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『凱旋門』(E.M.レマルク著、山西英一郎訳、新潮社)


c0077412_8545192.jpgこの作品は生涯で7つの長編しか書いていない寡作の大作家・レマルクの第5作で、発表は1946年。「女は、斜いに、ラヴィックの方へ近づいてきた。早足にあるいていたが、妙なふうによろめいていた。ラヴィックは、女がすぐそばまでやってきたとき、はじめて女に気づいた。見ると、頬骨の高い、目と目の間の広い、蒼ざめた顔をしていた」という印象的な文で始まり、「トラックはワグラム通りを走って、エトワールの広場へ抜けた。どこにも灯りはなかった。広場は黒闇々としていた。あんまり暗くて、凱旋門さえ見えなかった」という暗示的な文で終わっている。
第2次世界大戦勃発前夜のパリには、ナチスの弾圧から辛うじて逃れてきた旅券を持たない人びとが吹き寄せられていた。ベルリンの有名病院で外科部長をしていたラヴィックもそのひとりで、裕福で無能な病院長に代わって患者が麻酔で眠っている間に手術をすませ、わずかな報酬を受け取っている。同じ運命の避難民たちと安ホテルに身を潜ませ、「生きのびることがすべて」という生活をしている彼の望みはただ一つ、かつて彼と愛人のシビルを拷問し、シビルを虐殺したゲシュタポのハーケに復讐することである。
そんなラヴィックが冒頭の文にあるような出会いをした女・ジョアンを愛するようになる。何もかも失い、明日への希望もない男に訪れた「輝かしい春」である。しかしラヴィックが、ある事故がもとで国外追放になって3ヶ月後にパリに戻ったとき、ジョアンは他の男の世話になっていた。ジョアンはラヴィックを愛しながらもその愛を貫くことができない、精神的に脆い女だったのだ。
このあと物語は、ラヴィックが長い間探し求めていたハーケがパリに姿を現したことから物語は緊迫した復讐劇に転じ、さらにジョアンとの思いがけない別れへと展開していき、ラヴィックが大勢の避難民たちと共にパリ警察のトラックでパリから連れ出されるところで終わる。(2011.3.29読了)

☆10年ほど前パリに行ったとき、ラヴィックとジョアンが出会ったアルマ橋を「はすかいに」歩いてみました。すると、向かい側から歩いてきたラヴィックの年頃の男性が、にこにこと嬉しそうな顔でこちらを見ながら通っていったのでした。あの男性もきっと『凱旋門』の愛読者だったのでしょう。
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by nishinayuu | 2011-06-28 08:55 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『住んでみた-2』(東海林克範著、app store)


c0077412_1048223.jpg電子書籍として出版・販売されている本。定価は120円くらい(記憶があいまい)で、もちろん書店にはない。
「国民の幸福度ランキング」というのがあって、調査の趣旨や調査年度によってランキングはまちまちであるが、ある調査によるとトップがデンマーク、2位がフィンランドで、日本は82位だという。なぜそうなのかを追究するために著者が「住んでみた」のがまず「幸福度第1位」のデンマーク、それから「幸福度第2位」のフィンランドで、それぞれの滞在記録が『住んでみた-1』、『住んでみた-2』として発表されている。
さて、『住んでみた-2』は、住んでみたというにはあまりに短い滞在ではあるが、エスペランティストのネットワークを利用して現地の普通の人の家にホームステイしたり、留学中の日本人女性と会って「本格的な滞在経験」を聞いたりして、滞在期間の短さを密度の濃さでカバーしている。また、各種のデータや写真がふんだんに使われており、ただの旅行記とは一線を画している。そしてなんと言ってもこの本のいちばんの強みは、寒い国に寒い時期に滞在した、ということで、壮健で行動力のある著者だからこそなしえたことであろう。
「ノキア」や「サンタクロース」の国であり、映画『カモメ食堂』の国であるフィンランドが、国民の幸福度が高い国でもあるのはすばらしいことだ。ここでは言及されていないが、情感あふれるヴァイオリン・コンチェルトのシベリウス、『ムーミン』のトーベ・ヤンソン、映画『過去のない男』のアキ・カウリスマキのファンとしては、それだけで幸せな気分になってしまう。(2011.3.26読了)
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by nishinayuu | 2011-06-25 10:50 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『続あしながおじさん』(ウエブスター著、松本恵子訳、新潮社)


c0077412_10224474.jpg『あしながおじさん』(原題はDaddy Long Legs)の続編で、こちらの原題はDear Enemy。『あしながおじさん』の読者たちからの強い要望にこたえて書いたものだという。
この作品の主人公は前作の主人公・ジュディの大学時代の親友であるサリー・マックブライド。ジュディが大富豪の夫から贈られた膨大な資金で自分の育った孤児院を改造することになって白羽の矢を立てたのが、裕福な家の令嬢で、暇がたっぷりあるサリーだった。暗くて非衛生的な孤児院と生気のない孤児たちを目にして愕然としたサリーは、明るくて楽しい孤児院を目指して戦闘を開始する。そして毎日の出来事をスポンサーであるジュディに書き送る。すなわちこの作品も前作と同じく書簡集の形を取っているが、前作が涙と笑いの書簡集であるとすれば、こちらは義憤と笑いの書簡集である。
タイトルのDear Enemyは孤児院のかかりつけのドクターに手紙を書くときにサリーが使っていることば。サリーによれば「いつも悲観的で、過敏症で、沈んでいる」このスコットランド人のドクターは、孤児院の院長としては未熟なサリーを教育するために、読むべき本を与えてはきちんと読んだかどうかテストしたりする、サリーにとっては煙たい存在である。孤児院の運営や孤児の扱いについてもサリーと意見が合わないと何日も口をきかないような、気むずかしくて頑固なドクターは、サリーにとってはまさにenemyのような存在だった。ユーモア感覚のあるサリーは、そんなドクターをからかってdear enemyと呼んだわけだが、ドクターといっしょに奮闘するうちにenemyがほんとうにdear な存在になっていく。はじめから結末が想像できるようなタイトルであるが、さまざまな障害や紆余曲折を経てやっと到達した境地として描かれているので、予想通りの結末ではあっても納得できる。(2011.3.21読了)
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by nishinayuu | 2011-06-22 10:22 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『Trouble Is My Business』(Raymond Chandler 著、Penguin)

c0077412_10585598.jpgタイトルとなっているこのあまりにも有名なことばは、私立探偵のジョン・ダルマスが仕事の仲介者であるアンナ・ホールスィのYou might get into troubleということばに応えて言ったもので、上記の本では2ページ目に登場する。トラブルに巻き込まれるかもしれない、と言うアンナに、「トラブルがおれの商売だぜ」、とカッコヨク応えたわけで、清水俊二訳では「怖じけづいてちゃ商売にならない」、稲葉明雄訳では「事件屋稼業」と、やはりカッコヨク訳されている。
さて、仕事に取りかかってみると、ダルマスは行く先々で死体に遭遇する。最初の死体はジーターに雇われていた調査員アーボウガスト、次は二人組の殺し屋の片割れフリスキー・Lavon(読み方がわかりません-汗)、そしてジーターの息子のジェラルド、という具合。だからダルマスは、上記のような粋がった台詞を吐いたわけではなく、「俺っていつもトラブルに巻き込まれちゃうんだよね」と言ったのではないかと思えてくる。因みにジーターというのは息子が付き合っているハリエット・ハントレスに関する調査をアンナに依頼した人物。登場人物は以上の他に、ハリエットの後見人である有力者マーティ・エステル、ジーターの運転手ジョージ、ハリエットの住むエル・ミラノの管理人(?)ミスター・グレゴリー、そして主要人物ではないが絵になりそうな人物としてvery Englishなジーター家の執事などである。
ところで、この名台詞を吐いた人物はマーロウだと記憶していたのに、ダルマスとなっていて、おや、と思った。ウエブで調べてみたところ、チャンドラーの多くの作品において、発表当時カーマディやダルマスなどの名を持っていた主人公もしくは語り手が、後にマーロウに統一されていったらしい。したがって日本語訳もダルマス(清水俊二訳)とマーロウ(稲葉明雄訳)が混在しているという。(2011.3.18読了)
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by nishinayuu | 2011-06-19 10:59 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

韓訳詩 「わたしが束ねた花々」


c0077412_1263032.jpg☆フランスの詩人ピエール・ロンサールの詩の韓訳を紹介します。韓訳(カン・ジンジュ)、韓国語からの和訳(nishinayuu)の順に並べ、最後に原詩を添えました。
画像はブロア城にあるロンサール像です。



내가 만든 꽃다발 삐에르 드 롱사드/강진주

활짝 핀 꽃을 꺾어서 꽃다발을 바칩니다
이 저녁 꺾지 않으면 내일이면 시들 이 꽃들을
그대는 이걸 보고 느끼겠지요
아름다움은 머지않아 모두 시들고
꽃과 같이 순간에 죽으리라고

그대여
세월은 갑니다. 세월은 갑니다
아니 세월이 아니라 우리가 갑니다
그리고 곧 묘비 아래 눕습니다
우리 속삭이는 사랑도 죽은 뒤에는
아무 것도 아니랍니다.

나에게 사랑을 주세요
그대 살아있는 아름다운 동안


わたしが束ねた花々

ふわりと咲いた花手折り 花束にして捧げます
今宵折らねばあしたには 萎れてしまうこの花を
この花見れば わかるでしょう
美というものは遠からず みんな萎れて行くことを
花と同じくひとときで 命が尽きてしまうのを

月日は過ぎて行くのです 月日は過ぎて行くのです
いえ、月日ではありません 過ぎていくのはわたしたち
やがてだれもが 墓石の下にその身を横たえる
愛を囁き交わしても 死んだあとではそんなもの
どうってことはないそうな 

だからわたしを愛して欲しい
あなたがここで輝いている 美しい日の尽きぬ間に

原詩はここ
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by nishinayuu | 2011-06-17 12:12 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)

『勝負の終わり』(サミュエル・ベケット著、安堂信也・高橋康也共訳、白水社)


c0077412_1030962.jpg舞台劇用のシナリオ。1957年4月1日、ロンドンのロイヤル・コート劇場においてフランス語で初演され、フランスでは同年4月26日、パリのステュディオ・デ・シャンゼリゼで初演されている。原題はFine de partie(フランス語)、Endgame(英語)で、チェスの「最後の詰め」という意味である。
登場人物はハム、クロヴ、ナッグ、ネルの四人だけ。灰色がかった光に浮かんだ家具のない室内には窓が二つとドア。部屋の中央にハムの乗った車いすがある。ハムは車いすに座ったままで立てないし、目も見えない。身の回りのすべてのことをクロヴに世話してもらっている。クロヴはごく小さいときからハムに育てられたらしく、ハムの世話をすることしか知らない。クロヴは脚立に乗って窓から外を眺め、ハムに報告する。窓の一つからは陸地が、もう一つからは海が見えるが、生き物は見えない(どうやら世界は滅亡したらしい)。壁際には二つのドラム缶があり、それぞれにナッグとネルが入っている。ナッグはハムの父親でネルはそのパートナーらしいが、ネルがハムの母親かどうかは不明。この二人もハムもクロヴも、それぞれがただ終わりを待っているだけなのだが、なかなかお終いの時はやって来ない。しかしある日、窓外の遠いところに子ども(未来の生殖係)の姿を見つけたクロヴはこの部屋から出て行くことを決心する。ハムは「勝負の終わり」を受け入れて、自らハンカチを顔に被せる。
これを実際の舞台で見るのは相当につらいのではないだろうか。場面は薄暗い室内、人物は四人だけで、しかも動き回るのはクロヴひとりだけ。彼らが一つの部屋に閉じこめられているいきさつも、クロヴが出て行けない理由もはっきりしない。なんの説明もなく、想像力を働かせる余地もない。それに、登場人物たちが暴君、奴隷、半死状態のいずれかなので、『ゴドーを待ちながら』に見られる滑稽味もない。訳者の解説によると衒学的な引用にあふれているということだが、思わず拍手したくなるような名台詞が出てくるわけでもない。初演のロンドンでもパリでも、『ゴドーを待ちながら』ほどには受けなかった、というのもうなずける。(2011.3.15読了)
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by nishinayuu | 2011-06-13 10:31 | 読書ノート | Trackback | Comments(2)

『すべて倒れんとする者』(サミュエル・ベケット著、安堂信也・高橋康也共訳、白水社)


c0077412_8405597.jpgこの作品はベケットがBBCから委嘱されたラジオ放送劇で、1957年1月13日に放送されたという。
ラジオ劇だけあって、全編に音があふれている。まず「田舎らしい数々の音」の中で主役のルーニー夫人が「足を引きずる音」をたてながら登場し、『死と乙女』の旋律がかすかに流れてきたところで歩みを緩めて立ち止まる、という具合。聞こえてくる音を列挙してみると以下のようになる。
乗り物関係――荷馬車の音とそれを引く騾馬の声、自転車(ベルの音)、自動車(エンジン音、ブレーキの音、アクセルを踏む音、警笛、ドアの開閉音、ギア・チェンジの音)、郵便列車の通過する音、下り列車の音、車掌の笛
音楽――シューベルトの『死と乙女』、賛美歌『常世の岩』(「主よ身許に近づかん」)
人間の立てる音――歩く音、虻を叩く音、車の乗り降りの際にもがく音、階段を上り下りする音、杖の音、鼻をかむ音、笑い声、ため息、あえぎ、叫び声、ののしり声、子どもたちの声
自然界の音――動物の声(車にひかれた鶏の声、牛の声、羊の声、犬の吠える声、鶏の声、驢馬のいななき、鳥のさえずり)、風の音、雨の音
もちろんこれらは背景の音であって、その前で人間たちのおしゃべりが盛大に繰り広げられている。
ストーリーは、ふとっちょでおしゃべりの老女・ルーニー夫人が、夫を迎えに駅まで歩いて行き、下り列車で勤めから帰ってきた夫と二人で家路をたどる、というもの。往路は足の悪いルーニー夫人が難儀しながらも、出逢う人をことごとく会話に引き込んでしゃべりまくるので、陽気で滑稽味のある雰囲気の中で進行する。一方、復路は目が見えないせいか気むずかしくて理屈っぽいルーニー氏が会話を主導し、おまけに風が出て雨まで降ってくるので、陰湿で不気味な雰囲気が漂う。翌日の説教の題目が「エホバはすべて倒れんとする者を支え、かがむ者を直(なお)く立たしめたまう」(詩篇145-14)だという話題で二人はげらげら笑うが、もちろん楽しくて笑ったわけではない。そこへジェリー少年が落とし物を届けに走ってくる。ルーニー氏が「呪われた宿命を蕾のうちに摘みとってしまう」ために殺そうと思ったことが何度もある、というそのジェリーがルーニー氏に渡したのは小さなボールだった。いぶかしがるルーニー夫人に、ルーニー氏は「いつも持ち歩いているものだ」とだけ言って、それ以上は何も説明しない。このあと、ジェリーの話からルーニー氏の乗った列車が15分も遅れたのは、子どもが列車から落ちて轢かれたからだということがわかる。
小さなボールと轢かれた子どもとは、何か関係があるのだろうか……という謎を残したまま、今や嵐のようになった風と雨の中でドラマは終わる。(2011.3.14読了)
☆画像はモンパルナスにあるベケットの墓地です。
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by nishinayuu | 2011-06-10 08:42 | 読書ノート | Trackback | Comments(3)

『利休にたずねよ』(山本兼一著、PHP)


c0077412_0165465.jpg読書会「かんあおい」2011年4月の課題図書。
24の章からなるこの作品は、第1章が天正19(1591)年2月28日の利休切腹の日に当てられ、章を追うごとに過去に遡っていって23章に至ると、最終章でまた第1章と同じ日に戻る、というユニークな構成になっている。また、第1章は利休、第2章は秀吉、第3章は細川忠興、という具合に各章がそれぞれ特定の人物の視点から語られる形になっていて、各章の題目の下にその人物の名前が掲げられ、その横に時(年号、日付、時刻など)と場所(地名、建物名など)とともに、切腹の何日、何年前かが記されている。いずれも読み手の興味をかき立てる(とともに、読み手の混乱を防ぐ?)ための心憎い仕掛けである。
秀吉が利休に切腹を命じた理由については諸説あるが、この作品では「茶道に関する考え方で二人が対立した」という点に重点が置かれている。豪華で華やかなものを好む秀吉は、利休の美意識に一目置きながらも、利休の茶を「どうにもせせこましく、いじましゅうていかん」と思う。一方の利休は、鋭利な美意識をもち、それを見せるも隠すも自在な秀吉を、さすがに天下人になる人物は違う、と感じ入りながらも、美を見極める目は自分こそが天下一であると思う。それでも本能寺の変のあと数年間は、秀吉は利休の茶道を利用して自分の威信を高め、利休は秀吉の威信を利用して自分の茶道を発展させる、という持ちつ持たれつの関係が続いたのだった。
二人の男の心がすれ違っていくきっかけとして語られるのが、利休の若き日の恋の形見である緑釉の香合。捕らわれの身の高麗の娘に恋した与四郎(若き日の利休)は、いっしょに高麗に逃れようとするが、追い詰められて心中を図る。結局女だけが死に、死に損なった与四郎の手許に緑釉の香合が残される。利休は高麗の娘の思い出が詰まったその香合を堅く守り、秀吉の執拗な所望も拒絶する。そんな香合を、利休の死を見届けたあとで妻の宗恩が、庭の石灯籠に投げつけて粉々に砕く。というわけで、フィクションの部分は見事に完結する。緑釉の香合が今に伝わっていないのは宗恩が砕いてしまったから、というわけである。
(2011.3.10読了)

☆利休が従来の四畳半だった茶室をどんどん狭くしていって、三畳や二畳、果ては一畳と四分の三の茶室を作ったというくだりでは、津川雅彦が扮した秀吉が「利休よ、この部屋狭すぎないか(もっとくだけた言い方でしたが)」という大東建託のCMがちらついて困りました。
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by nishinayuu | 2011-06-07 00:17 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『スリッピングダウン・ライフ』(アン・タイラー著、中野恵津子訳、文藝春秋)


c0077412_027111.jpg4冊目のアン・タイラー。1970年に発表された、3冊目の長編小説である。
アン・タイラーの主人公はちょっと風変わりな人間が多いが、この作品の主人公もやはり風変わりな女の子である。名前はエヴィー・デッカー。「ずんぐりと横に広い体型」で、顔も美人とはほど遠く、親友のヴァイオレットを除けば友だちは一人もいない、という17歳の高校生だ。この小太りのエヴィーがある日、大太りのヴァイオレットに誘われて街のロック・コンサートに行って、バートラム・ケイシー、通称ドラムというギタリスト兼ヴォーカルのロッカーに出会う。ドラムに魅せられたエヴィーは、彼の注意を引くために爪切りバサミを使って「ケイシー」という文字を自分の額に刻みつける。血だらけになってトイレから出てきたエヴィーは、もちろんみんなの注目の的になり、マスコミにも取り上げられる。これをきっかけにエヴィーは、ケイシーの音楽活動を宣伝する役回りを担うことになり、紆余曲折を経てついにはケイシーと結婚するのだが……。
家でだらだらと過ごしていたと思ったら、いきなり突飛な行動にはしり、それがどんどんエスカレートしていくエヴィー、そんなエヴィーのよき理解者でいつもそばにいるヴァイオレット、エヴィーに振り回されるのを負担に思っているうちにエヴィーを頼りにするようになっていくドラム、エヴィーがどんなに突飛なことをしても受け入れようとするひたすら優しい父親。みんな相当に風変わりだけれども、どこにでもいそうな感じの登場人物たちなのだ。母親は知らずに育ったが、おっとりした高校教師の父親と静かに暮らしてきた成績のよい高校生(と、後半になって一言言及されている)エヴィーが、ロック・コンサートに出かけてから一年のうちに、人生の荒波に立ち向かう覚悟を決めた逞しい女性に変身していく物語である。(2011.3.6読了)
☆作者のコワザがきいていると感じたところ――(ドラムのことが心配でなかなか眠れないエヴィーが、ようやく眠りについてみる夢は(中略)梯子をのぼっていき、自分の重みで梯子が後ろに倒れそうになるのに決して倒れない夢とかだった。[いかにも身体の重い人が見そうな夢ではありませんか]
☆コンピューターも校正者もチェックし損なったのか、あるいはもうこれは容認された表現なのか、とちょっと引っかかったところ――あちこちでグループをつくって、踊るというよりは擦り足で動いたり、椅子の肘や背にもたれて話しながら指を鳴らしたり頭を振っている。[指を鳴らしたり頭を振ったりしている、の方が落ち着くと思うのですが]
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by nishinayuu | 2011-06-05 00:27 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

韓国ドラマノート その6(2011.5.31作成)

c0077412_1112770.jpg☆2008年9月から2011年5月までに見たドラマを五十音順に並べてみました。
1行目:日本語タイトル(太字は気に入ったもの)、韓国語タイトル、放送局
2行目:キャスト 3行目:一言メモ
☆これより前に視聴したものは韓国ドラマノートその1その2その3としてまとめてあります。キャストの名前の漢字表記はマイリンクの「韓国の著名人」をご覧ください。

アイリス 아이리스 KBS2
    イ・ビョンホン、キム・テヒ、チョン・ジュノ、キム・スンウ
    韓国ではヒットしたらしいが、この内容は日本人には合わないのでは?
ありがとうございます 고맙습니다 MBC
    コン・ヒョジン、チャン・ヒョク、ソ・シネ、シン・ソンノク
    『サンドゥ学校に行こう』と同じく、ヒョジンの一途な女性が最高。
イ・サン 이산 MBC
    イ・ソジン,ハン・ジミン,イ・スンジェ,チョ・ヨヌ,ソン・ヒョナ
    主人公は英祖。テビママは目つきが異常に怖くて大迫力。
偉大な遺産 위대한 유산 KBS
    キム・ジェウォン、ハン・ジミン、キム・ジフン
    やくざがらみなのは気に入らないが、子ども達がかわいいので許す。
一枝梅(イルチメ) 일지매 SBS
    イ・ジュンギ、パク・シフ、キム・ソンリョン、ハン・ヒョジュ
    資料のないところから魅力的な人々を作り上げた制作陣の腕に拍手。
インスンはきれいだ 인순이는 예쁘다 KBS
    キム・ヒョンジュ、キム・ミンジュン、オム・ヒョソプ
    ヒロインに『ガラスの靴』のけなげな少女の面影が。OSTがいい。
黄金のリンゴ 황금사과 KBS
    パク・ソルミ,キム・ジフン,チ・ヒョヌ,パク・チビン,ユ・ヨンミ
    主題歌(꿈꾸는 카사비앙카)も、俳優陣も、一昔前の雰囲気もよし。
おお!ピルスン 오! 필승 KBS
    アン・ジェウク、リュ・ジン、チェリム、パク・ソニョン
    主役の4人がみんないい感じ。内容も爽やかで楽しめる。
オン・エアー 온에어 SBS
    パク・ヨンハ、キム・ハヌル、イ・ボムス、ソン・ユナ
    ヨンハの笑顔に胸が痛む。彼もボムスと同じく鼻息演技全開。
風の絵師 바람의 화원 SBS
    パク・シニャン、ムン・グニョン、ペ・スビン、ムン・チェウォン
    英祖時代の話。金弘道と申潤福の絵が鑑賞でき、描き方もわかる。
彼女が好き 나는 그녀가 좋다 KBS2
    ミョン・セビン、アン・ジェファン、イ・ジョンジン
    「내 말이」は便利そうだけれど、いい大人が使うのはNGらしい。
きつねちゃん、なにしてる? 여우야,뭐하니? MBC
    コ・ヒョンジョン,チョン・ジョンミョン,チョ・ヨヌ,コ・ジュニ
    ストーリーは作りすぎの感があるがヒロインの表情は自然でいい。
外科医ポン・ダルヒ 외과의사 봉달희 SBS
    イ・ヨウォン、キム・ミンジュン、イ・ボムス、オ・ユナ
    米ドラマのERと同様の緊迫感と人間味にあふれる秀作。
恋するハイエナ 하이데나 tvN
    ソ・イヒョン,キム・ミンジョン,シン・ソンノク,ホ・マンソク
    男性陣は生き生き。ソ・イヒョンはミスキャストで気の毒。
恋人 연인 SBS
    キム・ジョンウン,イ・ソジン,パク・インファン,チョン・チャン
    内容も役者の表現もワンパターン。恋人シリーズ一番の駄作。
ごめん、愛してる 미안하다,사랑한다 KBS
    ソ・ジソプ、イム・スジョン、ソ・ジヨン、チョン・ギョンホ
    テンポが悪くカタルシスもない駄作。子役と母親役はうまいが。
12月の熱帯夜 12월의 열대야 MBC
    オム・ジョンファ、シン・ソンウ、キム・ナムジン
    ヒロインの忍従が歯がゆい。主題歌「西洋ハコヤナギ」がいい。
人生は美しい 인생은 아름다워 KBS2
    ハ・ジウォン、キム・レオン、ヤン・ミラ、チョン・ボソク
    ユン・ヘヨンが可憐。ストーリーは新鮮さがなくてイマイチ。
スポット・ライト 스포트라이트 
    ソン・イエジン、チ・ジニ、チング、チョ・ユニ
    チャングムの厳しくて優しいジョンホ様にまた会える。
銭の戦争
    パク・シニャン,パク・ジニ,シン・ドンウク,キム・ジョンファ
    貸金業者やらヤクザやらが繰り広げるどたばた劇。
薯童謡(ソドンヨ) 서동요 SBS
    チョ・ヒョンジェ、イ・ボヨン、リュ・ジン、イ・チャンフン
    敵役のリュ・ジンの演技が光るリュ・ジンのためのドラマ。
ソル薬局の息子たち 솔약국집 아들들 KBS
    ソン・ヒョンジュ,イ・ピルモ,ハン・サンジン,チ・チャンウク
    展開がスピーディーで楽しい。病死のエピソードはいらない。
太王四神記 태왕사신기 MBC
    ペ・ヨンジュン、ムン・ソリ、テェ・ミンス
    現実離れしたところと変に現実的なところが調和していない。
チャンファ・ホンリョン 장화/홍련 KBS2
    ユン・ヘヨン,キム・セア,チャン・ヒョンソン,アン・ソニョン
    聖女と悪女の対決。見どころは悪女の悪あがきぶり。
朱蒙 주몽 MBC
    ソン・イルグク,ハン・ヘジン,チョン・グァンニョル,オ・ヨンス
    乏しい資料からよくまあ壮大な物語を作り上げたもの、と感心。
チンチャ・チンチャ・チョアヘ 진짜진짜 좋아해 iMBC
    リュ・ジン、ユジン、イ・ミンギ
    始めは??だったボンギくんがどんどんかっこよくなっていく!
妻が突然18歳 18・29 KBS
    パク・ソニョン、リュ・スヨン、パク・ウネ
    『真実』の敵役パク・ソニョンがコミカルなアラサーを好演。
憎くてももう一度 미워도 다시 한 번 KBS
    チェ・ミョンギル、チョン・インファ、パク・サンウォン
    強い女たちとしゃきっとしない男たち。これこそ女人天下。
女人天下 여인천하 SBS
    カン・スヨン,チョン・インファ,パク・サンミン,イ・ドクファ
    我が身と家門のために闘う女達や役人達。ひとり冴えない中宗。
花火 불꽃놀이 MBC
    ハン・チェヨン,カン・ジファン,ユン・サンヒョン,パク・ウネ
    ヒロインは素顔のほうがずっといい。お化粧した顔は化け物。
花よりも美しく 꽃보다 아름다워 KBC
    コ・ドゥシム,ペ・ジョンオク,キム・ミョンミン,ハン・ゴウン
    ウジウジしていて衝動的で面倒な家族。不愉快なドラマだった。
バラ色の人生 장밋빛 인생 KBS
    チェ・ジンシル,ソン・ヒョンジュ,イ・テラン,チャン・モンジク
    痛々しいヒロインを後に自死した俳優が演じていて凄絶。
HIT-女性特別捜査官 히트 MBC
    コ・ヒョンジョン,ハ・ジョンウ,キムジョンミン,イ・ヨンハ
    ヒョンジョンは「春の日」「きつねちゃん」よりこっちが適役。
黄真伊 황진의 KBS
    ハ・ジウォン、チャン・グンソク、キム・ジェウォン
    ハ・ジウォンの芸達者ぶりに驚く。女声主題曲がすばらしい。
ぶどう畑のあの男 포도밭 그 사나이 KBS
    ユン・ウネ、オ・マンソク、キム・ジソク、チョン・ソヨン
    始めハチャメチャ、終わりしっとり、というお決まりの展開。
不良カップル 불량커플 SBS
    リュ・スヨン,シンウンギョン,パク・サンミン,チェ・ジョンユン
    ヒロインの言動に一貫性が無く、感情移入できない。
フルハウス 풀하우스 KBS
    ピ、ソン・ヘギョ、ハン・ウンジョン、キム・ソンス
    風景も登場人物も実に美しいが、ストーリーがお粗末。
ベートーヴェン・ウイルス 베토벤 바이러스 KBS
    イ・ジア,キム・ミョンミン,チャン・グンソク,イ・スンジェ
    演奏の指使いは?だが、演技とストーリーは合格。
マイ・ガール 마이 걸 SBS
    イ・ダヘ、イ・ドンウク、イ・ジュンギ、パク・シヨン
    始まりはドタバタだが、ストーリーも人物も魅力的ではまる。
マイ・スウィート・ソウル SBS
    チェ・ガンヒ、チ・ヒョヌ、イ・ソンギュ
    メリハリもまとまりもない、なんだかなあのドラマでした。
魔王 마왕 KBS2
    オム・テウン、チュ・ジフン、シン・ミナ、チョ・ジェワン
    『復活』の数段上を行く人間ドラマ。テーマ曲もすばらしい。
魔女ユヒ 마녀 유희 SBS
    ハン・ガイン,チェ・ムリョン,デニス・オ,キム・ジョンフン
    ジャジャン麺店の一家がいい味を出している。
ルル姫 루루공주 SBS
    キム・ジョンウン、チョン・ジュノ、キム・フンス
    必然性がないのに「独島は韓国領土!」が出てきて不自然。
恋愛時代 연애시대 SBS
    カム・ウソン、ソン・イエジン、オ・ユナ、イ・ジヌク
    憂い顔美人のヒロインが元夫に「オイ!」とはびっくり仰天。
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by nishinayuu | 2011-06-01 10:32 | 映画・ドラマ | Trackback | Comments(0)