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『デルフィニア戦記 外伝 大鷲の誓い』(茅田砂胡著、中央公論社)

c0077412_911446.jpgこの巻では、ティレドン騎士団を率いるバルロと、ラモナ騎士団を率いるナシアスの青年時代が語られている。デルフィニア戦記1~18の中で、ウォルを支えて大活躍を演じたふたりは、とにかく強い戦士であり、人望もあり、互いに無二の親友という間柄、ということになっている。けれども、王家に最も近い貴族であり、ウォルともざっくばらんにやり合う闊達な人物として描かれているバルロに比べると、眉目秀麗でやさしい雰囲気を持ち、万事に控えめなナシアスは、戦士として、またウォルの臣下としてすばらしい働きをしていることになってはいても、今ひとつ影が薄い存在だった。そのナシアスに始めて本格的に焦点が当てられ、ナシアスがバルロの兄とも師匠とも言える存在であったことが明らかにされて、これまで上滑りしている感じだったナシアスのすばらしさを称えることばがやっと真実のこととして伝わってくる。逆にバルロは、やんちゃなだけの未熟な「貴族のお坊ちゃん」でしかなかったということになっていて、成人してからのバルロのイメージとはずいぶん違っている。もっとも、10代においては数年の歳の違いは大きいけれども、大人になればその差はあまり感じられなくなるものだ。だから、この巻ではまるで子どもだったバルロが、成人した後にナシアスと対等に接し、ときには兄貴風を吹かせるという展開も、違和感なく受け止めることができる。それはともかく、この巻の主人公はナシアスであり、ナシアスのファンのために書かれた巻であると言えよう。(2008.1.16記)
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by nishinayuu | 2008-03-29 09:01 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『デルフィニア戦記18 遙かなる星の流れに 下』(茅田砂胡著、中央公論社)

c0077412_1010362.jpgデルフィニアの物語が大団円を迎える。タンガとの戦いは、おそらくおおかたの読者の予想通り、ナジェックの死であっさり終わる。パラストの場合はタンガほどあっさり行かず、くせ者のオーロンの面目躍如という感じの見せ場が用意されているが、決着をつけるのはやはり、文字通りこの世のものではない戦女神のリイである。そしてこれを最後にリイは、デルフィニアを、心を許した友であるウォルの元を去る。同道を望んだシェラを伴い、相棒のルウと自分の本来の世界に戻るために。
この巻では、リイの意外な素性が明らかになる。一方、デルフィニアの世界で活躍した人物の中で、いちばん大きく成長し、変化していったシェラが、ほんとうに「月」なのかどうかは明らかにされないまま終わっている。もしかしたら作者はまた別の「リイたちの世界の物語」を用意しているのかもしれない。(2008.1.16記)
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by nishinayuu | 2008-03-27 10:10 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『デルフィニア戦記17 遙かなる星の流れに 上』(茅田砂胡著、中央公論社)

c0077412_93887.jpgタンガの王子ナジェックは、かつて自分に手酷い恥をかかせたリイを今度こそ自分のものにしようと、リイが麻薬から覚めるのをじりじりしながら待っている。そんなことはさせまいと、デルフィニアは国を挙げてリイの救出に向かう。一方シェラはリイが捕らわれているボナリス城に忍び込むことに成功したが、レティシアに阻まれ、危うく殺されそうになる。そのシェラをかばったルーファは、レティシアの一撃によって致命傷を負う。しかし、ルーファは死ななかった。彼は時の流れから切り離された存在だったのだ。シェラがルーファから託された指輪をリイに届け、それをリイが右手にはめたとき、「あの力」が解き放たれる。(2007.12.15記)
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by nishinayuu | 2008-03-25 09:03 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『デルフィニア戦記16 伝説の終焉』(茅田砂胡著、中央公論社)

c0077412_1036262.jpgタンガとデルフィニアが対峙しているタンガとの国境近くで、バルロが率いるティレドン騎士団の副官アスティンと配下の兵達がタンガに捕らわれる。救援に駆けつけたリイは、彼らの釈放という交換条件をのんでタンガの人質になる。リイが連れて行かれたボナリス城にはリイの仇敵レティシアが待ちかまえていた。そしてシェラの仇敵ヴァンツァーも、レティシアの仕事を円滑に進めるためにシェラを片付けようと待ちかまえていたのである。
この巻ではいよいよリイの相棒ルーファがこの世に現れてウォルと親しく語り合ったり、シェラがファロット伯爵と対決してファロット一族の運命を決したり、ウォルが王位を捨てたり、と事態はめまぐるしい展開を見せる。(2007.12.12記)

☆シリーズのはじめの頃は登場人物達の言葉づかいがそこらのあんちゃん風で気になって仕方がありませんでした。それがだんだん目につかなくなり、物語の格調も少しずつ高まっていたのに、この巻で登場したルーファの言葉づかいのせいで、元の木阿弥になりました。人間を超えた存在であるルーファにはもっとそれらしい言葉づかいをさせてもよかったのでは? 巻15と同じく変な表現(186ページ花壇2行目、「その客人、今は何をしてございます?」)も散見されますが、それはそれとして145ページ下段10行目の「独り法師の国王」は笑えます。ここはひらがなにしたほうが……。
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by nishinayuu | 2008-03-22 10:36 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『デルフィニア戦記15 勝利への誘い』(茅田砂胡著、中央公論社)

c0077412_9302050.jpgイヴンのために書かれた、イヴンが主人公の巻である。イヴンの育ての親ゲオルグは死の海の向こうにある広大な国スケニアの出身であった。そのスケニアは今、タンガと同盟を結び、デルフィニアに攻め入ろうとしている。前巻ではすでに、スケニアの先住民の一団が船を担いでタウの山中を通過している。そして今度はデルフィニアとパラストの間にある小国ペンタスと、その南に位置する海運国キルタンサスのレテ島が彼らに襲われて占拠された。その直後にスケニアの本隊である大艦隊がコーラルの前海に現れる。北ではタンガが戦闘態勢に入り、西の大国パラストもいよいよ動き出して、デルフィニアは周りじゅうを敵に囲まれてしまう。ここでゲオルグの息子であり、かつてキルタンサスの頭領カルロスと暴れ回っていたイヴンが、デルフィニアの救世主として大活躍することになる。(2007.12.12記)

☆なぜかこの巻にはひっかかる表現がいくつかあって、ちょっと興を削がれました。たとえば46ページ4行目、役人がイヴンに向かって言うことば「急ぎ王宮にお戻りください!陛下がお待ちしております!」は「陛下がお待ちです」とすべきですし、165ページ12行目、リリアがグリンダに言うことば「まあ、どなたを拐かしに参られたのでしょう?」は「拐かしにいらっしゃったのでしょう」にしないといけないでしょうに。
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by nishinayuu | 2008-03-20 09:30 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『デルフィニア戦記14 紅の喪章』(茅田砂胡著、中央公論社)

c0077412_936415.jpgナシアスとエンドーヴァー夫人は、バルロの強引ともいえる後押しでやっと結婚にこぎつける。ふたりの結婚式の日に、タウのジルとアビーもめでたく結婚。ジルは年下のベネッサを姑に、イヴンも年下のアビーを義母に持つことになる。そんななかでもデルフィニアには危険がじわじわと近づいている。タンガとの境にあるカムセンが攻撃され、国王とともに戦場に乗り込んだリイが毒矢に当たって倒れ、人事不省に陥る。リイにとどめを刺そうと忍び込んできた者たちは、リイの放つ緑色の火炎によってずたずたの肉塊に変じ、リイの目を覚まそうとしてリイに触れたとたん、ウォルも意識を失う。そしてウォルはリイの心の中を、リイはウォルの心の中を旅することになる。
もうひとつこの巻で特筆すべきはシェラの著しい成長である。(2007.12.11記)
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by nishinayuu | 2008-03-18 10:28 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『デルフィニア戦記13 闘神達の祝宴』(茅田砂胡著、中央公論社)

c0077412_20155828.jpgロザモンドとバルロに二世が誕生する。しかも男女の双生児。これを機にふたりは結婚披露宴を行うことになり、国王はふたりの結婚を祝って隣国との「国交回復記念式典」を催すことを思いつく。人々の期待は王妃リイのドレス姿に集まる。当日、リイは美しさ、あでやかさで並み居る美女を圧倒し、王とのダンスまで披露して絶賛を浴びる。宴の会場では、ロザモンドとジルが、ジルとアビーが、ファロットのヴァンツァーとシェラが、ヴァンツァーとアランナが顔を合わせ、それぞれの間で大きな意味を持つ話が交わされる。特にアランナにはこの出会いのあとで大変な災難が降りかかる。一方アランナの兄ナシアスと、ジルが後継者と見なしているイヴンは、いよいよ身を固める決断をしなければならない事態に追い込まれる。
美の極致のリイと得体の知れない恐ろしいリイという、リイの2つの面が鮮やかに浮き彫りにされた、ドラマチックな巻。(2007.12.4記)
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by nishinayuu | 2008-03-15 20:16 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『デルフィニア戦記12 ファロットの誘惑』(茅田砂胡著、中央公論社)

c0077412_9383754.jpgウォルとポーラを結婚させるには自分がウォルと離婚するしかない、と思いこんだリイは、結婚の証書を盗み出そうと神殿に乗り込む。バルロからことの顛末を聞かされたポーラがリイのもとに駆けつけ、誤解も解けて、ポーラはめでたくコーラル城の人となる。ポーラを女性達にお披露目する日、リイは光り輝く女神と見まがう装いで現れて女性達の目を奪う。しかしその席で出された菓子には毒が仕込まれていた。リイを狙うファロット一族の魔手は易々と城内に入り込んでいたのだ。ファロットは次にシャーミアンを誘拐してリイを誘い出す。こうして森の中でレティシアと対決したリイは、恐ろしい敵ながら、自分と同種の何者かであるレティシアに親近感を覚え、やがてふたりは親しく語り合ったりする仲になる。そんなリイを見てシェラは「王妃に男ができた」とウォルに報告する。リイとレティシアの他にもロザモンドとバルロ、ロザモンドとタウのジルなど、目の離せない人間関係満載の巻である。(2007.12.3記)
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by nishinayuu | 2008-03-13 09:38 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『デルフィニア戦記11 妖雲の舞曲』(茅田砂胡著、中央公論社)

c0077412_10231899.jpg冒頭にリイと相棒ルーファのやりとりがあり、リイがいったい何者なのかが少しだけ解明される。続いて、ホームシックで不眠に陥ったリイを薬で無理やり寝かせたウォルに、リイが文字通り牙をむく場面。これはなかなかすさまじいが、結局丸く収まり、そのあとは、パラストとタンガがひとまず矛を収めて平和の戻ったデルフィニアの日々が語られる。主要登場人物たちにほぼまんべんなくスポットライトが当てられている、といった感じで話が進み、最後はウォルがいよいよポーラを愛妾として迎える気になるところで終わっている。ただし、ファロット一族の不気味な動きにもかなり紙数が割かれていて、読者の不安と期待をかき立てる。(2007.11.29記)

☆この巻では気になる「絵」が二つありました。一つはカバー絵のリイですが、右足の膝のあたりがちょっと不自然では?膝から上が長すぎるせいだと思うのですが。もう一つはファロット一族のレティシア。これも左足の膝から上が、右足のそれに比べて不自然に長いと思います。
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by nishinayuu | 2008-03-11 10:23 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『デルフィニア戦記10 憂愁の妃将軍』(茅田砂胡著、中央公論社)

c0077412_1753138.jpg金銀の鉱脈を有するタウがデルフィニアと結びつくのを阻もうと、パラストとタンガが同盟を結んで挙兵する。一方デルフィニア国内でも、山賊集団のタウが重用されることに不満を持つ貴族たちが国王に反旗を翻す。デルフィニアの国王ウォルを捕らえたパラスト国王の弟であるボーシェンクは、タウの鉱脈の在りかを聞き出そうとウォルを痛めつけるが、口を割らないウォルに業を煮やし、王の処刑を見せ物にして楽しむことを思いつく。円形闘技場をこしらえ、見物人を集め、デルフィニア王を飢えたライオンの餌食にしようというのだ。デルフィニア国内の不満分子であるグラハム卿と、訳あって表面上は卿に話を合わせているナシアスに、その見せ物の招待状が届く。ナシアスはいざとなったら王の身代わりにライオンに食われる覚悟で出向いていく。ナシアスと、同行したシェラの見守る中、拷問のせいで別人のようにやつれたウォルが闘技場に引き出されて……。
この巻は囚われのウォルの話が中心で、ウォルの守り神であるリイがなかなか登場しない。が、最後には必ずリイが現れてウォルを救い出すことがわかっている読者としては、リイがいったいどんな方法でウォルを救うか、作者がどんな手を考えているのか、ワクワクしながら読み進むことになる。(2007.11.24記)
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by nishinayuu | 2008-03-08 17:05 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)