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映画鑑賞ノート17 (2013.12.31作成)

c0077412_9412593.jpg2013年下半期に見た映画の覚え書きです。
1行目:タイトル(原題)制作年・制作国 監督(鑑賞日)2行目:キャスト 3行目:一言メモ
☆画像はニューイヤーズ・イヴです。


幻の光 1995日本 是枝裕和(7.8)
    江角マキコ、浅野忠信、内藤剛志、市田ひろみ、柄本明
    奥能登の海辺の光景を背景に、喪失からの再生を描いた秀作。
恋するシャンソン(On Connait la Chanson)1997仏・英・スイス 
    アラン・レネ(7.13)
    アニエス・ジャヴィ、サビーヌ・アゼマ、J・P・バクリ、A・デソリエ
    男が女声、女が男声で歌い出してびっくり。物語も人物もおしゃれ。
危険がいっぱい(Le Crime et Ses Plaisirs)1964フランス、ルネ・クレマン
    (7.17)
    アラン・ドロン、ジェーン・フォンダ、ローラ・オルブライト
    この男、捕まえたときが頂点で、あとは腐っていくだけでしょうに。
シークレット・サンシャイン(밀양)2007韓国 李滄東(7.19)
    チョン・ドヨン、ソン・ガンホ
    神が勝手に加害者を許していたとは!ヒロインが壊れるのは当然。
ダブリンの街角で(Once)2006アイルランド ジョン・カーニー(8.14)
    グレン・ハンサード、マルケタ・イルグロヴァ、ヒュー・ウォルシュ
    ストリートミュージシャンとチェコ系移民女性が音楽で心を通わせる。
ヴァイラス(Virus)1999アメリカ ジョン・ブルーノ(8.19)
    J・リー・カーティス、ジョアンナ・バクラ、D・サザーランド
    くだらないSFホラー映画。恐いというよりグロテスクなだけ。
すべて彼女のために(Pour Elle)2008フランス フレッド・カヴァイエ
    (8.21)
    ダイアン・クルーガー、ヴァンサン・ランドン、ランスロ・ロッシュ
    一途な男をつい応援してしまう。手段を選ばず、はどうかなあ。
愛するときに話すこと(사랑할 때 이야기하는 것들)2006韓国 
    ピョン・スンウク(8.23)
    ハン・ソッキュ、キム・ジス、イ・ハンウィ、チョン・ヘソン
    主役二人、演技はうまいし、いつまでも若いですねえ。
クロワッサンで朝食を(Une Estonienne a Paris)2012仏他 イルマル・ラーグ
    (8.29)
    ジャンヌ・モロー、ライネ・マギ、パトリック・ピノー
    モローのファッションが売り。3人が心を通わせていくすてきな物語。
レインメーカー(Rainmaker)1997アメリカ フランシス・コッポラ(9.4)
    M・デイモン、ダニー・デヴィート、M・ブレイス、クレア・デインズ
    新人弁護士が無資格だが有能な先輩と組んで悪徳保険会社と対決。
紅の豚 1992日本 宮崎駿 (9.6)
    (声)森山周一郎、加藤登紀子、岡村明美
    中年男性用アニメ。10カ国語の説明文、もっとゆっくり読ませてよ。
ジュリエットからの手紙(Letters to Juliet)2010アメリカ 
    ゲイリー・ウィニック(9.11)
    A・セイフライド、C・イーガン、ヴァネッサ・レッドグレイヴ
    ヴェローナにはジュリエット宛の手紙に返信する秘書が実在するとか。
ロッタちゃんと赤い自転車(Lotta å Bråkmakargatan)1992スウェーデン ヨハンナ・ハルド
    (9.13)
    グレテ・ハヴネショルド、B・イェールオース、M・ヴェイヴェルス
    演技ではなさそうなゴンタちゃんぶりが愉快。原作はリンドグレーン。
ロッタちゃんはじめてのお使い(Lotta flyttar hemifrån)1993スウェーデン ヨハンナ・ハルド
    (9.21)
    グレテ・ハヴネショルド、クラース・マルムベリィ
    少し成長したロッタちゃん、意外に幼い兄と姉、失敗続きのお父さん。
ペリカン文書(The Pelican Brief)1993アメリカ アラン・パクラ(9.21)
    ジュリア・ロバーツ、デンゼル・ワシントン、サム・シェパード
    グリシャム原作のせいか「依頼人」と結末の付け方が似ているような。
ブラス(Brassed Off)1996イギリス マーク・ハーマン(10.11)
    P・ポスルスウェイト,ユアン・マクレガー,ラタ・フィッツジェラルド
    アマ楽団がいきなり暗譜で「アランフェス協奏曲」を演奏できる!?
ジキル&ハイド(Jekyll & Hyde)1995アメリカ スティーヴン・フリアーズ
    (10.22)
    ジョン・マルコヴィッチ、ジュリア・ロバーツ、ジョージ・コール
    予想に違わず美しくも陰惨でグロテスク。さすがマルコヴィッチ。
ニューイヤーズ・イヴ(New Year’s Eve)2011アメリカ G・マーシャル
    (12.16)
    M・ファイファー,ザック・エフロン,リア・ミシェル,ボン・ジョヴィ
    一年の終わりに見るにふさわしい楽しいロマンティック・コメディ。
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by nishinayuu | 2014-01-31 09:54 | 映画・ドラマ | Trackback | Comments(0)

『明日死ぬかも知れない自分、そしてあなたたち』(山田詠美著、幻冬舎)


c0077412_1021267.jpg澄川家は、妻を病気で亡くした誠さんと、夫が別の女性のところに走った美加さん、という傷心の二人が出会って生まれた。長男の澄生と長女の真澄は美加さんの連れ子で、次男の創太は誠さんの連れ子、次女の千絵は誠さんと美加さんの子ども、というちょっと変わった構成になっている。だから澄川家ははじめから非常に微妙なバランスの上に成り立っていたのだが、美加にとって特別な存在だった澄生が17歳のときに雷に打たれて死んだことから美加の崩壊が始まり、家族の平穏な生活も終わる。しかし母親の崩壊という一大事がかえって家族を崩壊から免れさせ、やがては再生へと導いていく。
本書はその家族の歴史を「私」「おれ」「あたし」そして「皆」という四つの章に分けて家族の一人一人に語らせる、という構成になっている。「私」は澄生の2歳下で冷静沈着なしっかり者の真澄、「おれ」は四人兄弟の「中間の子」である上、母親が中心の家庭の中で一人だけ母親と血が繋がっていない、という二つの不利な状況の中で奮闘してきた創太、「あたし」は末っ子でしかも両親の血を引く唯一の子どもという好条件のもとで自由気ままに育った千絵であるが、さて「皆」は?

美加は美しく優しい母親の姿をしていながら澄生への偏愛を正当化してしまう、いわば自己中心的欠陥人間として描かれている。それに対して誠さんは実によくできた夫であり、父親としても申し分ない。そして澄生はあり得ないほど完璧な兄であり、創太はほんとうに素直でいじらしい男の子だ。作者の目は、女性に厳しく男性に優しい、と言えよう。(2013.11.3読了)
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by nishinayuu | 2014-01-27 10:02 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『暗い絵』(野間宏著、筑摩現代文学大系)


c0077412_9484796.jpg表題にある「暗い絵」というのはブリューゲルの一連の絵を指しており、冒頭にはこのブリューゲルの絵の描写が延々と綴られている。

草もなく木もなく実りもなく吹きすさぶ雪風が荒涼として吹きすぎる。はるか高い丘のあたりは雲に隠れた黒い日に焦げ、暗く輝く地平線をつけた大地のところどころに黒い漏斗形の穴がぽつりぽつりと開いているその穴の口のあたりは生命の過度に充ちた唇のような光沢を放ち堆い土饅頭の真ん中に開いているその穴が、繰り返される、鈍重で淫らな感触を待ち受けて、まるで軟体動物に属する生き物のようにいくつも大地に口を開けている。(中略)またこちらには、爬虫類のような尾をつけた人間が股を広げて腰を下ろし尖った口の中から汚れた唾液をはきかけている。その股の間には、やはりあの大地に開いていると同じ漏斗形の穴がぽかりと開いていて(その尾のある人間は)自分の生活を苦しみという言葉で表情する術さえ知らぬ無表情なそげた顔をして、自分の股の間に開いているあの暗い穴をじっと見つめている。(後略)

主人公の深見進介はこの絵に、貧困に対する痛烈な憤怒、無知と愚昧と冷酷に対する反抗と、民衆への強い執着を見た。ブリューゲルの画集はもともと友人の永杉英作のものだった。京都の大学に在学中、深見進介は永杉の下宿でときたま、数人の友人たちといっしょにこの画集を眺めた。それはシナ事変の勃発前後の、彼らの強烈な精神が日々に光を放ち、自己嫌悪と傲慢が奇妙に混合した日々だった。その友人たちは戦争が信仰するにつれて、あるいは民間の刑務所に繋がれ、あるいは郡の監獄に入れられて獄死した。永杉から画集を借りだして以来、深山はしじゅうこの画集を手元に置いていたが、学校生活を終え、社会に出るようになってからは、頑なに誰ひとりとしてこの画集を見せようと思う人間には出会わなかったのだった。

一つの時代の雰囲気とその時代を生きる青年の心をブリューゲルの絵に托して描いた、陰湿さと暗さの中に自恃によるある種の明るさがほの見える作品である。(2013.10.30読了)
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by nishinayuu | 2014-01-23 09:49 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

『湿地』(アーナルデュル・インドリダソン著、柳沢由美子訳、東京創元社)


c0077412_10135020.jpg『MÝRIN』(Arnaldeur Indridason, 2000)
物語の舞台は例年にない長雨に見舞われている2001年10月のレイキャヴィク。ノルデュルミリ(北の湿地)と呼ばれる住宅街にある半地下のアパートで、老人の死体が発見され、ベテラン捜査官のエーレンデュルが駆けつけて捜査を開始する。被害者に招き入れられた人物が突発的に被害者を殺して逃走したように見える現場の状況から、事件は一見「典型的アイスランドの殺人(汚くて無意味で、足跡や証拠を隠すこともしない不器用な殺人)」のように見えた。しかし、死体の上に置かれていた「おれはあいつだ」という不可解なメッセージを解明しようと粘り強い捜査を続けるうちに、被害者ホルベルクの忌まわしい人物像とそれに巻き込まれた痛ましい人びとの姿が徐々に立ち現れてくる。
エーレンデュルが頭を整理するために娘に語る、という形で捜査の経緯と現状が羅列された箇所を引用しておく。

死体の発見、アパートの臭い、意味不明の走り書き、引き出しの奥から発見された写真、パソコンに満載されたポルノ、墓石に刻まれた言葉、コルブルン(故人)と姉のエーリン、ウィドル(コルブルンの娘)と謎の死因、いつも見る夢、刑務所のエットリデ、グレータルの失踪、マリオン・ブリーム、もう一つのレイプの可能性、エーリンの家の窓の外に立った男、もしかするとホルベルクの息子かも知れない。

暗くてじめじめしていて忌まわしい物語であるが、エーレンデュルという人物の魅力が救いとなっている。文体もミステリーとしては破格的に読みやすい。これは解説者(川出正樹)によると「作者がサガの伝統に則り、くだくだしく細部を描写することなく簡潔な文章を連ねて、テンポよく物語を展開しているため」だという。納得。
またこの作品は2006年に映画化されていて、アイスランドの荒涼とした自然美を背景に、枝葉を切り落とし、大胆にアレンジしつつも原作の魅力を十二分に引き出した見応えのある作品になっているという。しかも、東欧最大級のフィルム・フェスティバルであるチェコのカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭でグランプリを受賞しているという。なるほど、なるほど。それでもやはりこの作品は映像では見たくない。(2013.10.27読了)
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by nishinayuu | 2014-01-20 10:14 | 読書ノート | Trackback | Comments(2)

『北風の吹く夜には』(ダニエル・グラッタウアー著、若松宣子訳、三修社)


c0077412_20463472.jpg『Gut gegen Nordwind』(Daniel Glattauer)
エミ・ロートナーは「購読中止のお願い」のメールを雑誌社ライクに送った。返信がないので18日後に再度メールしたが、それにも返事がないので33日後に「今後、お支払いはいっさいしません!」という怒りのメールを送る。すると8分後にアドレスが違います、というメールが来る。エミ・ロートナーはwoerter@like.comにメールしたつもりだったが、likeと打つべきところをleikeと打っていたのだ。彼女のそそっかしさと不注意はここで終わらず、さらに2回、ライケ氏に迷惑なメールを送ってしまう。こんなことがきっかけで、エミ・ロートナーという「幸せな結婚をしている」女性と、レオ・ライケという「失恋したばかりで、ユーモアの足りない教授タイプの」男性との間で、メール交換が始まり、その頻度も内容もどんどんエスカレートしていく。
全編がメールだけで成り立っている斬新な小説で、ドイツ書籍賞にノミネートされたり、amazon.deの2009年の年間ベスト1になったりした人気作だという。主人公の女性に共感できれば楽しく読めるかも知れないが、そうでない場合は主人公の節度のなさとメールの連なりという形式にうんざりするに違いない。

☆オーストラリアの作家、コリーン・マッカラの1977年のベストセラー『Thorn Birds』への言及がある。いい小説だったという記憶があるだけで、内容はすっかり忘れてしまったので、いつかまた読み直してみたい。(2013.10.24読了)
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by nishinayuu | 2014-01-15 20:44 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

私の10冊(2013年)


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☆この1年に読んだ本の中から特に気に入った本を選んで、「私の10冊」としてまとめました。また、「私の10冊」の選から漏れた本を「お勧めの20冊」として挙げました。
☆画像は『アントーノフカ』の表紙です。



私の10冊
荷車のペラジー(アントニー・マイエ、訳:大矢タカヤス、彩流社)
さびしい宝石(パトリック・モディアノ、訳:白井成雄、作品社)
奇跡も語る者がいなければ(ジョン・マクレガー、訳:真野泰、新潮クレストブックス)
昼の家、夜の家(オルガ・トカルチュク、訳:小椋彩、白水社)
Prelude(Katherine Mansfield、Constable)
サラの鍵(タチアナ・ド・ロネ、訳:高見浩、新潮クレストブックス)
アントーノフカ(イワン・アレクセーヴィチ・ブーニン、訳:町田清朗、未知谷)
スペインのある農夫へのレクイエム(ラモン・センデール、訳:浜田滋郎、西和書林)
コウモリの見た夢(モーシン・ハミッド、訳:川上純子、武田ランダムハウス)
イーサン・フローム(イーディス・ウォートン、訳:宮本陽吉他、荒地出版社)

お勧めの20冊
The Star Child(Oscar Wilde、Bodley Head)
思い出はそれだけで愛おしい(ダーチャ・マライーニ、訳:中山悦子、中央公論新社)
ティンカーズ(ポール・ハーディング、訳:小竹由美子、白水社)
City(アレッサンドロ・バリッコ、訳:草皆伸子、早川書房)
失われた時のカフェで(パトリック・モディアノ、訳:平中悠一、作品社)
リンさんの小さな子(フィリップ・クローデル、訳:高橋啓、みすず書房)
太陽通り(トーマス・ブルスィヒ、訳:浅井晶子、三修社)
灯台守の話(ジャネット・ウィンターソン、訳:岸本佐知子、白水社)
海にはワニがいる(ファビオ・ジェーダ、訳:飯田亮介、早川書房)
灰色の魂(フィリップ・クローデル、訳:高橋啓、みすず書房)
野いばら(梶村啓二、日本経済新聞)
永遠の0(百田尚樹、講談社)
女が嘘をつくとき(リュドミラ・ウリツカヤ、訳:沼野恭子、新潮クレストブックス)
厳重に監視された列車(ボフミル・フラバル、訳:飯島周、松籟社)
나의 문화유산답사기7(유홍준、창비)
湿地(アーナルデュル・インドリダソン、訳:柳沢由美子、東京創元社)
真昼の女(ユリア・フランク、訳:浅井晶子、河出書房新社)
マグノリアの眠り(エヴァ・バロンスキー、訳:松永美穂、岩波書店)
殺人者の健康法(アメリー・ノートン、訳:柴田都志子、文藝春秋社)
週末(ベルンハルト・シュリンク、訳:藤田真利子、作品社)
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by nishinayuu | 2014-01-11 10:02 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『最後に二人で泥棒を』(E.W.ホーナング著、藤松忠夫訳、論創社)


c0077412_9292466.jpg『A Thief in the Night』(Hornung, 1905)
本書は、クリケットの名選手として活躍する一方で、泥棒稼業もスポーツのように楽しんでいる泥棒紳士と相棒の活躍を描いた3冊のうちの3冊目。1冊目の『二人で泥棒を』、2冊目の『またまた二人で泥棒を』も同じ出版社から翻訳が出ている。
主人公のラッフルズと相棒のバニーは第2冊の最終話でともに第二次ボーア戦争に従軍している。本書は戦場から帰還したバニーが行方不明のラッフルズの思い出を語る、という形になっていて、バニーの観点から見た事件の記録といえる。全部で10のエピソードは殺人や恐怖とは無縁であり、盗みの手口や事件の顛末についてのこと細かな説明よりも、むしろ20世紀初めのロンドンの雰囲気や、ラッフルズとバニーの関係を伝えることに重点が置かれているようである。また二人の関係は、年配の紳士同士だったホームズとワトソンの関係とは大分趣が違っている。年齢のせいか、インドア派とアウトドア派の違いか、とにかくこちらの二人の方がやけに明るくて軽いのだ。それにバニーは、名目上は相棒だが内実は手先というか子分のような存在で(第6話)、ラッフルズの援助がないと暮らしていけないのだという。
ところで、全体の中では些細な部分なのだが終始気になったのは、バニーがやたらにラッフルズと腕を組みたがることと、ラッフルズの方も進んでバニーと腕を組むことだ。「彼が腕を組んでくれないので、ぼくは彼の袖をつかまなくてはならなかった(第1話)」「われわれは腕を取り合ってそこを退去した。でもラッフルズが僕の腕に自分の腕を絡めてきたので、…(第1話)」「(ラッフルズがバニーに)腕を取ってくれたらどうかね。見かけほど汚くはないんだよ(第3話)」「彼は目的地に到達するずっと手前の公道で僕を待っていてくれた。二人は腕を組んで歩いた(第8話)」などなど。当時は男と男が腕を組むのは普通のことだったのだろうか。

巻末の解説によると、作者のアーネスト・ホーナング(1866~1921)は1893年にコナン・ドイルの妹コンスタンスと結婚している。ドイルは妹とその夫の生活を温かく見守るとともに、「犯罪者を主人公にすべきではない」とホーナングに忠告したという。その忠告をホーナングが聞き入れていたら、我々はこの作品に出会えなかったということだろうか。(2013.10.20読了)
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by nishinayuu | 2014-01-07 09:29 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『나의 문화유산답사기 7』(유홍준, 창비)

c0077412_10214551.jpg『私の文化遺産踏査記 7』(兪弘濬著、創作と批評社)
本書は「人間と芸術と歴史が一つになった紀行文学の白眉」と謳うシリーズの第7巻目で、踏査地は済州島。シリーズ最高の460ページという大部の巻である。
主要テーマの一つは火山島である済州島の、本土(韓国語では陸地という語が使われている)とは大きく異なる自然の驚異と美しさである。この美しい島で暮らす人々が受け継いできた独特の習俗、この島ならではの暮らしも詳しく紹介されていて興味深い。世界文化遺産登録を目指している海女の文化や、蒙古馬系の小型馬を飼育する馬牧場などが取り上げられている。
もう一つの大きなテーマは絶海の孤島である済州島の歴史である。古くは失脚した官僚たちが配流されてきた地であり、長崎に向かっていた東インド会社の船が台風に遭って漂着した地でもあった。そして近年は日本軍の前線基地として利用され、また朝鮮戦争の際は北のシンパや内通者という名目で、無差別大量殺戮が行われた4・3事件の現場となった。この4・3事件について著者は次のように述べている。

この悲劇的事実を知らずには済州島と済州の人々を理解することはできない。壬辰倭乱、3・1運動は当時の人々がみんな亡くなっているので歴史的距離を置いて語ることができるが、4・3事件は目撃者、犠牲者の家族、それによってもたらされた憤懣やるかたない苦痛などが依然としてそのまま残っており、過ぎ去った歴史の話にはなり得ない。

長い間軍事政権が隠蔽し、被害者たちも弾圧や殺害を怖れて口を閉ざしてきたこの事件が広く知られるきっかけを作ったのは、玄基栄の小説『順伊おばさん』(軍事政権下の1979年に出版)である。日本語版は金石範の訳で新幹社から出ている。関連図書として金石範の『火山島』もあげておく。(2013.10.18読了)
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by nishinayuu | 2014-01-03 10:22 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)