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『怪談』(小泉八雲、偕成社)


c0077412_9102288.png読書会「かんあおい」2015年2月の課題図書。
本書には全部で20の怪談が収められている。昔初めて読んだときはぞっとした話も、その後何度か接して感受性が鈍くなったのか、さらりと読めてしまった。そんな中で印象深いのはやはり「耳なし芳一の話」。この話や「守られた約束」などに現れる「得体の知れた者の死霊」には心惹かれる。各編のタイトル、内容、伝承地を以下に記録しておく。

ムジナ(のっぺらぼうの話。赤坂町の紀の国坂)
幽霊滝の伝説(背負った赤子の首がもぎ取られた話。鳥取西部の各地)
雪女(木こりの茂作と己之吉が雪女に出合った話。武蔵の国)
茶碗の中(式部平内の顔が映った茶を飲んだ関内という若党のその後。本郷白山)
安芸之介の夢(常世の国が実は蟻の巣だったという話。大和の国十市の里)
和解(雨月物語の「浅茅が宿」に類似。京都)
常識(徳の高い坊さんが狸に化かされた話。京都愛宕山)
ほうむられた秘密(隠した恋文が気になって亡霊となった娘の話。丹波の国)
鏡のおとめ(百済から来た鏡の精の話。南伊勢の国)
食人鬼(夢想国師による施餓鬼の話。美濃の国)
梅津忠兵衛(城の夜勤番が氏神の頼みを聞いてあげて強力を得た話。出羽の国横手)
おかめの話(長者の娘おかめが施餓鬼によって成仏する話。土佐の国名越)
忠五郎の話(足軽の若者が蟇に血を吸い取られる話。江戸小石川)
守られた約束(囚われの男が切腹して魂となり、約束を果たす話。播磨の国加古の里)
やぶられた約束(約束をやぶって再婚した夫の若い妻を、死んだ妻が殺害する話。)
果心居士(祇園の社で仏の教えを説いていた居士の話。京都の北端)
青柳ものがたり(畠山義統の家来が柳の精を妻にした話。能登の国)
ろくろ首(元菊池家の家臣・回竜とろくろ首の話。九州→甲斐の国→信州諏訪)
耳なし芳一の話(阿弥陀寺の芳一が亡霊たちに平家語りを語った話。下関/赤間が関)
(2015.2.7読了)
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by nishinayuu | 2015-04-28 09:10 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

「在原業平の中将、東の方に行きて和歌を読みし語」その1

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『今昔物語』巻第二十四の第三十五の再話とその韓国語訳(拙訳)です。

아리와라노 나리히라-중장, 동방으로 가다가 와카를 지은 이야기-1

옛날 옛날에, 아리와라노 나리히라-중장이라고 하는 사람이 있었단다. 이름이 알려진 풍류객이었지. 그러면서 당신은 쓸데없는 사람으로 여기고 있어서, 미야코(수도)에서는 살지 안겠다는 마음을 가지고 동쪽으로 향했단다. 저쪽이라면 살 곳이 있을지도 모른다는 생각을 하면서. 지인 두명만 동행했는데, 아무도 길을 몰라서 헤매고 다녔단다.
그러다가 미카와-국 야츠하시(八橋)라는 곳에 당도했어. 그 곳을 야츠하시라고 하는 사연은 강물이 거미다리 처럼 여러 갈래로 갈려 있어서 다리가 여덟 개나 놓여 있기 때문이다. 일행은 그 강가의 나무 그늘에서 말린 밥으로 식사했단다. 강가에 제비붓꽃이 멋있게 피어 있는 것을 보고 따라온 사람들이 나리히라에게 말하기를,
“제비붓꽃이라는 넉자를 각 문구의 첫머리에 놓고 나그네길의 뜻을 와카로 표현하시게.”
이에 나리히라는 이렇게 와카를 지었단다.

일 고운 옷 단을 입던 내가 처럼 익숙하던 같은 아내 남겨 멀디 먼 길을 왔네

이 와카를 들은 사람들은 감동으로 울었단다. 말린 밥위로 눈물이 쏟아져서 밥이 불어났다고 해.

今は昔、在原業平中将という人がいたそうだ。世に知られた風流人だったとか。それなのに、自分は役立たずの人間だ、京にはいたくないと思ってあずま(東)の方へ向かったそうだ。あちらなら住む所があるかもしれないと思って。知人が二人だけ一緒に行ったのだけれど、誰も道がわからないものだから迷ってばかりの旅だったとか。
やがて参河の国の八橋という所までやってきた。そこを八橋というのは、川が蜘蛛の脚のように幾筋にも分かれていて橋が八つも架かっているからだ。川辺の木陰でかれいひ(乾飯)を食べたそうだ。川辺にかきつばたが風雅に咲いているのを見て、同行者たちが
「かきつばたという五文字を句の頭ごとに据えて、旅の心を和歌に詠め」と言った。
そこで業平は次のように和歌を詠んだそうだよ。

らごろも(唐衣)つつなれにしま(妻)しあればるばるきぬるび(旅)をしぞおもふ

これを聞いて同行者たちは感動して泣いたそうだ。かれいひ(米飯を乾したもの)の上に涙が落ちてふやけてしまったんだって。
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by nishinayuu | 2015-04-24 10:37 | 再話 | Trackback | Comments(1)

『蠅の乳搾り』(ラフィク・シャミ、訳:酒寄進一、西村書店)


c0077412_1052771.jpg『Der Fliegenmelker』(Rafik Schami, 1993)
作者は1946年にシリアのダマスカスで生まれた。1971年にドイツに移り、化学の博士号をとって研究所で働いていたが、82年からは作家活動に専念している。作品の一つ『空飛ぶ木』は本書と同じ酒寄進一の訳で同じ西村書店から出ている。2冊ともぱっと目を引く美しい装丁の本である。

舞台はダマスカスの旧市街で、語り手の目にする出来事と、70歳のサリムじいさんの昔語りが13のエピソードにまとめられている。街にはパン屋、ケバブ屋、八百屋、豆屋、床屋、電器屋、酒場などがひしめき、花売りや石工、毛皮職人などが動き回り、子どもたちも親を助けるために、あるいは小遣い稼ぎのために店の手伝いをしたり、物を売り歩いたりしている。街には外国人の観光客もやってくる。イスラム教徒とキリスト教徒が混在するこの街にはモスクもあれば教会もある。様々なことばを使う様々な人々が、ときにはいがみ合い、ときには意気投合しつつ暮らしているのだ。そんな街で、語り手の少年はサリムじいさんの昔語りを聞き、父親のパン屋を手伝い、飴売りの商売で稼ぎ、学校に通いながら友達とも存分に遊び、ダマスカスの一番美しい季節に美貌の人妻に恋をして大人になっていく。
笑える話もあれば笑えない話もあり、政治や宗教をおちょくる話もあれば、深く考えさせられる話もあって、そのどれもが味わい深い。おまけとしてアラビア語もかじれる。フルは空豆、ブクラは明日の意味だそうだ。(2015.1.30読了)
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by nishinayuu | 2015-04-20 10:06 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『愛のはじまるとき』(K.M.ペイトン、訳:石井清子、晶文社)


c0077412_1132671.jpg『Dear Fred』(K.M. Peyton, 1981)
これは一人の少女が競馬界の人たちとの関わりの中で大人になっていく姿を描いた作品である。13歳の少女ローラは、陳腐な芸術家の父や笑いを忘れた母のところにいるよりも、競馬馬を育てている叔父のハリーのそばにいるほうが楽しい。叔父といっしょに馬を走らせるのも大好きだ。そして「イングランド中の女たちの半数」が愛している天才ジョッキーのフレッド・アーチャーと結婚したいと思っている。フレッドはローラと顔を合わせればていねいに挨拶してくれるが、彼は誰に対しても礼儀正しい若者だった。ある日、浮浪児のような少年が転がり込んでくる。身元を明かさないので、ローラがタイガーと呼ぶことにしたこの少年は、ハリーの許に身を寄せることになる。やがてローラとタイガーは小さないさかいを繰り返しながらも急速に親しくなっていく。そしてある日、二人は偶然、叔父のハリーとローラの母の密会を目撃してしまう。そこにはローラの見たことのない笑顔を見せ、ローラの聞いたことのない声を上げる一人の女がいたのだった。

フレッド・アーチャーは1880年代に英国競馬界を湧かせた実在の天才ジョッキー。「その悲劇的生涯を下敷きに」と作品の紹介にあるうえ、作品の中でも早い段階で、予知能力を持つタイガーがフレッドを襲う悲劇を予知してしまう場面が出てくるので、そのあとの物語は推理小説のような緊迫感をもって展開していく。なお、作品の冒頭の献辞に「フレッド、ネリー・アーチャー夫妻のお孫さんたちへ」とあるので、注意深い読者ならローラの幼い恋の行方を前もって知ることができる(知らないほうが読む楽しみは大きいと思いますが)。

著者はキャスリーン・ペイトンといい、ペンネームのK.M. ペイトンは、キャスリーンのKと、美術家である夫マイケルのMをとったもの。初期に二人が合作していたことがあり、そのときのペンネームをそのまま使っているのだという。(2015.1.25読了)
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by nishinayuu | 2015-04-16 11:03 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

『リンバロストの乙女』(ジーン・ポーター、訳:村岡花子、河出書房新社)


c0077412_10544522.jpg『A girl of the Limberlost』(Gene Porter, 1909)
リンバロストというのはインディアナ州にある広大な湿原。本作品はそのリンバロストを舞台に、一人の少女が自分の道を切り開いていく過程を描いたもの。登場するのは本質的に善人ばかりで、はじめはひどい人物に見えても、それにはそれなりの理由があることが説明されており、きっかけさえあれば目覚めて改心できる人々ばかりである。主題は主人公の成長であるが、主人公を取り巻く少年少女や大人たちにも作者の温かい目が注がれており、この作品が家庭小説として広く読まれたというのも納得できる。
主要登場人物は以下の通り。
●エルノラ――実の母親から育児放棄・虐待されて育ったにもかかわらず、優しく賢くしかも美しい、完璧ともいえる少女。蛾の標本作りで町の高校に通う費用を作り、大学も目指す。
●ケート・コムストック――エルノラの母。夫の死とエルノラの誕生が同時に起こって以来、長い間心がねじれたままだったが、夫の死の真実を知って娘を愛し始める。
●ウェスレイ・シントントマギー・シントン――コムストック家の母娘を見守る隣人。
●ビリー――父親を亡くしたあとシントン夫妻に引き取られた少年。
●ピート・コーソン――エルノラの幼なじみ。悪い一味に入っているが、エルノラには優しい。
●鳥のおばさん――リンバロストの鳥や昆虫の研究者。ポーターがモデル。
●フィリップ・アモン――立派な家柄、立派な学歴、素晴らしい人柄の完璧ともいえる青年。
●エディス――フィリップの婚約者。エルノラに対抗心を燃やす。
●そばかす――同じ作者の『そばかす』の主人公。(何の説明もなくいきなり登場するので戸惑う。この作品には他にもそうした説明不足の言及があちこちに見られる。『そばかす』を先に読むべきでした。)

この作品で特筆すべきは、舞台となっているリンバロストの大自然――その美しさと恐ろしさ、そこに生きる動植物、特に主人公が愛して止まない蛾たちの生態が、驚くほど懇切丁寧に生き生きと描かれていることである。因みに作者のポーターはナチュラリストで、リンバロストの鳥類や昆虫の研究者だったという。だから作品には膨大な数の植物や昆虫の名が出てくるのだが、インターネットのない時代にそれらを一つ一つ調べあげるのはどんなに大変な作業だっただろう。村岡花子の偉大さをあらためて思い知った。(2015.1.20読了)
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by nishinayuu | 2015-04-12 11:00 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『白の闇』(ジョゼ・サラマーゴ、訳:雨沢泰、NHK出版)


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『Ensaio sobre a Cegueira』(José Saramago、1995)ある日、ある街の交差点で一台の車が立ち往生した。運転していた男が、突然「目が見えなくなった」のだ。この「最初に失明した男」に続いて次々と失明者が発生する。まずは「最初に失明した男」を家まで送り届けた「よきサマリア人」――実は相手の弱みにつけ込んで車泥棒に変じた男、「最初に失明した男」を診察した目医者、目医者の待合室に居合わせた斜視の少年、黒い眼帯の老人、黒いサングラスの若い娘が失明し、さらに彼らと接触した人々が次から次へと失明する。ミルク色の白い闇が目の前に広がるこの現象は瞬く間に広がり、行政当局はとりあえず患者たち、および患者と接触したため感染したと思われる人々を隔離することにした。急なことなのでとりあえず、かつては精神病院だった所に。ここまでが第一段階。
第二段階は隔離施設を舞台に、にわか失明者たちを襲ったおぞましい日々が描かれる。食糧と日用品を支給する当局側の混乱ぶりが失明者たちの生活を圧迫し、失明者の間に強者と弱者を生み出して、施設内は暴力的な無法地帯となっていく。しかしこの状況はある日、食糧と日常品の供給が絶たれ、見張りも姿を消したことで自然消滅する。隔離施設の外の世界も、急速に広がった「白の闇」に覆い尽くされてしまったのだった。
そして第三段階。隔離施設を後にしたあるグループのサヴァイヴァルの物語である。グループの構成員は目医者とその妻、最初に失明した男とその妻、斜視の少年、黒いサングラスの娘、黒い眼帯の老人の7人。実はこの中の一人がなぜか「白の闇」にとりつかれることなくずっと目が見えていて、隔離施設内でも施設から出た後も人々の目となってきたのだった。このグループの人々は絶望的状況の中でも理性を失わなかった特異な存在だが、それは彼らの中の一人が「見える人」であったこと、しかもこの「見える人」が非常に理性的で献身的な人物だったからである。
パンデミックの恐怖の世界を描きながら、その中に一筋の光となる人物を配したのは作者の優しさだろうか、あるいは祈りだろうか。この小説を着想したときサラマーゴは「目が見えることを前提として考えられ、作られた文明社会で、もし全員が失明したらどうなるだろうか? けれども、我々は実際にはみんな盲目ではないか!」と考えたという。すなわち『白の闇』は、「見えること」と「見えないこと」、さらには「見るということ」の意味を読者に問いかける作品である。

この作品は2008年に日本・ブラジル・カナダの合作で映画化されている。ストーリーは原作にかなり忠実だというが、映像化すると「見える人」の見た世界だけが強調され、「見えない人」の感覚は伝わらないのではないだろうか。また、最初に失明した男を伊勢谷友介、その妻を木村佳乃が演じているが、この小説世界に複数の人種を持ち込む必要があるだろうか。映像化も多人種の登場も、この作品の焦点をぼやけさせ、ただのパニック映画にしているのではないかと、見ていないまま、見る気もないまま、危ぶんでいる。2015.1.9読了)
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by nishinayuu | 2015-04-08 14:48 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

間違えやすい韓国語表現1

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韓国語講座で勉強したものに、関連表現、解説などを付け加えました。

틀리기 쉬운 한국어 표현1

天下り──낙하산. 「縁故入社」の意味も。
アメとムチ──당근과 채찍. 「ニンジンとムチ」なので相手は馬ですね。
暗証番号──비밀번호.
アンパンマン──호빵맨. 因みに붕어빵は「たいやき/うりふたつ」
行き先──행선지.
いじめ──왕따. 「なかまはずれ」の意。より直接的表現は집단 따돌림/집단 괴롭힘.
居眠り運転──졸음 운전. 飲酒運転は음주 운전.
右折/左折──우회전/좌회전. 漢字語の直訳では通じないとか。
似非──사이비. 似而非をそのまま読んだもの。
親知らず──사랑니. 因みに乳歯と八重歯はそれぞれ젖니,덧니.
貸し切りバス──전세버스.
花粉症──꽃가루 알레르기. これも漢字の直訳ではだめ。
暴力団の〇〇組──조직폭력단○○파.
座高──앉은 키. 因みに身長は키/기럭지(충청도 사투리).
差出人/受取人──보내는 사람/받는 사람.
だるまさんがころんだ──무궁화꽃이 피었습니다.
使い捨て──일회용.
点滴──링거. 因みに輸血は수혈.
生ゴミ──음식물 쓰레기. 因みに分別収集は분리수거.
有終の美を飾る──유종의 미를 거두다.
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by nishinayuu | 2015-04-04 14:15 | 覚え書き | Trackback | Comments(1)