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映画鑑賞ノート26 (2017.3.31作成)

c0077412_10124250.jpg2017年1月~3月に見た映画とドラマの記録
1(~2)行目:鑑賞した月/日 タイトル(原題)制作年・制作国 監督
(2or3)行目以下:キャスト、一言メモ
☆画像は刑事ジョーに出てくるヴォージュ広場。

1/2 宿命の大統領(Survivor)米の連続ドラマ
   キーファー・サザーランド、マギー・Q、カル・ペン
   これからどうなるかというところで途切れてしまった(!?)
1/15 サイダーハウス・ルール(The Cider House Rules)1999米
   ラッセル・ハルストレム
   トビー・マグワイア、シャーリーズ・セロン、マイケル・ケイン
   孤児院生まれのホーマーの成長物語。医師業のルールもサイダー
   ハウスと同様に当事者が決めるべき、というメッセージ。
1/19 パーマネント野ばら 2010日本 吉田大八
   菅野美穂、江口洋介、小池栄子、池脇千鶴、夏木マリ
   愛し愛されていると思い込むことで寂しさを押さえ込んでいる
   ヒロインをトンデモ女たちが支えている。感動的秀作。
1/20 The Greatest 2009米 シャナ・フェステ
   ピアーズ・ブロスナン、S・サランドン、キャリー・マリガン
   息子を事故で失って崩壊しかけた家族が、息子の恋人を受け入れ
   て再生していく。
1/22 刑事ジョー(Jo)2013 仏・英の連続ドラマ
   ジャン・レノ、ジル・ヘネシー、トム・オースティン
   各回の事件現場はヴォージュ広場、ロダン美術館などの名所。
1/25 オデッサ・ファイル(The Odessa File)1974英独 
   ロナルド・ニーム
   ジョン・ボイド、マクシミリアン・シェル
   フォーサイス原作。主人公が元ナチの将校を追い詰めていくのは
   ユダヤ人の怨念を晴らすためだと思っていたのに……。
1/27 オチョ・アペリードス・カタラネス(Ocho apellidos)2015
   マルティネス・ラサロ
   ダニ・ロビラ、クララ・ラゴ、カラ・エレハルデ
   タイトルは「カタルニア語の八つの姓」の意。互いにいがみあっ
   ている地方の男女による結婚をめぐるドタバタ喜劇。
2/15 失踪(The Vanishing)1993米 ジョルジュ・シュルイツァー
   ジェフ・ブリッジス、K・サザーランド、N・トラヴィス
   「妄想は究極の凶器」を副題とするサイコサスペンス。
2/25 パリ3区の遺産相続人 2014 BBC・仏・米 
   イスラエル・ホロビッツ
   ケヴィン・クライン、マギースミス、クリスティン・トーマス
   味わいのある作品。キャストに犬のフェルナンドの名も。
2/26 Extremely Loud and Incredibly Close 2012米 S・ダルドリー
   トム・ハンクス、サンドラ・ブロック、M・F・シドー
   「ものすごく辛くてあり得ないほど優しい」作品。少年の家族も少
   年が訪ね歩いた人々も現実にはあり得ないほど温かく優しい。
2/27 悲しみを乗り越えて(Lift Me Up)2015米 マーク・カルティエ
   トッド・カフーン、S・フランゲンバーグ、シェーン・ハーパー
   母を亡くした女子高生と、妻を亡くした義理の父が本物の親子に
   なるまで。
3/1 天国の日々 1978米 テレンス・マリック
   リチャード・ギア、ブルック・アダムス、サム・シェパード
   貧しい季節労働者と恋人が青年農場主にしかけた偽りの愛の
   顛末。大自然の描写がとにかく美しい。
3/7 オリエント急行殺人事件 1974英 シドニー・ルメット
   アルバート・フィニー、ローレン・バコール、バーグマン
   パーキンスなどのスターが勢揃いする豪華な娯楽作品。
3/11 向かい風(Des Vents Contraires)2011仏 ジャリル・レスペール
   オドレイ・トトゥ、ブノワ・マジメル、イザベル・カレ
   誰かになにかを言うときはそれが最後の言葉になるかも知れな
   いので、感情をコントロールして慎重に言わないと。
3/12 ミッション・インポッシブル④ 2011米 ブラッド・バード
   トム・クルーズ、ポーラ・パットン、サイモン・ペグ
   あり得ないシーンの連続で笑ってしまうが、ブルジュ・ハリファ
   の外壁を登るシーンはスタントなしだったと知ってちょっと感動。
3/14 テレマークの要塞(The Heroes of Telemark)1965英米
   アンソニー・マン
   カーク・ダグラス、リチャード・ハリス、ウーラ・ヤコブソン
   ナチスによる原爆制作を阻止したノルウェーのレジスタンスを
   史実に基づいて描いた作品。ハリスは昔はこんな顔だったのね。
3/16 ボディ・スナッチャー(Invasion of the Body Snatchers)1956
   米 ドン・シーゲル
   ケビン・マッカーシー、ダナ・ウインター、サム・ペキンパー
   侵略FSの古典(原作J・フィニー)で見応えがある。このあと
   何度もリメイクされているだけのことはある。
3/19 8月の家族たち(Last Mile Home)2013米 ジョン・ウェルズ
   メリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツ、アビゲイル
   「家族は遺伝子で繋がるだけの無作為に選ばれた細胞」に納得。
3/23 二人のトマ旅に出る(Le Voyage au Groenland)S・ベベデル
   トマ・ブランジャール、トマ・シメカ、フランソワ・シャト
   フランス人のふたりがイヌイットの村を訪ねる。人々は伝統の
   狩猟文化を守りながらインターネットも使いこなしていた。
3/23 Best Friend’s Wedding 1997米 P・J・ホーガン
   ジュリア・ロバーツ、D・マローニー、キャメロン・ディアス
   ストーリーはばかばかしいが、女優陣が若くて美しいので許せる。
3/28 マラソンマン(Marathon Man)1976米 J・シュレジンジャー
   ダスティン・ホフマン、ローレンス・オリヴィエ
   スポコン映画ではない。オリヴィエは若い頃より柔らかくなった
   感じがするが、眼にすごみがある。
3/28 グレース&フランキー(Grace & Frankie)③米のテレビドラマ
   ジェーン・フォンダ、リリー・トムリン、マーティン・シーン
   内容はイマイチだが、インテリアやファッションは魅力的。
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by nishinayuu | 2017-04-22 10:14 | 映画・ドラマ | Trackback | Comments(1)

『アーサー王最後の戦い』(ローズマリ・サトクリフ、訳=山本史郎、原書房)

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『The Road to Camlann』(Rosemary Sutcliff)
本書は児童向け歴史小説で知られるサトクリフによる大人向けの歴史小説「サトクリフ三部作」の三巻目である。第一巻『アーサー王と円卓の騎士』と第二巻『アーサー王と聖杯の物語』も同じ原書房から出版されている。

ところでこの本を読んだのは、『忘れられた巨人』の主要キャラクターの一人であるガウェインについて知るためだった。さてそのガウェインは――アーサーの姉モルゴースとオークニー国のロト王の長男で、邪悪な母親の許を去ってアーサーの麾下に入り、円卓の騎士の一人として終生アーサー王に仕えた人物である。アーサー王が最も愛した二人の騎士のうちの一人でもある。本書では「炎のような髪と炎のような気象を持った型破りな男、アーサー王の腹心」と紹介されている。アーサー王に愛されたもう一人の騎士ランスロットとは親友だったが、ある不幸な出来事のせいで対立して一対一の真剣勝負をするはめになる。二度にわたったこの勝負でガウェインは頭部の古傷にさらに深手を受けたが、アーサー王に敵対するモルドレッドとの戦いを前に、ランスロットにアーサー王への救援を請う手紙を書いて、アーサー王に看取られながらこの世を去る。
死後もアーサー王の夢枕に立って、ランスロットが駆けつけるまでモルドレッドとは戦わないように、と作戦を進言したりする。『忘れられた巨人』でアーサー王の龍クエリグを守っていたガウェインとはこういう人物だったのだ。
特筆すべき人物と事物を以下にまとめておく。
*アーサー王:ブリテン島ログレス国の王。理想のキリスト教君主とされる。
*グウィネヴィア:アーサー王の妃。輿入れの際に大きな円卓を持参した。
*ランスロット:アーサーの信頼が篤く「キリスト教を奉じる世で最高の騎士」として描かれる。湖のランスロットと呼ばれる。
*オークニー国の兄弟:ガウェイン(長男)、アグラヴェイン(次男、モルドレッドの右腕)、ガヘリス(三男)、ガレス(四男)。
*モルドレッド:オークニー国兄弟の末弟。父親はアーサー王、母親はアーサーの異母姉であるモルゴース。母親から受け継いだ邪悪な心と「ダマスク織の絹のような滑らかな声」の持ち主。円卓の騎士でありながら王を憎んでおり、王位を簒奪しようとする。
*ベディヴィエール:円卓の騎士の中でアーサーの最後の戦いであるカムランの戦の唯一の生存者。王の頼みによってエクスカリバーを湖に返す。
*エクトル:またの名を沼のエクトルという。ランスロットの異母弟。
*トリスタン:容姿端麗な竪琴の名手。コーンウォールの王妃イズー/イゾルデとの恋物語で知られる。
*聖杯の冒険の仲間:ランスロット、ボールス(ランスロットの従兄弟)、ガラハッド(ランスロットの息子、聖杯の神秘に触れたため死亡)、パーシヴァル(ガラハッドの死後1年で死亡)。
*エクスカリバー:アーサーが湖の妖精から授けられた聖剣。
*キャメロット:アーサー王の都。円卓はここにある。
*アヴァロン島:「リンゴの木の茂るアヴァロン」と呼ばれる。アーサー王の終焉の地。

(2017.2.12読了)
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by nishinayuu | 2017-04-18 09:59 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『The Buried Giant』(Kazuo Ishiguro, Vintage)

c0077412_142961.jpg『忘れられた巨人』(カズオ・イシグロ)
物語の舞台はイングランドの辺鄙な地方。イングランドの他の地域には城や修道院などもあったが、このあたりはまだ「Iron Age」にあってogre(オーグル=人食い鬼、怪物)もいる。
主人公はアクセルとベアトリスというブリトン人の老夫婦で、網目状に繋がった住居群の外れに住んでいる。外部からの危険はより大きく、夜みんなで集まる大広間の火の恩恵にあずかることはより少ない場所である。二人は夜、ろうそくを灯すことも許されていない。そのように集落の中で疎外され、ないがしろにされていている二人は、それだけにいっそう互いを思いやる強い気持ちで結ばれている。
そんな二人には大きな気がかりがある。周りの人々が過去を語らず、思い出すこともなさそうなことだ。以前、赤毛の女がやって来て人々の病気を治したことがあったが、人々は(ベアトリスも)その女のことをおぼえていない。行方不明になった少女が戻ってきたときも、人々は別に喜ばなかった。みんなで懸命に探したことを忘れていたからだ。そしてアクセルも、つい3週間前の「ろうそく事件」を今朝思い出すまですっかり忘れていたことに愕然とする。ノラという少女が二人のために持ってきてくれたろうそくを鍛冶屋の女房たちに取り上げられてしまったあの事件を忘れていたとは。人々を覆いつつある「忘却」が自分たち夫婦にもじわじわと迫ってきているのだ。
ここを出よう、という話を二人でしたのは前の年の11月頃だったろうか。灰色の朝、村を通ったサクソン人らしき女とことばを交わしたあとベアトリスが、息子のところに行こう、と言いだした。息子の住む村はグレート・プレインの東の方にあって、2~3日で行けるから、と。アクセルは覚えていないがベアトリスによると、そのときはアクセルが反対したらしい。
春のある朝アクセルは、今こそ息子を訪ねる旅に出よう、とベアトリスに告げる。息子はなぜ出て行ったのか、息子はどんな顔でどんな声だったのか、息子にも子どもがいるだろうか……。二人にはなにもわからない。それでもベアトリスは、何度かグレート・プレインを通ってサクソン人の村へいったことがあるのでサクソン村への道はわかるし、息子のいる村はその少し先だと思うから見つけるのは難しくないはずだという。
杖をつき、荷物を背に負った二人は、最初の晩を過ごす予定のサクソン人の村を目指す。グレート・プレインには「ジャイアントが埋められている所」があるので、そこをよけて大回りをしなければならない、とベアトリスがアクセルに教える。ベアトリスが道を探しながら前を行き、アクセルが後ろを歩く。襲われるのは列の後ろの人間と決まっているからだ。


ここまでが第1章と第2章の最初の序奏部分で、ここから物語は壮大な展開を見せていく。二人は息子に会えるのか。そもそも二人の過去に何があったのか。忘却の霧は二人にとって、またブリトン人やサクソン人にとってどんな意味があったのか。記憶することの意義、忘却することの意義について考えさせられる物語である。
主要な登場人物は以下の通り。
渡し船の船頭/ウィスタン(サクソンの戦士)/エドウィン(サクソン村の少年)/ガウェイン(龍の守護者)/クエリグ(龍。彼女の息が「忘却」の元凶)
(2017.2.10読了)
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by nishinayuu | 2017-04-14 14:02 | 読書ノート | Trackback | Comments(2)

『チェンジ・ザ・ネーム』(アンナ・カヴァン、訳=細美遥子、文遊社)


『Change the Name』(Anna Kavan, 1941)
物語の始まりは1912年のイングランド中部。主人公は女学校卒業を控えた17歳の少女。
c0077412_1004587.jpg本書の主人公は、多くの女性たちが家に縛られて生きるしかなかった時代に、そういう生き方を拒否して特異な生き方を選んだ女性である。あるいは、彼女は特異な生き方を「選んだ」わけではなく、そんな生き方しかできなかった、といったほうが正確かも知れない。というのも彼女は親の愛を実感できないまま大人になっていき、自分が親になっても子どもを愛すことができなかった女性なのだ。「母性神話」を突き破る人物設定のこの主人公は、周囲の思惑は意に介さずにひたすら自分の道を突き進む。

[主な登場人物]
*シーリア――主人公。輝く金髪と冷ややかな魅力で男たちを惹きつける。
*フレデリック・ヘンゼル――シーリアの父。彼女のオックスフォード進学を許さない。
*マリオン・ヘンゼル――シーリアの病弱な母。長男の夭逝から立ち直れないでいる。
*クレア――シーリアが家を出るために利用した青年。技師として出向いた東洋で死亡。
*少女クレア――シーリアとクレア青年の間に生まれた娘。
*アンソニー・ボナム――イギリスへ戻る船でシーリアが恋に落ちた青年。間もなく戦死。
*イザベル・ボナム――アンソニーの死後、シーリア母娘を同居させ、愛情を注ぐ。
*フランシス・テンプル――ボナム家の古い知り合い。バツイチの中年。シーリアに求婚。
*ジョン・サザーランド――出版社の社主。名声と富と風貌でシーリアの心を捉える。
*ヒュー・バーリントン――医師。シーリアに惹かれていたが、打算からクレアに求婚。

作者のアンナ・カヴァン(1901~1968)は裕福なイギリス人の両親のもとに生まれたが、幼い頃から不安定な精神状態にあって、結婚生活が破綻した頃からヘロインを常用していたという。文遊社から『鷲の巣』『あなたは誰?』『愛の渇き』などが出版されている。『鷲の巣』の紹介文には「旅の果てにたどり着いた〈管理者〉の邸宅。不意に空に現れる白い瀑布、非現実世界のサンクチュアリ――強烈なヴィジョンが読む者を圧倒する、傑作長編、本邦初訳」とある。(2017.2.3読了)
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by nishinayuu | 2017-04-10 10:02 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

『ミラード』(ラフィク・シャミ、訳=池上弘子、西村書店)

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『Milad』(Rafik Schami, 1997)




物語はダマスカスの大学生が行き倒れの老人ミラードから聞いた「ミラードの身の上話」という形になっている。夏になると山の中にあるマルーラ村に現れては子どもたちの人気をさらっていたミラード。男たちは笑いものにし、女たちは彼が腹を立てることを妙に怖れていたミラード。そのミラードの嘘か誠か、夢か現か見紛う奇想天外な物語が、「千夜一夜」ならぬ八夜にわたって語られていく。八夜のタイトルは以下のようになっている。
第一夜「ミラードはなぜ見知らぬ土地に行ったのか」/第二夜「ミラードは信心深い男の家で経験を積んだ」/第三夜「ミラードは心ならずもロシア革命に巻き込まれた」/第四夜「なぜミラードは自分の評判を聞き流したのか」/第五夜「ミラードは墓荒らしの男と気心が通じ合うことに気づいた」/第六夜「ミラードは売春宿でモラルを学んだ」/第七夜「村の長老は馬糞を食べるはめになった」/第八夜「ミラードは試練に耐えて宝物を手にした」
飢えと暴力にさいなまれながらも決してへこたれることのないミラードは、まるで絢爛豪華な生涯であるかのように誇らしげに身の上話を展開していく。

作者が『蠅の乳しぼり』『空とぶ木』のラフィク・シャミであり、出版社が西村書店であればこの作品も青少年向けの内容だろう、と勝手に思い込んでいた。それがとんでもない間違いだということに途中で気がついたが、それはそれとして一風変わった面白い作品だった。読後に、西村書店について調べたところ、児童書だけでなく医学専門書や一般書なども扱う出版社だった。ラフィク・シャミ(1946~ )もまた、大人向けの作品もいろいろ出していて、代表作は『愛の裏側は闇』(2004、東京創元社)だという。「ダマスカスを舞台に、それぞれカトリックとギリシア正教の二つの家の100年にわたる確執を描いた作品」ということで、機会があったら(近くの図書館にあったら、と同義語)読んでみたい。
因みにラフィク・シャミは筆名で、ラフィクは「仲間/友人」、シャミは「ダマスカス人」の意だという。ダマスカスのキリスト教地区に生まれた彼は、家ではアラム語、学校ではアラビア語という環境で育ち、1971年にドイツに亡命したあとドイツ語で作家活動をしている。(2017.1.31読了)
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by nishinayuu | 2017-04-06 10:22 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

『마상에서』(박완서)

『馬上にて』(朴婉緒)
韓国語講座テキスト。短編集『黄色い家』に収録されている作品。
韓国では旧暦で正月を祝う。正月休みを利用して故郷に帰省する人も多い。最近は海外に出かける人も増えたという話を他人事のように聞いていた著者だったが、ある年、旧暦の正月にネパール旅行をすることになった。旅行団は70代から10代までの老若男女によって構成されていたが、トレッキングのコースは20代の若者向けになっていて、日程表を見ただけでも相当きつい旅行になりそうだった。その旅行に著者は大学に入ったばかりの孫を連れて行くことにした。勉強さえできればいい、という感じで甘やかしてきた孫に、少しは肉体的にきついこともさせてみようと考えたのだった。
c0077412_1061852.jpgさて旅行先では、トレッキングで最初に音を上げたのは最年長者の著者だったが、年長者のために数頭の馬が用意されていたので、きつい上りにさしかかるたびに馬に乗せてもらった。著者は馬に乗るのが初めてなので怖くてたまらなかったのだが、孫が手綱を取ってくれたので、安心して乗っていられた。そしてその日が正月だったからか、ふと、祖父と過ごした正月のことが思い浮かんだのだった。
著者は祖父に特別にかわいがられて育ったが、教育熱心な母の計らいでソウルの学校に入れられたため、8歳で祖父の許を離れた。そんな孫娘のために、祖父は正月を新暦で祝うことにした。新暦の正月には学校が長い間休みになるからだ。時は日帝強占期。正月を新暦で祝うことが強制され、旧暦の正月の時は学校も役所も休みにはならなかった。けれども人々はこっそりと旧暦の正月を祝い、旧暦の正月を守ることをまるで独立運動のように感じていた。そんな中で村の精神的な支えでもある祖父が孫娘のために新暦の正月に、つまり「日本式に転向」してしまったのだ。正月は子どものための行事だという信念を持って祖父は、人々の陰口をものともせず、孫娘のために正月気分を盛り上げることに力を注いだ。こんな祖父のおかげで著者は、小学校時代の冬休みは半月の間ずっとゆったりとした豊かな祝祭の期間だった、と記憶することになる。
祖父にかわいがられ、大事にされた記憶がその後の人生でも自分を支えてくれた、と著者はしみじみ思う。そして今回のきつい旅は孫にどんな記憶として残るのだろうか、と想像してみる。かわいがられ、大事にされた記憶として残ることを祈りつつ。

大学受験生の事情、海外旅行事情、トレッキングと馬の関係、著者の祖父の人柄、日帝強占期のあれこれ、正月行事のあれこれなどなど、盛りだくさんな内容で読みでがありました。(2017.1.23読了)
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by nishinayuu | 2017-04-02 22:30 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)