「2016夏休みの課題作文」

韓国語講座で、韓国の新しい小説「보퉁이」に出てくる表現を「一字一句変えずに使って」短文を作る、という宿題がでました。その表現が使われる状況を作り出す必要があるのですが、1文ずつ状況を説明するのは煩雑なので、全体を一つのストーリーにしてそこに課題の表現を嵌め込んでみました。ストーリー自体は下らないものになってしまいましたが、課題の表現(オレンジ色の部分)の嵌め込みはまあうまくいったのではないかと思います。

1길거리에서 우연히 이전의 여자친구를 만났다. 아무렇지도 않은 말을 주고 받고 하면서 잠시 같이 걸었다. 그런데 나로서는 한 가지 마음에 걸린 일이 있어서, 지하철역 앞에서 헤어질 즈음끝내 한 마디 던져버렸다. 정말 미안하다.

2그녀는 미소를 지으면서 대답했다. 당신이 그녀와 사귀고 있다는 소식을 들었을 때 받은 상처는 이제 다 가시고 나니 걱정하지 않아도 된다고.

3 여자친구와 함께 가려고 음악회의 티켓을 두 장 샀다. 학수고대하던 그 날에 그녀는 급한
일이 생겨서 갈 수 없게 됐다고 했다. 내가 혼자서는 재미 없어서 나도 안 가겠다고 말했더니, 그녀는 자신을 미안하게 만들지 말라며, 자신의 친구를 보내왔다. 그 때 같이 음악회에 간 여자와 나는 지금 결혼을 전제로 하여 교제하고 있다.

4여자친구를 놔두고 다른 여자와 사귀기 시작한 나를 주위의 사람들은 설레발을 치며 비난했는데, 정작 그 여자친구만은 나를 나무라지 않았다.

5그래서 내가 이실직고 할 수 밖에 없었다. 그녀가 소개해 준 여자는 내가 꿈꾸던 이상의 여자였다고. 나의 말을 들자 그녀는 아무 말도 없이 떠났다.

6 사죄의 말을 되풀이하는 나를 어떻게 해야 할지 난처했는지, 그녀가 말했다. 실은 내가 그여자를 마음에 들어할줄 알아서 일부러 그 여자를 보냈다고. 그리고 그때 그녀자신이 이상적인 남자를 만났기 때문에 어떻게든 나와 헤어질 작정이었다고. 순진한 나의 사죄가 그녀가 마음속에 묵혀 둔 비밀을 끌어내고 말았다는 것이다.
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# by nishinayuu | 2016-11-13 21:29 | 覚え書き | Trackback | Comments(0)

『いちばんここに似合う人』(ミランダ・ジュライ、訳=岸本佐知子、新潮クレストブックス)


c0077412_9295541.jpg『No One Belongs Here More than You』(Miranda July, 2007)
著者は1974年にともに作家である両親のもとに生まれた。パフォーマンス・アーティストとして活躍する一方、映画制作でも注目を浴び、さらに2001年頃から小説を発表し始めたという多才なアーティストである。本書は著者の初めての小説集で、フランク・オコナー国際短編賞を受賞し、多くの作家・批評家から絶賛されたという(本書の著者紹介より抜粋)。この新潮社版にもサンフランシスコ・クロニクル紙、ジンク誌、角田光代らの評が紹介されているが、それらの中でいちばんぴったりきたシアトル・タイムズ紙の評を紹介しておく。
ミランダ・ジュライは、奇妙で抗しがたい、新しい声を持った作家だ。彼女の描く世界はリアルだがシュールで、絶望的に悲しく、それでいて「秘密の悦び」に満ちている。

収録されている全部で16の作品を、収録順ではなく「印象に残った順」に並べてみた。
「その人」――みんなは公園のピクニック・テーブルのところで待っている。苦手だった科目の教師たち、最低野郎たち、今まで恋愛したすべての人たち、去って行った人たちもそこにいて、その人に拍手している。その人は郵便物が来ているのを期待して、すぐ戻るから、といってピクニックを抜け出す。手紙は来ていない。留守電にもメッセージはない。もうピクニックには戻れそうもない。みんなから愛されるたった一度のチャンスをふいにしたことを悲しんでベッドに横たわる。胸にのしかかる悲哀の重みが、どこか心地よい。目が閉じていき、その人は眠りにつく。
「2003年のメイク・ラブ」――15歳のとき、夜中に部屋に入ってきた黒い影とわたしは愛し合った。大学生になってリアルな彼氏が欲しくなり、黒い影に別れを告げた。影は「いつか人間の姿になって戻ってくる。そのときの名前はスティーヴだからね」と言って泣く泣く離れていった。特別支援学校の補助教員になった私の前に背の高い少年が現れたとき、彼の中の黒いものが一瞬私を包み込んで、久しぶりだねベイビー、とささやきかけた。少年の名はスティーヴだった。
「共同パティオ」――デザイナーで「新男子」ヴィンセントが発作を起こして意識を失ったとき、わたしは彼に「あなたは悪くない」とささやいた。それは、私がずっと誰かに言ってあげたかった、そして誰かに言って欲しかった、たった一つの言葉なのかもしれなかった。
「妹」――年寄りの独身男の自分に、ヴィクトルが「妹のブランカを紹介してやる」という。それから数週間の間、何度もブランカに会う機会があったが、いつもすれ違いでついぞ姿を見ることはできなかった。
その他の作品はタイトルだけ、やはり印象に残った順に記しておく。
「子供にお話を聞かせる方法」「十の本当のこと」「あざ」「何も必要としない何か」「モン・プレジール」「水泳チーム」「マジェスティ」「ロマンスだった」「わたしはドアにキスをする」「動き」「階段の男」「ラム・キエンの男の子」。

角田光代の言うように「見事なくらい挑発的な短編小説が並んでいる」し、名人級の翻訳家の訳なので読み出すと途中で止まらなくなる。ただし、消化しきれない作品(最後にあげた数編)もあって、どっと疲れた。(2016.9.15読了)
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# by nishinayuu | 2016-11-09 09:30 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

『あなたを選んでくれるもの』(ミランダ・ジュライ、訳=岸本佐知子、新潮クレストブックス)


c0077412_93257.jpg『It Chooses You』(Miranda July, 2011)
本書は映画制作に行き詰まっていた著者がカメラマンやアシスタントとともにロサンジェルスのあちこちに住む人々を訪ね歩いてまとめたインタビュー集であると同時に、彼らとの出会いを通して新しい展開をみせることになった映画が完成するまでを描いたドキュメンタリーである。収録されている迫力のある写真は、インタビューに同行したカメラマンで本文にも実名で登場しているブリジット・サイアー(Brigitte Sire)によって撮影されたもの。
インタビューをはじめたきっかけは、脚本を書きあぐねてネットの世界へ逃避するのが日常になっていた語り手(著者)が、ネットの呪縛から逃れるために手に取った「ペニーセイバー」という雑誌だった。毎週火曜日に届く「ペニーセイバー」は自分の持ちものを売りたい人々と買いたい人々のための広告雑誌で、「どの広告もうんと短い新聞記事のようだった」。たとえば
LA在住の某さん、ジャケットを売りに出す。革製。黒のLサイズ。10ドル。
この売り手がどんなふうに日々を過ごしているのか、なにを夢見、なにを恐れているのかを知りたいと思った著者は、売り手に電話をかけた。この手の広告では、売りに出ている商品について訊ねる以外の目的では電話をしないのが暗黙のルールだが、ここは自由の国だというもう一つのルールがあったし、語り手はどうしてもその自由を味わいたいと思った。これを逃したら、今日一日自由を感じるチャンスは二度とないかも知れないのだ。
黒革ジャケットの売り手を手始めに、語り手は「ペニーセイバー」の広告主たちへのインタビューにのめり込んでいく。「マイケル/Lサイズの黒革ジャケット/10ドル/ハリウッド在住」「プリミラ/インドの衣裳/各5ドル/アーケーディア在住」「ポーリーンとレイモンド/大きなスーツケース/20ドル/グレンデール在住」「アンドルー/ウシガエルのオタマジャクシ/1匹2ドル50セント/パラマウント在住」「ベバリー/レパード・キャット(ベンガルヤマネコ)の仔/値段 応相談/ヴィスタ在住」「パム/写真アルバム/1冊10ドル/レイクウッド在住」「ロン/67色のカラーペン・セット/65ドル/ウッドランド・ヒルズ」「マチルダとドミンゴ/〈ケア・ベア〉人形/2取る~4ドル/ベル在住」「ダイナ/コンエア社のドライヤー/5ドル/サン・バレー在住」「ジョー/クリスマスカードの表紙部分のみ50枚/1ドル/ロサンジェルス在住」
多くは貧しいか寂しい人たちだった。そしてほとんどがパソコンとは無縁の人たちだった。それぞれ個性的な人たちで、マイケルは性転換を目指して努力中の男性、ダイナは年齢不詳なだけでなく、込み入っていて奥深くて摩訶不思議な女性で、ロンは「誰もがこういう人物のアパートに入るはめにだけは陥るまいと心がけて一生を送るようなタイプの」コワイ人だった。そしてクリスマスカードのジョーの存在感も強烈だったが、それはロンとは全然違う強烈さだった。彼はまるで強迫観念にとりつかれた天使のように、がむしゃらに善をなそうとしていた。このジョーとの出会いが語り手の映画作りに大きな変化をもたらすことになる。
こうして完成した映画『ザ・フューチャー』は2011年7月にアメリカで公開され、2013年には日本でも公開されたという。(2016.8.28読了)
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# by nishinayuu | 2016-11-05 09:32 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

『ペナンブラ氏の24時間書店』(ロビン・スローン、訳=島村浩子、東京創元社)

c0077412_9341215.jpg『Mr. Penumbra’s 24-Hour Bookstore』(Robin Sloan, 2012)
語り手のクレイが話し始める。「これから話すのはぼくがめったに紙に触らなかった日々の話だ。(中略)」21世紀初頭にアメリカを襲い、ハンバーガーチェーンを倒産させ、スシ帝国にシャッターをおろさせた外食産業大不況の影響で、ぼくは失業中だった。」

語り手はノートPCで求人広告に目を通しはじめるが、目にとまった雑誌記事を「あとで読む」リストに追加したり、読みたい本をダウンロードして読み始めたりしてしまう。これではらちがあかないと気づいた語り手はスマートフォンを引き出しにしまって外に出る。サンフランシスコは散歩にいい場所だった。そうして見つけたのが「ペナンブラ氏の24時間書店」だった。窓に貼られた求人ビラには「店員募集/夜勤/特殊な応募条件あり/諸手当厚遇」とあった。
ペナンブラ氏はとても年取った男性で、ライトグレーのボタンダウンに青いカーディガンを着ていた。背が高く、やせていて、瞳はカーディガンと同じ青い色だった。この店主から好きな本を聞かれて『ドラゴンソング年代記』と答えたのが気に入られたようで、語り手はアルバイト店員として採用になる。「特殊な条件」の一つは「梯子にのぼれること」だった。書棚はとても高く、上方は空気も薄くてコウモリが見える気がするほどだった。(ここまでで、本好き、古書店好きは作品世界にぐっと引き込まれる。)
さて、アルバイトを始めてすぐに語り手はこの店がふつうの古書店ではないことに気づく。道路に面したスペースは普通の古書店だが、その奥に「奥地」と呼ばれる特殊な古書の棚があった。そこを訪れるのは数人の限られた人たち――コデックス・ヴィータイ(codex vitae)という暗号書を解読するための秘密組織「アンブロークン・スパイン」の会員たちだった。ペナンブラ氏の目を盗んでこれらのことを突き止めた語り手は、友人・知人の力を借りて暗号を解読しようと思い立つ。こうして、500年の間続けられてきたアナログ的手法を厳守しつつ暗号解読を目指す秘密組織を相手に、最新のハイテクに精通した若者達の挑戦が始まる。(このあたりから、ミステリー+ハイテクの世界がめまぐるしい展開を見せるので、ますますこの作品の世界にのめり込むことになる。)

本作品には最新のテクノロジー情報をはじめ現実社会の様々な情報があふれているが、現実にはない事物・事象もそれとなく仕込まれている。たとえば『スターウォーズ』や『ハリーポッター』と並んで『ドラゴン年代記』という作品関連の言及がたびたびあるが、どうやら作者の仕掛けたいたずららしい。もう一つ、「もしかしたら知らないのは私だけ?」と気になってネットで調べてしまったのが「ゲリッツズーン書体」。テクノロジーに関しては、元コンピューター・オタクだったのに最新の情報には全くついていけていないペナンブラ氏に、大いに親近感を覚える。(2016.8.22読了)
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# by nishinayuu | 2016-11-01 09:35 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『風土記の世界』(三浦佑之、岩波新書)

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本書は古代文学、伝承文学を専門とする学者である著者が「風土記とはどういう書物か、なにが書かれているのか、どういうおもしろさがあって、どんなところが大事なのか」という情報を一般読者向けにまとめたものである。始めの2章が風土記の成立や内容の概説、第3章以降が国別の内容紹介となっている。

始めの2章で「8世紀初頭の日本列島を記録した資料」である『風土記』の成立や内容が概説されている。すなわち『風土記』は平城京への遷都から3年後の和銅6(713)年に律令政府が各地方に発した「風土記撰録の命令」によって編まれたものである。「風土記」と呼ばれるのは後のことで、本来は政府の命に対する報告文書である「解」と呼ばれる公文書だった。撰録すべき項目は、特産品、土地の肥沃状態、山川原野の名前の由来、古老が相伝する旧聞異事などだった。当初政府は、中国の例にならって紀(歴代天皇の事跡の記録)・志(支配領域の現状の記録)・列伝(皇子や臣下の事跡の記録)から成る「日本書」の編纂を目指したが、養老4(720)年に「日本紀」が成立したあと、何らかの理由で頓挫したものと思われる。この「日本紀」が現在『日本書紀』と呼ばれているもので、本来は「日本書 紀」であったはずである。そして『風土記』は、「日本書 志」のために収集された記録の名残と考えられる。
第3章以降で国別の内容が紹介される。現在、いちおうまとまった形で遺る風土記(解)としては、常陸、出雲、播磨、豊後、肥前の五か国のものがあり、逸文(後の文献に引用されて遺ったもの)として30~40か国のものがある。それら「もう一つの歴史と伝承の宝庫」の内容とそれらの読み解き方が詳しく、そしてわかりやすく紹介されていく。
第3章は常陸国風土記では正史の「日本書」紀にはもちろん、『古事記』にも出てこない「倭武天皇(やまとたけるのすめらみこと)」が取り上げられ、古事記の倭建命・日本書紀の日本武尊が風土記ではなぜ天皇として登場するのかが考察されている。古事記・日本書紀のヤマトタケル伝説ではただの通過点としてしか存在しない常陸国が、その風土記で一方的な形で倭武天皇への熱い思いを寄せているのは、東征の帰途における悲劇的な死が伝えられる以前の、東への遠征が通過儀礼として機能することによって皇位につくはずのヤマトタケルが常陸国において生き続けていたからだ、という論は説得力がある。
第4章では出雲国風土記が他の風土記とは違って撰録の命令から20年も経った天平5(733)年に提出されたのはなぜか、選録の責任者が国守ではなく国造となっているのはなぜか、「日本書」紀との関係は、などが考察されている。さらに出雲国の特殊性とその神話、「日本海文化圏」、出雲の神々の始祖であるカムムスヒ、出雲神話と古事記神話の関係、などなど興味深い話が盛り込まれている。
第5章では播磨国風土記、豊後国・肥前国風土記に見られる笑われる神や天皇、女性首長、鮎釣り、稲作などに関する伝承が取り上げられていて、風土記の世界のおもしろさが伝わってくる。
230ページほどの新書ながら、かなり中身の濃い一冊である。(2016.8.14読了)
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# by nishinayuu | 2016-10-28 09:24 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

映画鑑賞ノート24 (2016.10.1作成)


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2016年7月~9月に見た映画とドラマの記録
1(~2)行目:鑑賞した月/日 タイトル(原題)制作年・制作国 監督 
(2or3)行目以下:キャスト、一言メモ
☆画像は「ギルモア・ガールズ」です。


7/4 思いやりのすすめ(The Fundamentals of Caring)
   2016米 ロブ・バーネット
   ポール・ラッド、クレイグ・ロバーツ、セレーナ・ゴスメ
   邦題も原題も印象に残らない。(つまり中身も忘れました。)
7/6 ギルモア・ガールズ(Gilmore Girls)2000米
   ローレン・グレアム、アレクシス・ブレデル、Mマッカーシー
   スコット・パターソン、ヤニック・トゥルーズデル
   シーズンⅠ~Ⅶまでのドラマ。はちゃめちゃで愉快。
7/27 おしゃれ泥棒 1966米 ウイリアム・ワイラー
   ヘプバーン、ピーター・オトゥール、シャルル・ボネ
   オトゥールがこんなにきれいな青い目だったとは。
7/30 Meet the Family3 2010米 ポール・ワイツ
   デニーロ、ベン・スティラー、オーウェン・ウイルソン
   双子の男の子と女の子、どっちもかわいくな~い。
8/1 夏の庭 1994 1994日本 相米慎二
   三國連太郎、淡島千景、坂田直樹
   死ぬのを見たくておじいさんの家にせっせと通う少年たち。
8/7 ウィークエンドはパリで 2013英 ロジャー・ミッシェル
   ジム・ブロードベント、リンゼイ・ダンカン
   結婚30年の夫婦が新婚旅行で行ったパリを再訪すると――。
8/10 マダム・イン・ニューヨーク(English Vinglish)2012印
   ガウリ・シンデー
   シュリデヴィ、プリア・アーナンド、メーディ・ネブー
   美しいヒロインが姪やクラスメートに力づけられて成長していく。
   大切なのはlove & respectというメッセージに共感。
8/16 ダブリンの時計職人(Parked)2010愛・芬蘭 ダラ・バーン
   コルム・ミーニイ、コリン・モーガン、ミルカ・アフロス
   おじさんを救った青年には救いの手は届かなかった。音楽が雄弁。
9/9 双子物語(Twin sisters)2015米 サマンサ・フターマン
   サマンサ・フターマン、アイナス・ボルディア
   26年前に韓国から別々の国に養子に出された双子の姉妹がSNSを
   介して巡り会う。ドキュメンタリー。
9/27 Midnight in Paris 2011米 ウディ・アレン
   オーウェン・ウイルソン、Mコティヤール、キャシー・ベイツ
   夜中にある街角でタクシーを降りると、そこは過去のパリだった。
   ロートレックとダリが本物そっくり!
9/30 Hector 2015 英 ジェイク・ギャビン
   ジーナ・マッキー、Sトンプキング、ユアン・スチュアート
   ロンドンの路上生活者用シェルターの女性係員が素晴らしすぎる。
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# by nishinayuu | 2016-10-24 13:21 | 映画・ドラマ | Trackback | Comments(0)

『チャーミング・ビリー』(アリス・マクダーモット、訳=鴻巣友季子、早川書房)


c0077412_9563919.jpg『Charming Billy』(Alice McDermott, 1998)
物語は葬儀後の昼食会の描写から始まる。ブロンクスの町なかのグリル・バーに49人分の席が用意されていて、ビリーの友人や親族が続々と入ってくる。テーブルの上座に着いたのは30年ビリーと連れ添ったメイヴ。この店を見つけ、あらゆる手はずを一人で整えた健気で気丈なメイヴだった。けれどもウェイトレスたちが話しかけ、店主が注文を訊きにいき、最後に店の勘定を払い、従業員等にチップを渡し、メイヴを自宅に向かうリムジンまで送り、客たち一人一人と握手して礼を言ったのは「わたし」の父のデニスだった。
客たちはてんでにビリーのことを話す。手紙魔だった、碧眼でとびきりの二枚目だった、だれもがビリーを愛していた、ロングアイランドの海辺で出逢ったエヴァに恋をした、アイルランドに戻った彼女に500ドル送金した、こっちへ来る準備をしているという手紙がエヴァから来た、エヴァの姉からエヴァが肺炎で死んだと聞かされた、靴屋での仕事はそのまま続けた、靴屋でメイヴと出会って1953年に結婚した、60年代末にアル中更正会に入った、75年にアイルランド旅行をした、帰るとすぐにロングアイランドを再訪した、亡くなった初恋の人を30年も思い続けて最後は酒におぼれて死んだ、などなど。発言者とビリーとの関係、発言者同士の関係は曖昧なまま、彼らの断片的な発言を順不同で拾っていく形で展開していき、なにか魅力的な世界が展開していく予感を与える。
客たちが帰って「わたし」と父だけになったとき、父が言う。「エヴァは死んではいない。あれは嘘、ふたり(ビリーと父)だけの嘘だった。エヴァは生きていたんだよ」。そして次の章から少しずつ詳細が解き明かされていくのは、アイルランド系カトリックの人々の穏やかで温かくどこか懐かしい世界である。特に印象的な人物は「わたし」の祖父で電車の車掌だったダニエル。『チャーミング・ダニエル』という物語の主人公になってもいい人物である。

ビリーがそらんじていたというイェーツの詩「意を決して出かけよう、出かけよう、イニスフリーへ」の原詩を記しておく。

I will arise and go now, and go to Innisfree,
And a small cabin build there, of clay and wattles made;
Nine bean-rows will I have there, a hive for the honey-bee,
And live alone in the bee-loud glade.

And I shall have some peace there, for peace comes dropping slow,
Dropping from the veils of the morning to where the cricket sings;
There midnight's all a glimmer, and noon a purple glow,
And evening full of the linnet's wings.

I will arise and go now, for always night and day
I hear lake water lapping with low sounds by the shore;
While I stand on the roadway, or one the pavements grey,
I hear it in the deep core of the heart.
(2016.8.6読了)
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# by nishinayuu | 2016-10-20 09:57 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『メッセンジャー』(ロイス・ローリー、訳=島津やよい、新評社)


c0077412_1030418.jpg『Messenger』(Lois Lowry, 2004)
サブタイトルは『緑の森の使者』。『ギヴァー』から始まるシリーズの3冊目である。
本作の舞台は『ギヴァー』や『ギャザリング・ブルー』のコミュニティとは違って、弱者が互いに支え合って暮らす平和な村である。村では人と違う点や短所が欠陥と見なされることは決してなく、むしろ尊重されている。たとえば目の見えない男も、顔の片側半分が深紅のシミ(あざ)で覆われている男も、それぞれの持つ知識や才能に見合った呼び名を得て平穏に暮らしている。
しかしこの村にも「影」の部分があった。村人は「トレード」という方法で欲しい物を手に入れることができたが、「トレード」のためになにを差し出したのかはトレードの仲介者と本人にしかわからなかった。しかし間もなく「トレード」のもたらした変化が現れてくる。人々は弱者を受け入れる心、寛容の心を失って、よそから逃れてくる人々の受け入れを阻止して自分たちの利益を守るべきだと言い出す。そしてついに村は3週間後に入り口を閉鎖することを決議する。
このとき一人の少年がある決意を持って旅に出る。遠くのコミュニティに住む一人の娘を、この村に住む父親の許に連れてくるために。村を囲む「森」は通過しようとする者を閉じ込め、からめ殺すことがあったので、村人から怖れられていたが、この少年だけはいつも無事に「森」を行き来できたので、これまで少年は村と外とを繋ぐメッセンジャーの役を果たしてきた。しかし今「森」はこれまでとは異なる様相を呈してきていた。「森」はなにかどろっとしたものが付着して、病的になっていた。「森」が「濃く」なっていっているのだ。

主な登場人物――マティ(この巻の主人公。幼少期に住んでいたコミュニティを離れて2年。「森」をよく知る少年で、傷を癒やす力を持つ)、「見者」(マティと一緒に暮らす盲目の男)、「助言者」(子どもたちに慕われている学校教師。顔半分に深紅のシミがある)、ジーン(マティが思いを寄せている少女。「助言者」の娘)、「指導者」(雪をついて外部からやって来た青年。淡青色の目を持ち、彼方を見る力を持つ)

物語のほぼ最初からマティ(2音節)がマット(1音節)のその後であるとわかる。だから盲目の男が誰なのか、その娘が誰なのかもわかる。さらに、雪の中をやって来た青い目の青年も登場して、シリーズものの楽しさが味わえる。さて、『メッセンジャー』の世界は将来が見えないまま終わっているので、完結編の『Son』も読まなければ。(2016.8.13読了)
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# by nishinayuu | 2016-10-16 10:30 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

『ギャザリング・ブルー』(ロイス・ローリー、訳=島津やよい、新評社)


c0077412_9401097.jpg『Gathering Blue』(Lois Lowry, 2000)
サブタイトルは『青を蒐めるもの』。『ギヴァー』(記憶を注ぐもの)の続編である。
本編の主人公はキラ(Kira)という「2音節」の名を持つ少女。キラの村では名前の音節によっておよその年齢がわかるようになっている。すなわち名前が「1音節」なら幼児、「2音節」なら青少年、「3音節」なら壮年、「4音節」なら老年である。キラも幼少期はキア(Kir)という名だった。
キラは生まれつき足がねじれていたので、この村では生きる資格がない者として処分されるはずだったが、母の必死の抵抗と有力者だった祖父のおかげで処分を免れた。キラは織物の名手である母の手伝いをしながら暮らしてきたが、母は病死してしまった。フィールド(旅立ちの野)で4日間、母の魂が立ち去るのを見守って村に戻ったキラには、住む家も頼るべき人もいなかった。母が病死だったため、村の掟に従って家は焼かれてしまった。父親はキラが生まれる前に亡くなっていたし、祖父もすでに亡くなっていた。しかもキラは、人々から働き手としても結婚相手としても期待されていない、無用の人間だった。キラはこの村で生きていく方法を必死で考える。
糸を操って模様を作り出すことにかけては他の追随を許さない才能を持つキラ。その才能のおかげで議事堂の一郭に部屋を与えられ、刺繍の仕事をすることになるキラ。仕事に必要な染色を学ぶために森に植物園を持つ老女の許に通うキラ。そうした毎日の中で、キラは次第に芸術家として遇されることの意味と、背後に潜むおぞましさに気づいていく。やがて、どうしても見つからなかった「青い糸」が外部から来た男によってもたらされた時、キラは新たな決断をする。

主な登場人物――マット(Mat。下層民の集落である沼地の住人で、キラの手助けをする活発な少年)、トマス(Thomas。彫刻の才によってキラと同じく議事堂の一郭に部屋を与えられている少年。文字が読めないキラのために植物と色の名を記録して手助けをする)、ジャミソン(Jamison。守護者評議会の一員。後見人としてキラの世話と監督を担当)、アナベラ(Annabella。キラに染色を教える老女)、クリストファー(Christopher。狩をしているときに命を落としたキラの父)

植物と色の関係――赤系(カワラマツバ、アカネ、)、黄色系(ヒトツバエニシダ、ヨモギギク、ノコギリソウ、オオハンゴウソウの葉と茎)、茶系(ホウキスゲ、聖ヨハネの草、秋のキリンソウ)、緑系(カミツレ、オオハンゴウソウの花)、紫系(タチアオイ、ニワトコ、バジル)、青銅色(ウイキョウ)、青(ホソバタイセイ)、色止めに使えるもの(ウルシ、木の虫こぶ、古いおしっこ)

最期のほうに他のコミュニティに住む「青い目の青年」についての言及があり、次作『メッセンジャー』への期待がかき立てられる。(2016.8.13読了)
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# by nishinayuu | 2016-10-12 09:40 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『ギヴァー』(ロイス・ローリー、訳=島津やよい、新評社)


c0077412_10554340.jpg『The Giver』(Lois Lowry, 1993)
読書会「かんあおい」2016年8月の課題図書。
サブタイトルに『記憶を注ぐもの』とある。4巻まであるシリーズの第1冊目である。作者は1937年生まれの児童文学作家で、この作品で世界的に名高い児童文学賞であるニューベリー賞を受賞している。

物語の舞台は近未来の架空のコミュニティ。そこでは、すべての人が何らかの役割を果たしながら規則正しい生活を送っている。子どもたちは「家族ユニット」の中で大切に育てられ、9歳になると自転車を与えられる。自転車は、家族ユニットの保護を離れて少しずつコミュニティの中へ移行していくことを意味する決定的な象徴だ。そして12歳の儀式でそれぞれに適した役割が決定され、子どもたちはコミュニティの一人前の成員となるための訓練生活に入っていく。
物語は12歳の儀式を控えた主人公のジョナスが、いま自分が感じているなにか怖いような感じは、正確には「怖い」ではなくて「待ちきれない」と言い表すべきだ、と分析するところから始まる。「怖い」というのは前の年に正体不明のジェット機がコミュニティの上空に現れて、市民に緊急待避命令が出た時に覚えた感情だった。普段は決して飛行機がコミュニティの上空を飛ぶことはないのだが、そのときは訓練中のパイロットがミスを犯したのだと判明した。数分後にスピーカーの声が告げる。「言ウマデモナク、彼(パイロット)ハ解放サレルデショウ」と。「解放」とはコミュニティから永遠に消えることを意味していた。
表面的には快適で平穏に見えるこのコミュニティは、実はすべての市民の人生をコントロールし「同一化」することによって成り立っていた。誕生から死に至る市民の人生も、市民の「記憶」も知覚も感情も、なにもかもがコントロールされていた。そしてそのコントロールは自然界(動植物、地形、気候など)にまで及んでいた。しかし、まれな例外を除いて、そのことに気づく者はいなかった。そして主人公のジョナスこそはそのまれな例外の一人だった。それはジョナスが他の者たちが暗い瞳をしている中で例外的に「明るい瞳」をしていることと関わりがあるようだった。

主要登場人物は父親(ニュー・チャイルドの「養育係」)、母親(司法局の重要ポストに就いている)、妹のリリー(もうすぐ8歳になるおしゃべり好きな少女)、ゲイブリエル(父親が特別看護のために家に連れてきた、夜泣きの激しいニュー・チャイルド)、アッシャー(同級生で親友。「レクリエーション副官」に任命される)、フィオナ(成績優秀でもの静かな同級生、「老年者の介護係」に任命される)、ギヴァーの老人(ジョナスの心に記憶を注ぎ、訓練する。10年前、レシーヴァーだった娘のロースマリーを失っている。音楽が知覚できる)。
「ギヴァー(記憶を注ぐ者)」とはコミュニティの記憶を管理する役割を担う者のこと。ジョナスは12歳の儀式でギヴァーから記憶を継承する「レシーヴァー(記憶の器)」に任命される。これは特別に優れた資質を持つ者に与えられる名誉ある任務であるが、人々とは切り離された存在でもあった。厳しく孤独な訓練のなかで、コミュニティの「同一化」に疑問を抱きはじめたジョナスに、老人は深い理解を示し、やがて二人はある決断を下す。(2016.7.31読了)
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# by nishinayuu | 2016-10-08 10:56 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)