出るところに出れば一目置かれ、フランス人は芸術家風でちょっといいかげん、医者はいかにもセレブ、といった具合。詐欺師にポーランド出身の男を持ってきたのがちょっと気になるが、各国の移民の中から頭の良さで抜てきされた、とも考えられるので、深くは追求しないことにしよう。大富豪になってからはそれなりの品位を備えた人物として描かれていることでもあるし。さて、そんな中でアンという女性は、ブリグスリーが一目惚れした相手、という設定だが、はじめのうちはストーリー展開上特に必要はないけれど彩りのために添えられている、という感じに描かれている。ところが実は、作者は意図的にこの人物の影を薄くしていたのだということが、後の方でわかる。(推理小説の先を読むのは割合得意なのに、まんまとだまされました。)(2014.3.2読了)
[PR]
by nishinayuu | 2014-05-31 21:12 | 読書ノート | Trackback | Comments(3)

『This Charming Man』(Marian Keyes著、Penguin)


c0077412_2035437.jpg



これは一見チャーミングで実はとんでもない男に惑わされた女たちの物語である。

主な登場人物は以下の通り。
Paddy de Courcy:またの名はQuicksilver(移り気の)de Courcy。アイルランドの2大政党の一つNew Irelandの副リーダー。気に入らないとすぐに殴る暴力男である。
Grace Gildee:有能な雑誌記者。
Lola:セレブを顧客とするスタイリスト。
Marnie:Graceの妹で、二人の娘を持つ母親。アル中。
Dee:New Irelandの女性党員。

はじめはばらばらに登場する上記の女性たちが、最後に一丸となってPaddyの政治生命を絶つ、という復讐劇であるが、そこに至るまでの話の長いこと。家族や友人、職場の仲間や顧客など登場人物がやたらに多く、本筋とは関係のないエピソードもうんざりするほど盛り込まれている。特にMarnieのアルコール浸りの日々のの描写と、Lolaの言動の分単位、秒単位の描写は冗長でいらいらさせられる。それでもアイルランドの政治状況に触れているところや、女装趣味の男たちの涙ぐましい奮闘ぶりなど、興味深いエピソードも盛りだくさんで、おもしろいと言えなくもない。情けない状態だった女性たちがついに立ち上がり、男を追い詰めていくところはちょっと感動的、と言えなくもない。(2014.1.18読了)
[PR]
by nishinayuu | 2014-04-09 20:37 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)