カテゴリ:読書ノート( 1070 )

『町でいちばんの美女』(チャールズ・ブコウスキー著、青野聰訳、新潮社)

c0077412_2249477.jpg作者名がロシア系なので、ロシアのどこかの町を舞台にしたちょっときれいな話かと思って読んだら、ハードでぬめっとした(?)男たちの世界を描いた物語だった。原文のすさまじい罵倒語やセックス関係語が、訳文ではかなり和らげられているらしい。おかげで、嫌な感じも残らず、けっこう面白く読んでしまったが、好みでないことは確かなので、うっかり近付かないように、この作者名はしっかり頭に入れておこう、と思った。
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by nishinayuu | 2006-09-05 21:36 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『日本文明77の鍵』(梅棹忠夫編、創元社)

c0077412_2249189.jpg外国人の日本理解を助けるために書かれたものであるが、日本人が自分の知識を整理するのにも役立つ。初めに英語版が出版されたということからもわかるように、欧米を意識した記述が目立つ。直前に『저고리と鎧』(池明観著、太郎次郎社)を読んだのでなおさらそう感じたのかもしれないが。

☆『저고리と鎧』(池明観著、太郎次郎社)
「元寇で日本が自国を守れたのは、元に征服された高麗や南宋、大越(ベトナム)の人々の抵抗があったおかげ」という著者は、長く日本の大学で教壇に立っていた人物。知日派として、アジア的視点、平和的発想への転換を日本に促しています。なお、저고리(チョゴリ)は韓国服の上半身の部分です。
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by nishinayuu | 2006-09-04 16:02 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『朝鮮短編小説選(下)』(大村益夫・長璋吉・三枝寿勝訳、岩波文庫)

 
収録作品と著者:そばの花咲く頃(李孝石)、椿の花(金裕貞)、春・春(同)、翼(李箱)、少年行(金南天)、五月の薫風(朴泰遠)、滄浪亭の記(兪鎮午)、泥濘(韓雪野)、留置場で会った男(金史良)、狩り(李泰俊)、巫女図(金東里)、習作室にて(許俊)。
ほのぼのとした、後味のよい作品も入っているので、上巻よりは読みやすい。「そばの花咲く頃」「五月の薫風」はいかにも短編らしい‘よくできたお話’になっている。
「翼」は主人公の人格も、主人公と妻との関係も、奇っ怪ではあるけれども、そこがおもしろいといえばおもしろい。著者李箱(イサン)の名を冠した「李箱賞」は日本でいえば芥川賞に当たる文学賞である。

☆著者についてはマイリンクの「韓国の著名人」をご覧ください。
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by nishinayuu | 2006-09-01 23:01 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『朝鮮短編小説集(上)』(大村益夫・長璋吉・三枝寿勝訳、岩波文庫)

収録作品と著者:笞刑(金東仁)、運のよい日(玄鎮健)、桑の葉(羅稲香)、民村(李箕永)、洛東江(趙明煕)、白琴(崔曙海)、旱鬼(朴花城)、地下村(姜敬愛)、金講師とT教授(兪鎮午)。

リアリズムのプロレタリア文学系の作品ばかりで、貧乏、悲惨、凄絶のオンパレード。気持ちが萎えているときはとても読めないが、この土地のある時期の現実を知るには格好の読み物ではある。
これらの中で文学的に特に優れているという印象を受けたのは「運の良い日」で、追いつめられた人間の心理と行動が見事に描かれている。

☆著者については、マイリンクの「韓国の著名人」をごらんください。
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by nishinayuu | 2006-08-31 21:02 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『ヌサトゥンガラ島々紀行』(瀬川正仁著、凱風社)

c0077412_22473357.jpgヌサトゥンガラとはバリ島、ロンボク島、スンバラ島、コモド島、フローレス島、スンバ島、チモール島、アロール島、ソロール諸島のこと。これらの島々とそこに住む人々を温かく、且つ冷静な目で見、足で確かめた記録である。
アジアの辺境ヌサトゥンガラの「今」を残しておくために書く、と著者はいう。その著者の思いがどのページにもあふれており、「近代化批判」でも「地上の楽園礼賛」でもない、すばらしい紀行文になっている。
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by nishinayuu | 2006-08-28 15:49 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『オリガ・モリソヴナの反語法』(米原万里著、集英社)

c0077412_22465280.jpg舞台は1960年代のプラハ。バイタリティーの固まりのダンス教師モリソヴナと、時代物の優雅なフランス語を話すフランス語教師エレオノーラ。年齢不詳、前歴不詳のふたりの過去を探り当てる推理小説仕立ての物語。
同じ作者の『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』の姉妹編といった感じなので、作者の自伝的な要素がより強い『嘘つきアーニャ』を先に読んでおくと、『オリガ・モリソヴナ』にすんなり入っていける。

☆『ガセネッタ&シモネッタ』は、同時通訳者だった作者が、とんでもなく優秀で痛快な同時通訳者たちについて書いたお話。この人の、テンポが良く、おもしろおかしくて、しかもいつもなにかしらお勉強になる文が、もうこの先、新しく出てくることがないと思うと、本当に残念です。
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by nishinayuu | 2006-08-27 18:10 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『日蝕』(平野啓一郎著、新潮社)

c0077412_22455989.jpg物語の舞台は中世の南ヨーロッパ。語り手は古い文献を求めてフィレンツェを目指す聖職者。古めかしい文体が物語の雰囲気を盛り上げている。
読み始めたら、物語の世界にどっぷりと浸かって、最後まで一気に読むべき作品である。

☆同じ作者の『一月物語』(新潮社)は、やはり古めかしい文体で語られる絢爛豪華で幻想的な物語です。上記の作品からも色彩が強く感じられますが、こちらはいっそう絵画的で、絵巻物を繙くような感じです。
この本は装丁もしゃれていて、ぜひ手許に置いておきたいと思いましたが、図書館から借りたものだったのでしかたなく(!?)返却しました。
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by nishinayuu | 2006-08-23 22:25 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『Harry Potter 6』(J.K.Rowling著、Bloomsbury)

c0077412_2245173.jpg副題「and the Half-Blood Prince」。
ハリーは青年期にさしかかり、学友との友情が深まり、新しい恋が生まれる。一方、ボルデモートとの対決の時が近付き、ハリーを取り巻く人々にも大きな変化が訪れるなど、この卷もやはり波瀾万丈であきさせない。

☆第1巻からずっと読んできて思うのは、この作品は実に現代の映画向きにできているということです。CGFで表現するのにぴったりの場面、CGFでなくては表現できないような場面にあふれているからです。作者は初めから映画化を意識していたに違いありません。作品の質についてはいろいろ批判もあるようですが、気楽に楽しめる物語であることは確かです。経済的に追いつめられた状態でこの作品を書き始めたという作者には、成功を祝って拍手を送りたいと思います。
ところで、日本語版の翻訳者には、ちょっとがっかりさせられました。もし私が日本語版の読者だったら、「がっかり」ではすまないでしょう。日本の読者のおかげで稼いだのですから、日本で税金を払うのが当然ではないでしょうか。税率の違いが10%くらいならどこで払ってもたいして違わないのでは、と言ったら、それは貧乏人の考え、と家人に一笑に付されてしましましたが。まあ、持てる者には持たざる者の想像を超えた事情がいろいろあるということでしょう。
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by nishinayuu | 2006-08-22 12:19 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『八点鐘』(モーリス・ルブラン著、長島良三訳、偕成社)

読書会「かんあおい」の課題図書(2005年8月)。
3ヶ月の間に8回のすばらしい冒険をしたあとで互いの願いを聞き届けよう、という契約のもとでルパンとオルタンス嬢が経験した8つの事件の物語。荒唐無稽なトリック、あり得ない展開なので、ばかばかしと思ってしまえばそれまでだが、ルパンの立場になって読めば楽しめる。
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by nishinayuu | 2006-08-19 22:24 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『慰安』 (ソヨンウン著)

c0077412_15563259.jpg『위안』( 서영은著、 나무생각社)
サブタイトルは「7色の慰安」。
韓国の若い友人が送ってくれた本。フィクションと日々の随想をとりまとめたような散文集。どの話も短すぎてちょっともの足りないが、 本の構成が凝っていて、装幀もとてもしゃれている。
著者は1968年、25歳で文壇にデビューし、1983年、日本の芥川賞に当たるイサン(李箱)賞を受けた作家。
 
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by nishinayuu | 2006-08-18 20:44 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)