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カテゴリ:読書ノート( 1045 )

『吉里吉里人』(井上ひさし著、新潮社)

c0077412_15453344.jpg話題になっていた頃に読み損ねてずっと気になっていた本。登場人物たちがめったやたらに有能で、しかもなぜかかなり卑猥。そんな登場人物たちが繰り広げる「吉里吉里国」の建国と挫折の顛末記。ストーリー展開はしっちゃかめっちゃかなのに、細部の描写や物事の解説が念入りで、読ませる。
とくに吉里吉里国の公用語である吉里吉里語については、発音記号入りで詳細に解説されており、そこのところがいちばんおもしろかった。しっかり吉里吉里語を勉強し、吉里吉里人たちとつきあっていれば、読み終わる頃には吉里吉里語がけっこう話せるようになる(!?)。

☆小説の中で言語が詳しく解説されている、ということでは George Orwell Animal Farm も同じですね。Orwell も井上ひさしも、言語解説の部分に相当入れ込んでいて、それを楽しんでいることは確かだと思います。
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by nishinayuu | 2006-07-17 22:14 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『火山島』(金石範著、文藝春秋社)

c0077412_2236868.jpg全7巻。大韓民国成立前夜の済州島を描いた貴重な記録文学で、実に読みごたえがあった。が、もしかしたら3分の2あるいは2分の1に縮めることもできたのではないか、という気がしないでもない。主人公の優柔不断とも見える言動は複雑に揺れ動く心と深い苦悩を示すもので、それをじっくり物語るにはこれだけの長さが必要だったのかもしれないが。


☆済州島は「三多」といって、風と石と女が多い所とされていました。風景の美しいことで知られ、韓国では一頃、新婚旅行で行くところ、ということになっていたようです。最近はドラマ「オール・イン」のロケ地としても有名になりました。私が参加している韓国語講座の仲間の多くもこの地を訪れています。ドラマのロケされたホテルに宿泊した人も、乗馬を楽しんだ(たぶん馬をかなり難儀させた)人も、一様にその風光のすばらしさを褒め称えていました。
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by nishinayuu | 2006-07-14 23:40 | 読書ノート | Comments(2)

『A Genius in the Family』(Hilary &Piers du Pré 著、Random house)

c0077412_1627586.jpg天才的なチェロ奏者として活躍を始めて間もなく、病のために将来を断たれ、長期にわたる闘病生活の末に世を去ったジャクリーヌ・デユプレの生涯を、姉と弟が綴った伝記。
麻痺が進行していくジャクリーヌ・デユプレが、最期の時まで自分の演奏したレコードに耳を傾けていた、と韓国の小説『浮石寺』にあった。闘病ものと内幕ものは原則として読まないことにしているが、この人の生涯と、特に発病後のダニエル・バレンボイムとの関係についてどうしても知りたくて読んでしまった。
「天才」の苦悩、「天才を持った家族」の苦悩、「天才と結婚した天才」の苦悩の一端をうかがい知ることができ、おもしろかった、という言葉は当てはまらないが、読みでのある本ではあった。

☆この本はアマゾンで買いました。(価格は忘れました^^;)
 
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by nishinayuu | 2006-07-13 15:32 | 読書ノート | Comments(0)

『汽車は7時に出るんだよ』 (申京淑 著)

c0077412_22343959.jpg『기차는 7시에 떠나네』( 신경숙著、 문학과지성사)

精神的ショックから記憶喪失になった姪の姿を目の当たりにした主人公は、長い間記憶から消していた自分の過去を探し始める。謎解きの緊迫感と、謎が解明されたときの感動が味わえる作品。
申京淑は1963年生まれ、1994年に『深い悲しみ』がベストセラーになった。その後『浮石寺』で2001年度の李箱賞(芥川賞のようなもの)を受賞。2005年に自伝的小説『離れ部屋』の邦訳(安宇植訳、集英社)が出ている。

☆『浮石寺』を読んでファンになってしまいました。それで、韓国へ行ったときに『汽車は7時に』を、タイトルに惹かれて買ってきました。ほかに『鳥よ鳥よ』という短編も読みましたが、どれも「雪」が効果的に使われているのが印象的でした。残念ながらこの3作品はまだ邦訳がないようです。
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by nishinayuu | 2006-07-10 17:01 | 読書ノート | Comments(1)

『砂村の子どもたち』 (黄晳暎 著)

c0077412_16301329.jpg『모랫말 아이들 』( 황석영著、 김세현絵、 문학동네社)
著者は『客人(ソンニム)』『懐かしの庭』の作者である黄晳暎(ファン・ソギョン)。初め自分の子どものために書こうと思っていて果たせないうちに子どもは大人になってしまったが、やはり書き残しておきたいと思って書いたという。過酷な体験をくぐり抜けてきた作者なのに、あるいはそういう作者だからこそであろうか、このうえなく温かい目、優しい心で描かれた物語。

☆この本を読んだのはもうずいぶん前(2005年4月)ですが、ほんとうにすばらしい本なのでここで紹介することにしました。韓国語講座の仲間の翻訳本が、もうすぐ出る予定です。
『客人』は鄭敬謨訳で、『懐かしの庭』上・下巻は青柳優子訳で、いずれも岩波書店から出ています。
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by nishinayuu | 2006-07-09 20:56 | 読書ノート | Comments(0)