<   2011年 03月 ( 10 )   > この月の画像一覧

『カピタン・リ』(チョン・ガンヨン[全光鏞])


c0077412_17391932.jpg『꺼삐딴 리』(전광용著)
韓国の小説家であり国文学者でもある著者が1960年に発表、1962年に東仁文学賞を受賞した短編小説である。
主人公は李仁國博士。腕のいい外科医である彼は、地価の高いソウルの都心にビルを持ち、そこに各科の医者を集めて総合病院の院長に納まっている。しかし、彼も楽々とここまで来たわけではない。彼にも人並みの、あるいは常人以上の苦労があったのだ。日帝時代に経営していた医院は日本人の患者も多くて繁盛していた。当時の彼は、民族主義運動家の学生が担ぎ込まれたとき、その身なりの貧しさから支払い能力に危惧を抱いて入院を拒絶したりする、利益優先の傲慢な医者だった。1945年に解放を迎えると状況は一変、彼は人びとの目を怖れて身を隠すように暮らしていたが、ソ連軍が侵攻してくるや、親日派、民族反逆者として投獄される。過酷な獄中生活の中で、彼は死も覚悟する。しかしある日、病人を見て病名を言い当てたことからソ連軍の医官の目に止まった彼は、やがて患者の治療に携わるようになる。そのソ連軍医官・ステンコフは、囚人ではあるが自分と同じ医者である李仁國を、尊敬と親しみを込めてカピタン・リ、すなわちキャプテン・李と呼ぶ。そして、だれも手術できなかったステンコフの瘤を取る手術を成功させた彼に、ステンコフは「スパシーボ」を連発する。そのステンコフの計らいで李・仁國は釈放され、医者として監獄に通勤するようになる。ステンコフのおかげで息子をソ連に留学させることもでき、これからはロシア語の時代になる、と彼は期待に胸を膨らませたのだった。しかし彼の生活は再び暗転する。6・25事変が起こり、彼は診療鞄一つを持って越南する。このとき妻を失った彼は、看護婦だった女性と結婚したが、新しい妻と娘はあまりしっくりいっていない。今、彼はアメリカで新しい生活を始めた娘を訪問するために、アメリカのビザを取ろうとしているところだ。アメリカ大使館に行き、東洋趣味の大使・ブラウンに高麗青磁の花瓶をプレゼントすると、ブラウンは「サンキュー」を連発する。日帝時代は日本語を母国語のように操り、獄中ではロシア語を学んで通訳なしで通じるほどになった李仁國は、今度は個人教授を受けて勉強中の英語でブラウンと交流する。この分だとアメリカでも生きていけそうだ、と彼は思うのだった。
韓国のサイトを見ると、この作品は「世俗的出世主義者を風刺している」、あるいは「哀れで弱い人間(가엾고 약한 인간)を描いている」、とある。ここでいう「弱い」はFrailty, thy name is woman のfrailty に当たるのではないだろうか。(2010.12.17読了)
[PR]
by nishinayuu | 2011-03-30 17:39 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『月を売った男』(ロバート・ハインライン著、井上一夫訳、創元社)


c0077412_11375.jpg著者の処女作「生命線」、第2作「光あれ」、の他「道路を止めてはならない」「月を売った男」「鎮魂歌」の5編を収めた短編集。いずれも20世紀後半の時代が舞台になっている「未来小説」で、現実の世界がこれらの小説世界よりずっと遅れているのがちょっと残念でもあるが、何となくほっとさせられもする。
「道路を止めてはならない」――鉄道や車に代わる移動手段として、高速で動く道路が敷き詰められている世界が描かれている。これはたいていの人が子どもの頃に一度は想像した世界ではないだろうか。高速道路に「乗る」方法や、他の道路に移る方法などが「科学的に」説明されている点が、子どもの想像とは違うところ。
「月を売った男」――有人ロケットの月世界到着を目前にして、企業家たちは月の土地、ウラニウム、ダイヤモンドなどに一攫千金の夢をかけ始める。そんな企業家の一人であるディロス・ハリマンの最大の夢は、自分の足で月に立つことだった。ハリマンは月の土地を売ったり、切手の先物取引をしたりして月ロケットを飛ばすための資金集めに奔走する。しかし結局彼はロケットには乗れなかった。当時のロケットの性能ではパイロット一人が乗るのがやっとだったのだ。夢のためなら何でもするハリマンと、その名の通り堅物のストロングのコンビの危ういバランスが愉快。
「鎮魂歌」――「月を売った男」の続編で、地球と月の往復ロケットが飛ぶ時代が到来している。すでに年老いて、健康も損ねているハリマンが、少年の頃から抱き続けていた夢をついにかなえて月に降り立った。そして月の大地には彼を鎮魂する詩が残る。(2010.12.9読了)
[PR]
by nishinayuu | 2011-03-27 11:03 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『天使がくれた時計』(リチャード・P・エヴァンズ著、笹野洋子訳、講談社)


c0077412_1054352.jpgソルトレーク・シティの裕福な実業家で、珍しい骨董品の収集家でもあったデイヴィッド・パーキンと、その妻であるメアリーアン・パーキンの物語。語り手は、未亡人になったメアリーアンの館にしばらく同居していた「わたし」で、彼女からグランドファーザーズ・クロックを譲り受け、さらに、「ジェナ(語り手の娘)が結婚する時に贈り物としてあげて」と美しいローズゴールドの時計を託されていた。
各章のはじめにデイヴィッドが残した日記帳からの抜き書きが記され、それに続いてデイヴィッドとメアリーアンの物語が語られていく。まず、1908年4月に二人が出会った場面で、二人の外貌や人柄が簡潔に描写される。それから、メアリーアンに夢中になっていくデイヴィッドに対して、生真面目な秘書としての姿勢を崩さないメアリーアン、というすれ違いの日々を経て、夏のある日、メアリーアンが衝撃的な告白をする。しかしその告白は、デイヴィッドのメアリーアンに対する愛情をより高める結果となり、二人は結婚することになる。
結婚の件だけでなく、黒人のローレンスと親しく交流し、襲ってきた暴漢を銃殺してしまったローレンスの身代わりになって裁判を受け、それを恨んだ者から放火されて燃え上がった家から娘のアンドリアを救い出し……と、デイヴィッドはまさに聖人のような人物なのだ。そのデイヴィッドも、酷いやけどのせいでアンドリアが死ぬと、憎悪と絶望から復讐という暗い情念にかられる。しかしそんなデイヴィッドをメアリーアンは静かに諫めて復讐を思いとどまらせる。メアリーアンもやはり並の人間とは違う聖人だったのだ。
崇高な精神をもって崇高な人生を送った夫婦の、「世にも麗しい物語」に仕上がっている。全米で300万部の大ベストセラーだと聞けば、なるほど、と納得もできる。それでも一方では、モルモン教の町ソルトレークに住む作家によるソルトレークを舞台にした話とくると、もしかしたら300万というのはモルモン教の人たちが押し上げた数字では?という思いも頭をもたげる。別にモルモン教に反感があるわけではないが、あまりにできすぎた主人公たちにちょっと抵抗を感じてしまうのだ。(2011.12.1読了)
[PR]
by nishinayuu | 2011-03-24 10:05 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『アンドレアス・タアマイエルが遺書』(アルツール・シュニッツレル著、森鴎外訳、岩波書店)


c0077412_1713311.jpgオーストリア帝国の銀行員であるアンドレアス・タァマイエルには結婚して4年目の妻がいる。この妻がなんと、生まれるはずのない肌の色が黒い赤ん坊を生む。それ以来妻は不義密通をした淫らな女として、アンドレアス・タァマイエルは妻に不義密通されたふがいない男として、世間の嘲笑にさらされる。そんな世間に抗議し、自分が妻を信じているし愛していることを証明するために自殺することにしたアンドレアス・タァマイエルが記した遺書、という形式で展開する小説である。
彼によれば、黒い皮膚の赤ん坊が生まれたのは、妻が妊娠中に黒人グループに取り囲まれるという恐ろしい目にあったせいだという。そして、妊娠中の強烈な体験が胎児に影響を与えることは世間では珍しいことではないとして、古今東西のいろいろな例を挙げている。「世にも不思議な物語」を人びとに信じさせ、自分も信じようと必死になっているのだ。そのあげく、おそらくは虚しい努力だと悟って、彼は自殺の道を選ぶ。「世にも不思議で世にも哀れな物語」である。

☆この作品も「青空文庫」で読みました。著者名を森鴎外はシュニッツレルと表記していますが、現在はシュニッツラーという表記が一般的ですよね。フロイトとも親交があった作家で、ウィーン中央墓地にお墓があるそうです。数年前にそこに行ったときはこの作家の作品を読んでいなかったので、お墓もノー・チェックでした。おわびに(?)お墓の画像をupしておきます。(2010.11.24読了)
[PR]
by nishinayuu | 2011-03-21 17:13 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

「正の10を、10個集めると」

c0077412_11102188.jpg
どこかの雑誌の「編集手帳」(2010.6.11)を韓国語に訳しました。原文は韓国語の下の「編集手帳」という文字をクリックしてお読みください。



정수 십을 열 개 모으면 백이 된다. 음수의 십과 음수의 십을 곱해도 백이 된다. [답은 똑같지만, 정수를 쌓아 올린 백에는 음영이 없다]. 이단의 기법마저 대담하게 사용해서 “음수의 왕” 이라고 불린 가인 고-츠카모토 쿠니오씨의 말이다.
사람은 뉘우침의 씨를 흩뿌리면서 살아간다. 간혹 정수만을 쌓아 올린 듯이 좌절을 모르는 사람과 만날 때, 그가 천박하다는 인상을 느끼는 것은, 그 사람에 음영이 모자라서 그럴 것이다. 뉘우침이 있기에, 음수가 있기에, 인생이라고 할 수 있다.
카와사키-시에서 중학교 3학년의 남학생(14세)이 자살했다. 학교에서 따돌림을 당한 친구를 구할 수 없었던 것을 후회하는 유서가 남아 있었다고 한다.
자세한 사연은 아직 밝혀지지 않았지만, 친구를 생각하는 마음에 자신을 가책한 결과라면, 그는 상냥한 마음을 가진, 정의감이 강한 소년이었을 것이다. 살아주었으면 했다.
[일본에서 가장 짧은 편지] 우수작품집에서 인용하겠다. <그 때/ 뛰어 내리려고 했던 그 빌딩의 옥상에/ 오늘은 석양을 보러 올라간다> (중앙경제사-간행). 가슴의 상처에서 피가 솟구치는 일을 경험해 본 사람만이 바라볼 수 있는, 부의 음영을 몸에 새긴 사람의 눈에만 비치는, 그러한 아름다운 석양이 반드시 있다는 것을.

「編集手帳」
[PR]
by nishinayuu | 2011-03-17 11:11 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)

『イオーヌィチ』(アントン・チェーホフ著、神西清訳、岩波書店)


c0077412_10333323.jpg大ロシアの田舎町で、後にも先にもたった一度の恋をして、その後はずっと孤独で退屈な人生を送っている男の話。
主人公のイオーヌィチは、駆け出しの医者だった頃に町の名士の娘に恋をしてふられる。そのまま歳月を重ねる内に恋心は消え失せ、後に娘に再会しても「あのとき(嫁に)もらわなくてよかった」と思うまでになる。一方、夢と希望にあふれて都会に出て行った娘のほうは、やがて平凡な結婚を願うようになり、主人公に改めて近づこうとするが相手にされず、そのうち病気がちになって母親と一緒に保養に出かけたりしている。
田舎医者として成功した主人公は、裕福にはなったが友人もなく、いっしょに食事を楽しむ相手もいない。そして身体は肥え太り、気むずかしい癇癪持ちになる。町の名士で娘の父親であるイヴァン・ペトローヴィチだけは「年も取らず、ちっとも変わらないで、例によって例の如くのべつ洒落のめしたり一口噺をやったりしている。」――というところでこの小説は終わっている。(2010.11.23読了)

☆主人公の将来は想像できるからいいが、イヴァン・ペトローヴィチがいつまで「ちっとも変わらない」でいられるかを語ってくれていないので、フランス映画の終わり方のようでなんだかすっきりしません。なお、この作品は「青空文庫」で読みました。
[PR]
by nishinayuu | 2011-03-15 10:33 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『アッタレーア・プリンケプス』(V・M・ガルシン著、神西清訳、岩波書店)

c0077412_1017308.jpg暗い時代のロシアのとある植物園に、南国の植物を集めた温室があった。そこで育てられているアッタレーア・プリンケプスというブラジル産のシュロの木が、自由の世界に憧れて温室のガラス天井を突き抜けることを思いつく。懸命の努力の結果やっと天井を突き破ることに成功したアッタレーア・プリンケプスを待っていたのは、冷たい風が吹きすさぶ氷の世界だった。
『赤い花』で知られるガルシンによる寓話的な短編小説。誇り高く、希望にあふれた主人公が悲惨な最期を迎える、という点はオスカーワイルドの『花火』と似ていると言えなくもない。主人公が周りの者たちから浮いてしまっている点も共通するが、この作品の主人公には花火の主人公のような傲慢さは全くない。広い世界を見渡す立場になく、的確な時期を待つことも知らず、大衆の理解も得られないままに一人で突っ走ってしまっただけなのだ。よくまとまったお話であり、とにかく短いので軽く読めるが、内容のほうはちょっと重い。
ところで、アッタレーア・プリンケプスとはどんな植物なのか。作中にブラジル原産の植物とあり、訳者は棕櫚としている。インターネットで調べてもほとんど情報がなくてわからないが、どうやらボリビア産の椰子科の植物らしく、同じく椰子科の棕櫚(Trachycarpus Fortunei)とは別物のようである。アルファベットで表記するとAttalea Princepsで、この学名がそのまま和名としても使われている。つまり和名はないということで、英名も見つからなかった。(2010.11.22読了)
☆この本は「青空文庫」で読みました。忙しくて本を手に入れる時間がない時に駆け込む電子書店です。選び抜かれた本ばかりとはいかない書店ですが、この本は「あたり」でした。

☆「東日本大地震」の翌日です。観測史上最大の地震とそれに伴う大津波で東北各地の町や市が壊滅状態、という報道に慄然とするばかり。東京もずっと余震が続いています。
[PR]
by nishinayuu | 2011-03-12 10:57 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『ママのクリスマス』(ジェームズ・ヤッフェ著、神納照子訳、東京創元社)


c0077412_17562391.jpg「ロッキー山脈の裾にある中型の楽園」であるメサグランデ市に住み、公選弁護人事務所の主任捜査官として働くデイヴが、担当中の事件についてママに話してきかせると、ママは居間に坐ったままですいすいと事件を解決していく、という「ママ・シリーズ」のひとつ。今回の事件は「キリストの栄光眩き使徒教会」の牧師が殺害され、隣の家の息子ロジャー・マイアーが犯人として追われる身になるというもの。殺人現場に残されたダイイング・メッセージとか、予想外の犯人とか、普通に推理小説として楽しめる要素も充分に盛り込まれている作品であるが、一方でユダヤ色が強く印象に残る作品でもある。そもそもママもデイヴも信仰の程度はともかくれっきとしたユダヤ教徒であり、ロジャーもその両親のマイアー夫妻もユダヤ教徒である。
キリスト教の派がなんと53も存在するというメサグランデで、キリスト教徒たちの有形無形の圧力に立ち向かいながらユダヤ教徒として暮らしていくとはどういうことなのかを、しみじみと考えさせられる作品である。2000年の長きにわたって迫害され続けてきたユダヤ人は、生き残るための武器として子どもたちに教育を身につけさせたという。そのため、教育の中心的な担い手である母親と子供の間に強い絆が生まれたということだが、そうしたユダヤの母親の一人である頼もしいママと、中年になってもママに頼りっきりの(?)デイヴというコンビのふんわりした雰囲気がなかなかよい。(2010.11.21読了)
[PR]
by nishinayuu | 2011-03-09 17:56 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『The Memory Keeper’s Daughter』(Kim Edwards著、Penguin)


c0077412_10395540.jpg1964年の冬の夜、デイヴィッドとノラ夫妻に初めての子供が生まれる。ブリザードのせいで担当の産科医が来られなかったため、整形外科医であるデイヴィッドが赤ん坊を取り上げることになる。元気な男の子が生まれたあと、思いがけずもう一人、女の子が生まれる。その女の子を見たデイヴィッドは、とっさにその子を妻の目から隠す。その子は明らかにダウン症だった。心臓病で苦しんで死んだ妹と、妹の死から立ち直れなかった母親を見て育ったデイヴィッドは、妻に同じ苦しみを味あわせたくなかったのだ。デイヴィッドはその場に立ち会っていた看護婦のキャロラインに子供を渡し、ある施設に預けるように依頼する。そしてノラには双子の片割れは死産だった、と告げる。キャロラインは施設まで行くことは行ったが、そこの有様に衝撃を受けて、子供を抱いたまま家に戻り、荷物をまとめて子供とともに姿を消す。
この日からデイヴィッドには我が子を捨て去り、その秘密を一人で抱える苦しみの日々が、ノラには一度も抱かないままに女の子を失った悲しみの日々が、そしてキャロラインにはデイヴィッド夫妻や世間から隠れて女の子を育てるという緊張の日々が始まる。
なんとも重いテーマの作品である。デイヴィッドの一瞬の判断が三人のその後の人生を決定したわけだが、三人の中では当のデイヴィッドがやはり最も過酷な生を生きることになったと言える。言い換えれば、二人の女性たちは、過酷な生を生きながらもやがてそれを乗り越えて前に進んでいく。そして彼女たちが一人ずつ育てた双子の将来にも明るい光が見えてくるのである。重いけれども救いがあって、爽やかな感動を覚えながら本を閉じることができる。(2010.11.15読了)
[PR]
by nishinayuu | 2011-03-06 10:40 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

「スリとケチャップ」 特派員報告 ブリュッセル


c0077412_10465620.jpg☆新聞のコラム(2010.10.1朝日新聞)を韓国語に訳しました。原文の日本語は韓国語の下にある「スリとケチャップ」をクリックしてご覧ください。


소매치기와 케첩   특파원메모    브뤼셀

출장으로 간 브뤼셀에서 있었던 일이다. 호텔앞에서 택시를 기다리고 있었는데, 겉옷의 등에 무언가 철썩하고 부딪히는 느낌이 들었다. 비둘기 똥인가? 하늘을 올려다보았다. 아니, 호텔의 지붕이 머리위로 뻗쳐져 있으니까, 하늘에서 떨어진 것이 아니다.
그때 누군가 소리쳐 불렀다 . “케첩이 묻어 있어.”
뒤돌아보았더니 점퍼 차림의 남자가 있었다. 그 손에는 화장지가 보였다.
아하, 이것이 소문난 [케첩 소매치기] 지. 겨냥한 상대의 옷에 케첩을 뿌린 뒤, 모르는 듯이 친절한 사람인 양 더러운 부분을 닦아주는 체하면서, 지갑을 소매치기하려는 것이다. 나는 그런 일에 걸리지 않을 테다.
그런데, 겉옷의 얼룩을 닦을 종이는 있어야 한다. 그래서, 그 사람으로 하여금 호텔 접수구까지 나와 함께 가게 했다. 그는 스태프와 고객들에게 주목의 대상이 되어, 흠칫흠칫 겁먹은 태도다. “베풀어 주신 친절, 대단히 감사해요” 라고 했더니, 홱 화장지 두루마리 하나를 주고서 가 버렸다.
불경기 때문에 범죄가 늘어나고 있다. 영국에 있는 지인에게 [같은 소매치기라도 그 수법은 나라마다 다르다] 는 이야기를 들었다. 그의 말에 의하면, 네덜란드에서는 마요네즈, 독일에서는 머스터드, 남유럽에서는 소프트크림이라고 한다. 정말인지 아닌지를 확인하려면, 겉옷을 몇 번이고 세탁소에 보내야 한다.

「スリとケチャップ」
[PR]
by nishinayuu | 2011-03-03 10:49 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)