カテゴリ:読書ノート( 1050 )

『ひとたびはポプラに臥す-1』(宮本輝著、講談社)

c0077412_22391218.jpg読書会「かんあおい」2005年11月の課題図書。
『パイプのけむり』シリーズで読んだ團伊玖磨の西域の旅は、豪勢・優雅な、王侯貴族の旅で、異国情緒が満喫できるものだった。それに比べると宮本輝の旅は、食べ物や人間関係に悩まされつつのどろどろしたもので、それはそれで魅力的だ。この先がどうなるか気になるので、2巻目以降も読もうという気にさせられる。


☆読書会で取り上げたのは最初の1巻だけでしたので、このあとの巻(2~5)は自分で読みました。巻5の感想は以下の通り。

読み進むにしたがって宮本輝もシルクロードもますます魅力的になる。中国人通訳・フーミンちゃんとの遠慮のないやりとりが、宮本輝の人柄もフーミンちゃんの人柄っもくっきり浮かび上がらせる仕掛けになっている。
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by nishinayuu | 2006-07-26 21:18 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『鳥よ鳥よ』 (申京淑著)

c0077412_15474624.jpg『새야새야』(신경숙 著、문학시상사)

『浮石寺』で李箱賞(日本の芥川賞のようなもの)と受賞した申京淑の短編。『遠野物語』より現代に近い時代の、『遠野物語』のような世界、といった感じの作品。『浮石寺』の場合もそうだったが、「雪」が重要な役割を果たしている。物語の終わりの部分は、本来の使い方と新しい使い方両方の意味で「鳥肌が立った」。

☆著者についてはマイリンクにある「韓国の著名人」の【ㅅ】を、「浮石寺」についてはマイリンクにある「韓国の地名」の【ㅂ】をご覧ください。

☆「鳥肌が立つ」は小学館の大国語辞典では
寒さや恐怖などの強い刺激によって、皮膚に鳥肌ができる

となっています。けれども「鳥肌」は立毛筋の収縮によって起こる現象ですから、寒さや恐怖だけでなく、強い感動や喜びを受けたときに鳥肌が立つことは充分考えられます。新しい使い方が出てきたときには「えっ?」と思いましたし、今でも抵抗はありますが、使う人の気持ちも理解できます。それで、試しに私も使ってみました。
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by nishinayuu | 2006-07-25 16:19 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『センセイの鞄』(川上弘美著、平凡社)

c0077412_2238544.jpg読書会「かんあおい」2005年9月の課題図書(担当nishina)。
前に読んでおもしろかったのでみんなに読んでもらった。同じ作者の『蛇を踏む』などには抵抗のあった人も、この作品は文句な しに楽しめたようだった。ひとりだけ、むりやり作ったような不自然な話だと思った、という感想を述べた人がいたが。
テレビドラマを見た人も何人かいて、「センセイ」や「ツキコさん」役については、イメージが違う、いや、あれでいい、と意見が分かれたが、センセイの奥さん役は違うんじゃないか、ということでは意見が一致した。


☆ 『パレード』 (川上弘美著、平凡社)は『センセイの鞄』のセンセイとツキ子さんのある一日を描いた小編。静かで、優しくて、どこか懐かしい物語ですが、そう思うのはたぶん私が『センセイの鞄』を読んだからでしょう。しゃれた装丁の本なので、『センセイの鞄』の姉妹品だとは知らずに買って読み、ダマサレタ、と思った人もいるのではないかと、ちょっと心配です。
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by nishinayuu | 2006-07-22 21:48 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『The Fountainhead』( Ayn Rand著、A Signet Book)

c0077412_22371577.jpg1940年代に出版されて以来読み継がれている、アメリカのロングセラー小説。確固とした自我を持ち自我に忠実に生きる理想的人間、その対極にある自我を持たない人間、理想的人間を打ち砕こうとする悪意の固まりのような人間、というように人物がくっきりと描き分けられているのが特徴。不自然といえば不自然であるが、それがこの小説の面白さの源といえる。ただし、理想の人間にふさわしい女性、と作者が規定している女主人公の性格や心情はよく理解できなかった。読みが浅いせい?
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by nishinayuu | 2006-07-21 15:09 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『私の文化遺産踏査記 1』 (兪弘濬 著)

c0077412_15441936.jpg『나의 문화유산답사기 1』( 유홍준著、 창작과비평사)
韓国の文化遺産をよりよく理解し味わうための案内書。専門家ならではの詳細な解説の合間に砕けた感想やらエピソードが挿入されていて、あきさせない。ときどき「中華思想」ならぬ「中韓思想」がちらつくが、自国の文化遺産への愛着が深い証拠 、と思えば許せる。韓国文化を荒らし回った日本・日本人は、当然のことながら厳しく糾弾されているが、韓国文化を愛した日本人や、日本の良い点はきちんと評価されている。全3巻。
著者は1949年生まれの美術史学者、美術評論家、大学教授。現在は文化財庁の長官でもある。『80年代美術の現場と作家たち』(1986)、『美術エッセー』(1988)などの著書がある。

☆著者は「文化遺産踏査会」の講師として、会員を引き連れて韓国中の文化遺産を探訪しています。犬養孝氏(万葉旅行の会の講師)の韓国版といったところでしょうか。「文化遺産踏査会」の会員になって、著者の説明に耳を傾け、時には茶々を入れたりできたら、さぞ楽しいだろうと思うのですが、それにはよほど韓国語ができないと……。
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by nishinayuu | 2006-07-18 22:56 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『吉里吉里人』(井上ひさし著、新潮社)

c0077412_15453344.jpg話題になっていた頃に読み損ねてずっと気になっていた本。登場人物たちがめったやたらに有能で、しかもなぜかかなり卑猥。そんな登場人物たちが繰り広げる「吉里吉里国」の建国と挫折の顛末記。ストーリー展開はしっちゃかめっちゃかなのに、細部の描写や物事の解説が念入りで、読ませる。
とくに吉里吉里国の公用語である吉里吉里語については、発音記号入りで詳細に解説されており、そこのところがいちばんおもしろかった。しっかり吉里吉里語を勉強し、吉里吉里人たちとつきあっていれば、読み終わる頃には吉里吉里語がけっこう話せるようになる(!?)。

☆小説の中で言語が詳しく解説されている、ということでは George Orwell Animal Farm も同じですね。Orwell も井上ひさしも、言語解説の部分に相当入れ込んでいて、それを楽しんでいることは確かだと思います。
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by nishinayuu | 2006-07-17 22:14 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『火山島』(金石範著、文藝春秋社)

c0077412_2236868.jpg全7巻。大韓民国成立前夜の済州島を描いた貴重な記録文学で、実に読みごたえがあった。が、もしかしたら3分の2あるいは2分の1に縮めることもできたのではないか、という気がしないでもない。主人公の優柔不断とも見える言動は複雑に揺れ動く心と深い苦悩を示すもので、それをじっくり物語るにはこれだけの長さが必要だったのかもしれないが。


☆済州島は「三多」といって、風と石と女が多い所とされていました。風景の美しいことで知られ、韓国では一頃、新婚旅行で行くところ、ということになっていたようです。最近はドラマ「オール・イン」のロケ地としても有名になりました。私が参加している韓国語講座の仲間の多くもこの地を訪れています。ドラマのロケされたホテルに宿泊した人も、乗馬を楽しんだ(たぶん馬をかなり難儀させた)人も、一様にその風光のすばらしさを褒め称えていました。
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by nishinayuu | 2006-07-14 23:40 | 読書ノート | Comments(2)

『A Genius in the Family』(Hilary &Piers du Pré 著、Random house)

c0077412_1627586.jpg天才的なチェロ奏者として活躍を始めて間もなく、病のために将来を断たれ、長期にわたる闘病生活の末に世を去ったジャクリーヌ・デユプレの生涯を、姉と弟が綴った伝記。
麻痺が進行していくジャクリーヌ・デユプレが、最期の時まで自分の演奏したレコードに耳を傾けていた、と韓国の小説『浮石寺』にあった。闘病ものと内幕ものは原則として読まないことにしているが、この人の生涯と、特に発病後のダニエル・バレンボイムとの関係についてどうしても知りたくて読んでしまった。
「天才」の苦悩、「天才を持った家族」の苦悩、「天才と結婚した天才」の苦悩の一端をうかがい知ることができ、おもしろかった、という言葉は当てはまらないが、読みでのある本ではあった。

☆この本はアマゾンで買いました。(価格は忘れました^^;)
 
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by nishinayuu | 2006-07-13 15:32 | 読書ノート | Comments(0)

『汽車は7時に出るんだよ』 (申京淑 著)

c0077412_22343959.jpg『기차는 7시에 떠나네』( 신경숙著、 문학과지성사)

精神的ショックから記憶喪失になった姪の姿を目の当たりにした主人公は、長い間記憶から消していた自分の過去を探し始める。謎解きの緊迫感と、謎が解明されたときの感動が味わえる作品。
申京淑は1963年生まれ、1994年に『深い悲しみ』がベストセラーになった。その後『浮石寺』で2001年度の李箱賞(芥川賞のようなもの)を受賞。2005年に自伝的小説『離れ部屋』の邦訳(安宇植訳、集英社)が出ている。

☆『浮石寺』を読んでファンになってしまいました。それで、韓国へ行ったときに『汽車は7時に』を、タイトルに惹かれて買ってきました。ほかに『鳥よ鳥よ』という短編も読みましたが、どれも「雪」が効果的に使われているのが印象的でした。残念ながらこの3作品はまだ邦訳がないようです。
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by nishinayuu | 2006-07-10 17:01 | 読書ノート | Comments(1)

『砂村の子どもたち』 (黄晳暎 著)

c0077412_16301329.jpg『모랫말 아이들 』( 황석영著、 김세현絵、 문학동네社)
著者は『客人(ソンニム)』『懐かしの庭』の作者である黄晳暎(ファン・ソギョン)。初め自分の子どものために書こうと思っていて果たせないうちに子どもは大人になってしまったが、やはり書き残しておきたいと思って書いたという。過酷な体験をくぐり抜けてきた作者なのに、あるいはそういう作者だからこそであろうか、このうえなく温かい目、優しい心で描かれた物語。

☆この本を読んだのはもうずいぶん前(2005年4月)ですが、ほんとうにすばらしい本なのでここで紹介することにしました。韓国語講座の仲間の翻訳本が、もうすぐ出る予定です。
『客人』は鄭敬謨訳で、『懐かしの庭』上・下巻は青柳優子訳で、いずれも岩波書店から出ています。
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by nishinayuu | 2006-07-09 20:56 | 読書ノート | Comments(0)