カテゴリ:読書ノート( 1115 )

c0077412_17471421.jpg読書会「かんあおい」2006年11月の課題図書『ジェイン・オースティンの読書会』に関連してオースティンを読み始めて、これで4冊目。長編6編の中には前に読んだもの、映画を見たものなどもあるが、この作品は初めて。
ヒロインのキャサリンは17歳で、他の作品のヒロインと同様とても若いけれども結婚適齢期の女性である。彼女の「友人」であるミセス・アレンはおしゃれにしか興味のない人物であり、新しくできた「親友」のイザベラは誠実さとは無縁の人物。そんな人たちと親しくすることに喜びを見いだしているキャサリンも、したがってあまり思慮深い人物とは言えない。ヘンリーがそんな彼女のどこに惹かれたのか、納得できる説明はないが、とにかく彼女はヘンリーの恋人となり、ヘンリーの父親の反対に遭うという事態もあったが、結局めでたしめでたしとなる。この締めくくりの場面は相当ご都合主義でいいかげんである。(2006.11.26記)

☆この作品はProject Gutenberg からダウンロードして読みました。
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by nishinayuu | 2007-01-11 14:34 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
c0077412_17191081.jpgSense and Sensibilityの訳本で、一般には『分別と多感』というタイトルで知られている作品。
舞台は18世紀のイギリス。登場人物たちは中産階級(注)に属する人々で、その関心事は恋愛、結婚、交際、遊興、財産、相続などである。主人公のひとり、エリナは「分別の人」で思慮深くて冷静、もう一人の主人公、妹のマリアンは「多感な人」で情熱的なロマンチスト。もちろんふたりともとびきりの美人である。末の妹、マーガレットは物語の進行にほとんど何の貢献もしていないので、登場させる必要はなかったのではないかと思われる。ただ、この人物を削っても、作者がこの物語をより短くまとめる気になったかどうかは疑問で、日常の会話、エピソードが延々と語られている。おかげで、この時代の中産階級の人々の考え方や暮らしぶりがよくわかる。(2006.11.13記)
(注)中産階級――上は莫大な地代で優雅に暮らす大地主から、下は金利で細々と暮らす人まで。生活レベルは様々だが、とにかく不労所得で生活できる有閑階級のこと。

☆オースティンの主人公たちはいずれも花の盛りの若い女性たちで、この作品のエリナは19歳、マリアンは17歳です。未婚の女性であった作者の代弁者と思われる彼女たちは「若さ」の
基準が厳しく、たとえば第7章の最後に次のようなくだりがあり、のけぞってしまいました。

それにマリアンは三十五歳の男性ともなると感性の鋭さや、物事を楽しむ繊細な能力がたぶんすり切れてしまっているのだろうと認めるだけの物分かりのよさがあった。大佐の高齢に対して人道上必要とされる充分な斟酌をする気にすっかりなっていた。 (アンダーラインはnishina)
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by nishinayuu | 2007-01-07 17:38 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
三冊目のメアリ・クラーク。読者には最初から犯人と犯行の方法が明らかにされており、それを捜査する側がどう明らかにしていくのかが物語られている。衝撃的なタイトルではあるが、『誰かが見ている』と『子供たちはどこにいる』の2作を読んでこの作者に免役ができたので、前2作よりは‘気持ちよく’読めた。ただし、この作品では人が次々に殺されるので‘気持ちよく’という言い方は穏当ではないかもしれない。
疑問が2つ。その1――ケイティ・ディメオは検事補としての仕事はきちんとこなせる精神状態なのになぜ何の警戒もせずに問題の病院に入院したのか。その2――日本人医師の名前のフクヒトって何? 姓名の名の方なら福人、福仁などが考えられるが。こんな変わった姓を作者はどこからとってきたのだろうか。
訳者の後書きに、タイトルはマザー・グースからとられている、とあって日本語訳が載っているので、ここに原詩を記しておく。(2006.11.9記)
HUSH-A-BYE
Hush-a-bye, baby, on the tree top,
When the wind blows the cradle will rock;
When the bough breaks the cradle will fall,
Down will come baby, cradle, and all.
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by nishinayuu | 2007-01-05 20:41 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
マサチューセッツ州東端にある景勝地、ケープコッドを舞台にしたサスペンス。冒頭にまず事件を起こすことが確実な人物が登場する。彼のターゲットはナンシーとかわいいふたりの子供たち。
子供が巻き込まれる事件だということはタイトルを見れば明らかで、実は読みたくなかったのだが、親切な友人が頼みもしないのに貸してくれた本なので、読まないわけにはいかなかったのである。ただ、サスペンスものは、主人公と主人公にとって大切な人間は最後には助かる、というのがお約束なので、どきどきしながらも一方では安心して(?)読める。(2006.11.6記)
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by nishinayuu | 2006-12-31 14:59 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
c0077412_201636100.jpg読書会「かんあおい」2006年12月の課題図書。
母親失格の若くて身勝手なリーのもとで、貧しく寂しい毎日を送る9歳の少女シーオ。友達もいない彼女は図書室で借りた本を読んでは「夢の家族」の一員になることを空想している。そしてある日、シーオはほんとうにその「夢の家族」と暮らすことになる。しかし幸せいっぱいの生活は長くは続かず、シーオは大きな落胆を味わうことになるのだが、シーオが夢の家族と出会うことになった理由が明らかにされていくにしたがって、シーオは現実をしっかり受け止めて力強く歩み始めるのである。(2006.12.17記)

☆カナダ総督児童文学賞を受賞している「優良図書」です。が私としては、前半の幼い少女が虐げられる日々の描写に本を投げ出したくなり、後半は後半でお説教臭さに辟易しました。
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by nishinayuu | 2006-12-29 15:56 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
1977年に出版されたA Stranger Is Watching の全訳。
雑誌編集長で強硬な死刑賛成論者のスティーヴン・ピータースンは、2年半前に妻ニーナを殺害され、今また一人息子のニールと、結婚を考えている相手シャロンを誘拐される。犯人はふたりを駅舎の地下室に閉じこめ、時限爆弾をセットする。爆発の時刻は、ニーナの殺害犯でシャロンが死刑阻止のために奔走していた少年が処刑される予定の時刻と一致していた。
第1章で犯人が登場、着々と犯行の準備が進められ、第7章で誘拐が実行されて、爆弾による死が予告された水曜11:30に向かって犯人対主人公および警察の必死の攻防が続けられる、というサスペンスもの。(2006.11.5記)
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by nishinayuu | 2006-12-22 10:25 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
c0077412_18153591.jpg『한국 현대사』 (서중석著、歴史問題研究所企画、 웅신씽크빅)
1945年の「解放」以降の韓国現代史を膨大な写真資料と絵を織り込んで解説したもの。過去の政策の過ち、過去の政権が伏せてきた事件など、負の部分にも触れている真摯な歴史書である。日本人が天から降ってきたもののように受け入れ、享受してきた「民主主義」を獲得するために、すぐ隣の国の人々が払ってきた犠牲の大きさと重さがひしひしと伝わってくる。
各章のタイトルと内容は以下の通り。

第1章(1945~1948)統一民族国家建設のために――1.夢のように訪れた解放を迎えて 2.深まる左右対立と葛藤 3.反信託統治の渦の中で 4.左右合作を推進する 5.遠く険しい南北協商の道 6.新しい社会を建設する努力

第2章(1948~1959)分断政府樹立と戦争の惨禍――1.眠れない南の地 2.金九、暗殺される 3.民族の悲劇 韓国戦争 4.戦争の渦中にも権力争奪戦が 5.逆風の政治家 曺奉岩

第3章(1945~1959)新しい社会の出現――1.ハングル世代の大挙登場 2.廃墟の上に経済建設が 3.変化する女性 4.労働者は飢え、労組幹部はマカオ服を着て 5.戦争の中で咲いたヒューマニズム

第4章(1960~1961)民主主義への熱望――1.‘血の火曜日’から‘勝利の火曜日’へ 2.許政過渡政府と内閣責任制改憲 3.経済第一主義を打ち出した張勉政権 4.行こう北へ、来たれ南へ

第5章(1961~1979)‘軍靴’と情報・鉄拳政治18年――1.軍人たちの世の中 2.朴正煕政権の成立 3.永久執権を目指して 4.超強権体制の登場と民主勢力の抵抗 5.銃声に倒れた維新独裁

第6章(1961~1979)経済発展の光と影――1.農業社会から産業社会へ 2.揺さぶられる成長第一主義 3.極端な反共・国家主義教育 4.大衆文化のない大衆社会

第7章(1979~ )民主主義のために、統一のために――1.現代史の新しい里程標、光州抗争 2.新軍部と民主化勢力の激突 3.民主主義の勝利、6月民主大抗争 4.前進する民主主義 5.統一に向かって
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by nishinayuu | 2006-12-20 09:54 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
c0077412_20183893.jpgノーサムプトシアのマンスフィールド・パークに広大な屋敷を構える准男爵、サー・トーマス・バートラムの一族郎党とその友人、知人たちが繰り広げる物語。オースティンの長編6編のうち、後半期(30代後半)に書かれた作品の一つ。人々の言動と日常の出来事があきれるほど事細かく記述されており、物語の世界に入り込んでしまえば実に面白く読める。
ヒロインのファニー・プライスはサー・トーマスの姪で、子だくさんの実家から引き取られ、9歳の時からマンスフィールド・パークで暮らしている。ファニーが生真面目で控えめな少女であるのに対して、サー・トーマス家の娘ふたりは野暮で軽はずみな人間として、また友人のクロフォード兄妹は都会風で粋だが浅薄な人間として描かれている。思慮深く、ファニーの唯一の理解者でもあるエドマンドが、ある時からミス・クロフォードに魅惑されてしまうので、主要人物の中で終始一貫して思慮深い人物はファニーただひとりなのである。ただし、ファニーには華やかさも溌剌としたところもないので、魅力的なヒロインとは言い難い。

☆読書会の課題図書(2006年11月) 『ジェイン・オースティンの読書会』の関連図書として読みました。
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by nishinayuu | 2006-12-15 11:33 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
c0077412_20193052.jpg原題は『천변풍경』(박태원著, 깊은샘)。1936年(著者27歳)に発表された50章からなる長編小説。
ソウル市の中央を流れる清渓川の洗濯場に集まる人たち、川沿いにある床屋や薬局などで働く人たち、川沿いの道を通行する人たちの織りなす人間模様が、ソウル弁を交えた生き生きとした文章で丁寧に描かれている。田舎から出てきた少年、婚家を飛び出したあと悪い男に騙されそうになっている娘、カフェで働く日本名の源氏名をもつ女たちなどに注がれる著者の目は温かく、口さがない女、旦那を手玉に取る女、横暴な男、破廉恥な男なども、非難の対象としてではなくあくまでもひとつの風景として描かれている。時代は変わっても庶民の心情や日常生活はそれほど大きくは変わらないことを改めて感じさせてくれる作品である。

☆作者についてはマイリンクにある「韓国の著名人」ののところをご覧ください。
☆韓国語で読みました。第1章は洗濯場に集まった女たちのおしゃべりによって物語の登場人物が一通り紹介される形になっており、あまりに難しくて途中で何度も諦めかけました。が、そこをなんとかクリアしたあとは、内容のおもしろさにひかれて楽しく読み進めることができました。
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by nishinayuu | 2006-12-12 19:31 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
c0077412_16185963.jpg原題はPersuasion。オースティン最後の完成作品で、最も美しく繊細な作品とされている。
ヒロインのアン・エリオットは気立てのよさ、思慮深さ、知性、感受性、姿形の美しさに恵まれた理想的な女性である。物語はこのようなヒロインの視点から、整然とした筆致で丹念に描かれているので、猥雑さやどぎつさとは無縁である。読書会の課題図書(11月)の関連図書として、あまり期待もせずに読んでみたのだが、意外や意外、最後のクライマックスでは感動の涙が出てしまった。翻訳者によるとこのクライマックスの部分は「イギリス小説の中でも指折りの美しい愛の場面のひとつ」なのだそうだ。
アンの恋人であるウェントワース大佐を始め、海軍関係者が多く登場するのは、イギリスが「七つの海を制覇」していた時代の物語なればこそであろう。

☆画像はWordsworth Classicsのものです。
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by nishinayuu | 2006-12-04 10:07 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

読書と韓国語学習の備忘録です。


by nishinayuu