『あの夏の終わり』(リサ・グリュンワルド、訳=古賀林幸、草思社)


c0077412_09381878.jpgSummer』(Lisa Grunwald,1985

副題にA storyabout loving …and letting goとある。すなわち本書は強い愛情で結ばれた家族の物語であり、その中の一人があの世へ旅立つのを残される者たちがそれぞれのやり方で受け入れていく物語である。舞台はマサチューセッツ州の半島ケープ・コッドの沖合にあるサンダース島。ケープ・コッドと付近の島々はニューイングランドの中流階級が好んで夏を過ごすリゾート地である。

63日、父親の操縦する自家用飛行機で島へ向かうところから物語は始まる。語り手のジェニファーは18歳。シカゴからボストンへと飛行機、タクシーを乗り継ぎ、父親が自家用機を置いている郊外の飛行場に着いて、遠くからこちらを見ている両親の姿が見えたとき、ジェニファーは心の中でつぶやく。「もうすぐ死ぬんだ」。しかし、背骨の腫瘍で余命いくばくもないはずの母親のルルは、まだいつも通り前向きで、楽天的だった。父親は日常の細々したことはすべて妻に頼っている芸術家気質の彫刻家で、病気の説明を一通りしたあと、話は唐突に(とジェニファーは感じた)「ネプチューンの馬」に飛んでしまう。強い愛情で結ばれている二人が、永遠の別れを前にしてすこしも動揺を見せないことがジェニファーには理解できない。そこでジェニファーは、父親は現実を受けとめるのを拒絶しているのであって、実際に妻から取り残されたら生きていけないだろうから、なんとかして二人を同時にあの世へ送ろう、と思い立つ。

7月から8月へと時が移るにつれてルルの病状はみるみる悪化する。その間ジェニファーの企ては遅々として進まず、ただその企てのおかげで知り合ったベンジャミンへの恋心は募っていく。初めての恋に戸惑うジェニファーに、年齢相応に経験を積んでいる姉のヒラリーは具体的な助言を与える。そして母親のルルはある日、それはルルが死を迎えつつある日だったが、「ジェニファーが愛するに値する人間だ」という確かな自信を与えてくれたのだった。それが、ルルがジェニファーに与えてくれた最後の贈り物だった。そんな中で父親は「回転木馬」の制作に熱中していた。ジェニファーはその「回転木馬」を母親ルルへの最後のプレゼントだと思っていたが……。

メモ:回転木馬の見物人に見える側を「ロマンス・サイド」と呼び、いちばんてっぺんに取り付けられる木馬を「フライング・ジェニー」と呼ぶ。

2017.9.28読了)


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# by nishinayuu | 2017-11-20 09:40 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

『ギリシア人男性、ギリシア人女性を求む』(フリードリヒ・デュレンマット、白水Uブックス)


c0077412_09535985.jpgGriechesucht Griechin』(Friedrich Dürrenmatt1955

主人公の名前はアルノルフ・アルヒロコス。彼の生きている世界は堅牢で、時間どおりで、道徳的で、上下関係がはっきりしていた。彼の世界秩序のいちばん上、この道徳的世界構造の頂点には大統領が君臨していた。その彼がシェ・オーギュストに初めて現れたのは9ヶ月前の5月のことだった。そのとき彼は「最後から二番目のキリスト者の旧新長老会派」の司教の肖像を小脇に抱えていて、カウンターの上に書けてある大統領の肖像の隣に掛けて欲しい、と言った。3週間後、アルヒロコスはプティ・ペイザン機械工場社長のサイン入り肖像を持ってきて、カウンターの上の3番目の位置に掛けて欲しい、言った。シェ・オーギュストのカウンターの向こうに立っているジョルジェット(オーギュスト・ビーラーの妻)はこれには反対した。プティ・ペイザンはマシンガンを製造しているからと。アルヒロコスが次に持ってきた画家パサップの複製画もジョルジェットに拒否されると、アルヒロコスは気を悪くして、三日間姿を現さなかった。それからまた彼は店にやってくるようになり、マダム・ビーラーはそうこうするうちにムッシュ・アルノルフのあれこれを知るようになった。

すなわち、肉付きがよくて大柄だが青白い顔で内気な、小さな縁なし眼鏡を掛けたアルノルフ・アルヒロコスは、45歳の独り者で、シェ・オーギュストではミルクとミネラルウォーターしか飲まず、ベジタリアンで、女を知らない。プティ・ペイザン機械工場の経理係としてそれなりの収入はあったが、彼の世界秩序の8番目に位置する弟ビビ・アルヒロコス一家のせいで、トイレに囲まれた暗い穴蔵のような屋根裏部屋に住んでいる。そんな状況から彼を救い出すには結婚させるしかないと考えたマダム・ビーラーは、『ル・ソワール』紙に結婚広告を出すようアルヒロコスを説得する。そして彼が文面を考えた広告「ギリシア人男性、ギリシア人女性を求む!」が紙面に掲載されると、翌々日には返事が来た。差出人はクロエ・サロキニ。かくして1月のとある日曜日にシェ・オーギュストで待ち合わせることになり、目印の赤いバラを身に付けて落ち着かない気分で待っていたアルヒロコスの前に現れたのは、とんでもなく魅力的で、あり得ないほど美しくて気品に満ちた女性だった!

アルヒロコスの前に目の眩むような世界が開けていき、やがてどんでん返しに次ぐどんでん返しが展開していく。そしてなんとこの小説には二種類の結末――デュレンマットが本来書きたかった結末「終わり」と娯楽小説として読み進めてきた読者向けの結末「終わり」(作品の中では「貸本屋のための結末」となっている)が用意されているのだ(?!)。これについては「訳者あとがき」に専門的な解説が記されていて、たいへんお勉強になりました。(2017.9.25読了)
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# by nishinayuu | 2017-11-16 09:56 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

『보건교사 안은영』(정세랑,민음사)

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『保健教師アン・ウニョン、チョン・セラン2015

本書は「現代の若い作家09」シリーズの一つで、10の章からなる長編小説である。舞台は私立のM高校。各章の主要登場人物と「事件」は以下の通り。とにかく変な事件が起こる学校なのである。


①「愛してるよ、ジェリー・フィッシュ」――男子学生チョ・スンゴンの女子学生ジェリー・フィッシュ(クラゲちゃん)への切ない恋。

②土曜日のデイトメート――物語の主人公二人(アン・ウニョンとホン・インピョ)が登場。保健教師アン・ウニョンは数年前に滑り台から落ちて死んだジョンヒョンと今も交流している。ホン・インピョは漢文教師でM高創設者の孫。

③ロッキーと混乱――パク・ミヌ(混乱)とク・ジヒョン(ロッキー)の二人組が引き起こす騒動。

④ネイティヴ教師のマッケンジー――カリフォルニア育ちの韓国人マッケンジーはウニョンにはどこか気に触る人物だったが、実は悪質な特殊能力者だった。彼に片思いをしたユジョンの運命やいかに。

⑤アヒル先生――ある日学校の池に家鴨の子が現れて、生物教師ハン・アルムの奮戦の日々が始まる。

⑥レイディバグ・レイディ――タレント活動をしている生徒レディ(レイディではない)の家に鬼神が出るというので、ウニョンが23日の出張調査に出かける。因みにレイディバグ(テントウムシ)・レイディはビジュアルパンクバンド第1世代の父親が出したアルバムのタイトル。

⑦街灯の下のキム・ガンソン――ウニョンの前に現れた中学時代の同級生ガンソンには影がなかった。死後1週間だった。しばらくウニョンと過ごしたあと、やっと消えることができそうだ、と言ってガンソンが消えたとき、ウニョンは久しぶりに泣いた。(この章がいちばん気に入りました。)

⑧転校生オム――ペク・ヘミンは古典的な丸顔美人。実は河北慰禮城(5世紀)時代の生まれで、これまで50回近く生まれ変わっている。世のため人のためにオム(疥癬ダニ)を食べ続け、寿命はいつも20年ほど。もっと生きたいというヘミンにウニョンとインピョが手をさしのべる。

⑨穏健な教師パク・デフン――歴史教科書の選択で校長と対立し、教室に生徒ではなく死人たちが坐っているという悪夢を見るようになった。ウニョンとインピョのアドヴァイスによって悪夢からもそりの合わない校長からも解放されたデフンは、「穏健な教師」を脱していく。

⑩突風の中で二人は抱き合っていたよね――母親にせっつかれてお見合いしたインピョは相手のシン・ジヨンが気に入ってしまう。花模様が大好きなウニョンとは全く違うタイプの女性だった。それから昇龍現象などのアニメ風な展開を経て、結局インピョはある日、花模様のカーテンが揺れる部屋で花模様の布団にくるまっている自分を見いだすことになるのだった。

韓国語に関するメモ――「時間をつぶす」に当たる表現

*3학년 무리가 우유갑을 차며 시간을 죽이고 있었다.

*유령이 시간을 보내기에 보건실 만큼 좋은 데도 없어서……

2017.9.11読了)


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# by nishinayuu | 2017-11-12 09:06 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

翻訳練習 課題2


c0077412_10270221.jpg今学期の韓国語講座「翻訳の秘訣」で練習したものの記録です。(2017.10.23



秘訣-4 一つの文に時間や主題の異なる内容が入っているときは、文を分けて接続語を補う。

原文:彼はイタリアに行って料理を勉強し、帰国後は自分の店を持つに至ったが、今度はワインに興味を示し、フランスで本格的に学ぶ必要を感じてついにソムリエの資格まで取った。

訳文:그는 이탈리아에 가서 요리를 배웠고 귀국 후 자신의 가게까지 열렀다. 그런데 이번에는 와인에 흥미가 생겼다. 프랑스에서 본격적으로 배울 필요를 니낀 그는 드디어 소믈리에 자격까지땄다.

秘訣-5 副詞を活用する。

原文:ついに日頃の努力が試される日が来た。うまく演奏できるだろうか。不安が過ぎらないわけではないが、今さら後戻りもできない。

訳文:드디어 평소의 내 노력을 시험할 날이 왔다. 과연 연주를 잘할 수 있을까? 불안이 마음속을 스쳐가지만 이제와서 되돌아갈 수도 없다.

秘訣-6 意味を明確にするために主語を補う。

原文:連絡を受けた田中部長は突然席を立った。「今日の会議は中止だ」と言ったきり、急ぎ足で会議室を出て行ってしまった。

訳文:연락을 받은 다나카부장님이 갑자기 자리에서 알어서며 말했다. “오늘 회의는 취소하겠어.” 그리고 그는 바삐 회의실을 나가버렸다.


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# by nishinayuu | 2017-11-08 10:29 | 翻訳 | Trackback | Comments(1)

『The Oversight』(H.H.Munro, Doubleday & Company.Inc.)

c0077412_13331815.jpgThe Complete Worksof Sakiに収録されている1編でタイトルの意味は「見落とし」あるいは「手抜かり」といったところ。1923年の作品。



ホームパーティーに招く客の人選を任されたレディ・プラウシュ。名前を書いたメモ用紙をあれこれ組み合わせながらレナ・ラドゥルフォードに言う。「まるで中国のパズルだわ。」(あるポーランド人がフィンランド語を「ヨーロッパの中国語」と言っていたのを思い出しました。「ちんぷんかんぷん」ということですね。)夫のサー・リチャードからは、執筆に集中したいのでとにかく和やかなパーティーにして欲しい、と言われている。過去のパーティーではいろいろなトラブルがあった。前の年は女性参政権運動の問題で、さらにその前年はクローヴィス・サングレイルがクリスチャン・サイエンスの祭司的立場の女性にいたずらを仕掛けたせいで、パーティーは大荒れになり、サー・リチャードの書いたものは批評家たちに酷評される羽目になった。

そんな過去の悪夢を繰り返さないようにとレディ・プラウシュが悩んでいるのは、アトキンスンとマーカス・ポパムのふたりだ。彼らはどちらも穏健なリベラルで福音派であり、女性参政権にはどちらかというと反対で、ファルコナー・レポートとダービーのクラガヌールに関する判定は支持している。そこまでは問題なしなのだが、唯一わからないのが彼らの「動物の生体解剖」に対する考えだ。それを聞いたレナ・ラドゥルフォードが、簡単に「賛成・反対」で答えられるアンケートを葉書で送ったらどうか、と提案する。さっそく葉書が送られ、返信が届いて、二人とも「生体解剖」には反対だということがわかり、レディ・プラウシュは用意してあった招待状を二人に送った。ところがアトキンスンとポパムがハイエナよりも凄まじい格闘をはじめて、パーティーはぶちこわしになってしまった。人物調査に大きな見落としがあったせいだった。

本作もサキ独特の雰囲気が楽しく読める作品である。当時の社会の出来事や人々の関心事が盛り込まれていて、とてもお勉強になる作品でもある。作中に取り上げられている主な出来事・事件を記しておく。

*婦人参政権運動――大きな社会運動となってアメリカにも波及した。

*トルキスタンの土地保有権問題

*ファルコナー・レポート――1911年。予算決定における下院優先の原則を打ち立て、累進課税に対する上院の抵抗を排除。

*クラガノール――1913年のエプソムダービーで先頭でゴールしたが、進路妨害で失格となった。このレースでは婦人参政権論者がレース中の馬群に突進して転倒し、4日後に死亡するという事故もあった。

*バルカン戦争――イギリス世論もギリシャ派とブルガリア派に分かれた。

2017.9.1読了)


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# by nishinayuu | 2017-11-04 13:35 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

『銘々のテーブル』(テレンス・ラティガン、訳=能美武功、青空文庫)

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Separatetables』(Sir Terence Mervyn Rattigan, 1954


本作は2幕の戯曲で、第1幕は12月、第2幕はその1年半後となっている。舞台はボーンマス近くのボーリガードホテル。登場人物は以下の通り(ほぼ登場順)。


メイベル――中年のウエイトレス。無口で陰気。

モード・レイルトンベル――滞在客で65歳。銀狐のストールが特徴。

グラディス・マシスン――役人の未亡人で年金生活者。ネズミのような顔。モードの金魚の糞。

ミーチャム――65歳の女性。いつも競馬情報誌「今日のレース」を読みふけっている。

ドリーン――若いウエイトレス。おしゃべり。

ファウラー――パブリックスクールの元校長。70歳。

アン・シャンクランド――スーツケース4個と帽子箱を持ち、地味なホテルには場違いなメイフェアーの服で現れた40歳くらいの女性。

パット・クーパー――ホテルの支配人。風貌も動作も男っぽい女性。ミーチャムに「あなたは自分で足りてるっていうタイプなの」と言われる。

ジョン・マルコム・ラムズデン――40代前半の新聞記者。パット・クーパーと親密な関係にある。実はアンと3年の間結婚していたことがあり、このホテルで8年ぶりに再会。

チャールズ・ストラットン――短期滞在の若者。外科医を目指している。

ジーン・タナー――短期滞在の若い娘。キャリアウーマンを目指している。

ホテルの客たちは大部分が長期滞在客で、いつも決まった連れと決まったテーブルに坐り、つかず離れずの交流をしている。そんな客たちにとってアン・シャンクランドの登場はかなり衝撃的だった。彼女とジョン・マルコム・ラムズデンは最初のうちぎくしゃくしていたが、次第に距離を縮めていき、ついには同じテーブルに坐ることになって第1幕の幕が下りる。

2幕では登場人物が少し入れ替わる。第1幕で短期滞在者として登場した二人が、なんと夫婦として、赤ん坊連れで現れる。赤ん坊はヴィンセント・マイケル・チャールズと名付けられて。また、二人組だったモードとグラディスが三人組になっている。モードの娘で33歳のシビルが加わったのだ。この娘は服装もみすぼらしく、おどおどしていて、母親の言いなりになっている。つまりモードは子分を二人持つことになったわけだ。さらに、ポロックという(自称)退役少佐も新たに登場する。彼が夕食の時にみんなに挨拶したとき、支配人のクーパーが「ポロックさん」とも「ポロック少佐」とも聞こえるように発音した、とある。sirmajorでは音が違いすぎるし、音が近いsergeantは曹長だし……原文が知りたいものである。

本作は1954年に舞台で初演され、1958年には『旅路』というタイトルで映画化されている。映画のキャストはデボラ・カー(シビル)、リタ・ヘイワース(アン・シャンクランド)、デヴィッド・ニーヴン(ポロック少佐)、バート・ランカスター(ジョン・マルコム)など。バート・ランカスターとデヴィド・ニーヴンはぴったりという感じがする。(2017.9.1読了)


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# by nishinayuu | 2017-10-31 10:03 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

『A Woman of No Importance』(Oscar Wilde)


c0077412_11071853.jpg戯曲『つまらぬ女』(オスカー・ワイルド)

タイトルのno importanceは「取るに足りない」、「どうでもいい」とも訳せる。本作にはこのタイトルに合いそうな女が大勢登場するので、だれのことを指しているのか、だれがその台詞を言ったのか、はかなり読み進んでいくまでつかめない。それまではイギリスの有閑階級の男女の会話に付き合って、登場人物ひとりひとりの言動を楽しんでいればよい。そこへ新たにひとりの女性が登場すると、物語の雰囲気ががらりと変わる。そうしてそれまで場を盛り上げたり仕切ったりしていた人物の正体が次第に明らかにされていく。前半は緩やかに、後半は怒濤の如く進行していき、最後にはNo importanceと言ってのけた人物がその言葉をそっくりそのまま返されるという、機知にあふれた作品である。この作品はあらすじを読むと魅力が10分の1くらいになってしまうので、紹介は登場人物の名前と最小限の情報に留めておく。

*レディ・ハンスタントン――カントリーハウスの所有者。

*レディ・キャロライン――手のかかる夫にかまけていて、会話は上の空の女。

*レディ・スタッフィールド――美人ではあるが考えが浅はかな女。

*ミセズ・アロンビィ――気の利いた会話ができる才気にあふれた女。

*ヘスター・ワースリィ――イギリス上流社会の人々の中に舞い込んだアメリカ娘。雰囲気に気押されない自然体の言動で人々を圧倒する。

*ミセズ・アーバスノット――レディ・ハンスタントンの古い友人。

*ロード・イリングワース――才覚・容姿・財力に恵まれた怖いものなしの男。

*サー・ジョン・ポンティフラクト――妻キャロラインの言いなりになっているふがいない男。

*ジェラルド・アーバスノット――銀行勤めの青年。ロード・イリングワースから秘書になるよう求められ、明るい将来を夢見ている。

*ドーベニィ――副司教。

*ミスター・ケルヴィル――国会議員。

ずっと昔の学生時代に購入したワイルド全集にはこの作品が収録されていなかった(たとえ収録されていても今となっては文字が細かすぎて読めなかっただろうが)。そこで今回はProject Gutenbergからダウンロードし、読みやすい書体に換えて読んだ。便利な時代になりました。(2017.8.21読了)


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# by nishinayuu | 2017-10-27 11:09 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

『間取りと妄想』(大竹昭子、亜紀書房)


c0077412_09275223.jpg本を読みながら、作中人物が町を歩いている描写があれば街の地図を、作中人物が家の中を動き回る描写があれば家の間取り図を頭の中に描くのはだれでもやることだろう。私の場合、本に出てくるのが実在する場所であれば、地図を広げながら読むことも多い。そして間取りは、書中の文言を頼りに自分で描いてみるのだが、これがなかなかうまくいかない。家全体の形、方位、広さ、部屋と部屋の位置関係を示す文言が不十分なことが多いからだ。それで読み始めに書いた間取り図が、そのあとの描写とは合わなくなって書き直すこともあるし、何度書き直しても納得のいく間取り図が完成しないことも少なくない。そんな「未完成の間取り図」に悩む者にとって、本書の出現は衝撃的だった(大げさな!)。

本書は13の作品を収録した短編集である。そしてすべての作品に間取り図がついている。というより、まず間取り図があって、本文はその間取り図から妄想したもの、という形になっているのだ。間取りはいずれもユニークで、そこから妄想された話も各自各様に風変わり。各作品の冒頭に間取り図が提示されているのはもちろんだが、すべての間取り図が別刷りで添付されている(大きさと紙の厚さがイマイチではあるけれど)。そうした作り手側の遊び心と仕掛けを素直に受け入れて楽しむのがこの本の正しい読み方であろう。

特に印象に残った作品は次の6――船の舳先にいるような/ふたごの家/どちらのドアが先?/浴室と柿の木/家の中に町がある/カメラのように

その他の収録作品――隣人/四角い窓はない/仕込み部屋/カウンターは偉大/巻貝/月を吸う/夢に見ました

*メモ1――「ふたごの家」に「身体のサイズが同じなのをいいことに服はおもやいにするし」という文があり、「おもやい」?と思って調べてみました。長崎、博多などで使われる言葉で、意味は「いっしょに使う/共有する/share」だとか。動詞の「もやう」(古語では「もやふ」)の名詞形「もやい」に美化語の「お」がついたものだそうです。初めて知った今知った。

*メモ2――「巻貝」に「作業がひと段落したときに」という文があります。これは明らかに「いちだんらく」のまちがいですね。でも最近は誤読のほうが幅をきかせているので、そのうち「いちだんらく」と言ったり書いたりしたら笑われることになるかもしれません。

2017.8.18読了)


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# by nishinayuu | 2017-10-23 09:30 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

翻訳練習 課題1

今学期の韓国語講座「翻訳の秘訣」で練習したものの記録です。

秘訣-1 よい文は一息に読める。(原文を組み立て直すことも考えてみる)

原文:子どもに健康な遊び、教育、文化を提案する(株)〇〇は、独自のキャラクターを通じて、自然に優しいデザインを始め教育コンテンツ、流通などを新たに提案する、子どものための環境親和型ビジネスです。

c0077412_10223842.jpg  訳文() 〇〇 어린이에게 건강한 놀이, 교육, 문화를 제안합니다. 독자적인 캐릭터를 통해 자연진화적인 디자인, 교육 컨텐즈, 유통 등을 새롭게 선보이며 어린이를 위한 진환경 비즈니스를 전개합니다.

秘訣-2 読点を活用する。(韓国語の読点の使用頻度は低いが、必要に応じて適切に使うこと)

原文1:先生は、感動して泣きながら、走る子どもたちを見つめていた。

訳文:선생님은 감동받아 울면서, 달리는 아이들을 자켜봤다.(意味を明確にするための読点)

原文2:大きいだけがとり得の、私の絵。

訳文:크다는 것만이 장점인, 그림.(強調のための読点)

秘訣-3 長すぎる文は適当に分ける。

原文:(株)〇〇では、お客様によりスムーズにプロジェクトを導入していただくために、お客様とともに悩み、差別化された顧客サービスを提供するとともに、完璧な技術移転を通じてお客様の技術力を一層強化することに努めています。

訳文:()○○ 고객이 더욱더 하게 프로제크트를 도입할 있도록 고객과 함께 고민하며 차별화된 고객 서비스를 제공합니다. 또한 완벽한 기술이전을 통해서 고객의 기술력을 한층 경화하는 노력하고 있습니다.


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# by nishinayuu | 2017-10-19 09:52 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)

『모르는 여인들』(신경숙, 문학동네)


『見知らぬ女たち』(申京淑)

c0077412_09133312.jpg本書は2003年から2009年にかけて発表された七つの作品が収められた短編集。2015年の盗作疑惑以来、ちょっと読む気の失せていたこの作家の作品を久しぶりに読んでみた。申京淑は『浮石寺』で惚れ込んで以来、いろいろ読んできた作家である。物語の流れが自然で、文章は簡潔、使われる言葉の一つ一つが的確で共感できる――そんな特徴はこの作品集でも健在で、読み終わった今の感想は「やっぱり猫が好き」じゃあなくて「やっぱり申京淑が好き」ということになりました。ただし、六作目の猫が登場する作品は、登場人物に共感できないし、なんとなく気持ちのよくない内容で、「やっぱり猫は好きじゃない」と思ったのでした。収録作品は以下の通り。

세상 끝의 신발――朝鮮戦争時の少年兵ふたり。逃げるときに15歳の少年は傷みの少ない自分の靴を16歳の少年に譲って先に逃がした。16歳は終生15歳を支えた。16歳だった男の娘は記者になり、15歳だった男の娘は結婚、出産のあと離婚し、精神を病んでコドモに返った。記者の娘が語るふたりの父とふたりの娘の物語。

화분이 있는 마당――語り手はインタビュアー。幼い頃からの長いつきあいの恋人から突然別れを告げられ、ことばは出なくなり、食べ物も喉を通らなくなる。近所の空き家を手に入れた後輩の女性が、荒れ果てていた庭に花を作り始める。語り手が、しばらく留守にすることになった後輩のために水やりに通っていると、その家の一郭にもう一人、女性が住んでいることがわかり……。

그가 지금 풀숲에서――運転中に他の車にぶつかられた男。気がついたら草むらに放り出されていて、身体がまったく動かない。助けを呼ぼうと声を張り上げるが、そのうち声も出なくなる。道路を通り過ぎる車の音は聞こえるが、人の気配はないまま、また夜を迎えようとしている。妻の左手が勝手に動いて男の顔を殴ったり、ものを壊したりするようになったのは、仕事にかまけていて妻の気持ちを考えもしなかった自分のせいかもしれない。死の予感にさいなまれながら、男の意識はあちこち彷徨う。

男の目に映るもの、意識に上るものだけから成り立っていて、ロブ・グリエの『迷路の中で』を彷彿とさせる極めて印象的な作品である。

어두워진 후에――母と兄と祖母の無残な死体を発見した男。あろうことか殺人の嫌疑を掛けられ、理不尽な取り調べを受けるはめに。連続殺人犯が捕まって男の嫌疑は晴れたが、家族が惨殺された家にはいたたまれず、あちこちさまよい歩く。やがて、ふと出会った女のさりげない心遣いに、男はようやく、家に帰ろう、と思い立つ。

성문 보리수――それぞれの道を歩んだ女たちの物語。語り手は韓国をあとにして久しい友人を訪ねてドイツへ。その友人とフランクフルトの町を歩きながら、友人が異国で暮らすようになった事情を知っていく。そして連絡のとれなくなっていたもう一人の自死についても。

この作品は「フランクフルト観光旅行記」の感があり、2015年に訪れたこの街を思いながら懐かしく読んだが、観光案内的な部分が少し多すぎて主題が散漫になったような気がしないでもない。歌曲・菩提樹の歌詞は「泉に沿いて茂る菩提樹」なのになぜ「城門前の菩提樹」なのかと思って調べてみたら、原詩は「城門前の泉の菩提樹」だった。

숨어 있는 눈――(内容省略)

『모르는 여인들――(内容省略)

2017.8.9読了)


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# by nishinayuu | 2017-10-15 09:17 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)