2017年 11月 20日 ( 1 )

『あの夏の終わり』(リサ・グリュンワルド、訳=古賀林幸、草思社)


c0077412_09381878.jpgSummer』(Lisa Grunwald,1985

副題にA storyabout loving …and letting goとある。すなわち本書は強い愛情で結ばれた家族の物語であり、その中の一人があの世へ旅立つのを残される者たちがそれぞれのやり方で受け入れていく物語である。舞台はマサチューセッツ州の半島ケープ・コッドの沖合にあるサンダース島。ケープ・コッドと付近の島々はニューイングランドの中流階級が好んで夏を過ごすリゾート地である。

63日、父親の操縦する自家用飛行機で島へ向かうところから物語は始まる。語り手のジェニファーは18歳。シカゴからボストンへと飛行機、タクシーを乗り継ぎ、父親が自家用機を置いている郊外の飛行場に着いて、遠くからこちらを見ている両親の姿が見えたとき、ジェニファーは心の中でつぶやく。「もうすぐ死ぬんだ」。しかし、背骨の腫瘍で余命いくばくもないはずの母親のルルは、まだいつも通り前向きで、楽天的だった。父親は日常の細々したことはすべて妻に頼っている芸術家気質の彫刻家で、病気の説明を一通りしたあと、話は唐突に(とジェニファーは感じた)「ネプチューンの馬」に飛んでしまう。強い愛情で結ばれている二人が、永遠の別れを前にしてすこしも動揺を見せないことがジェニファーには理解できない。そこでジェニファーは、父親は現実を受けとめるのを拒絶しているのであって、実際に妻から取り残されたら生きていけないだろうから、なんとかして二人を同時にあの世へ送ろう、と思い立つ。

7月から8月へと時が移るにつれてルルの病状はみるみる悪化する。その間ジェニファーの企ては遅々として進まず、ただその企てのおかげで知り合ったベンジャミンへの恋心は募っていく。初めての恋に戸惑うジェニファーに、年齢相応に経験を積んでいる姉のヒラリーは具体的な助言を与える。そして母親のルルはある日、それはルルが死を迎えつつある日だったが、「ジェニファーが愛するに値する人間だ」という確かな自信を与えてくれたのだった。それが、ルルがジェニファーに与えてくれた最後の贈り物だった。そんな中で父親は「回転木馬」の制作に熱中していた。ジェニファーはその「回転木馬」を母親ルルへの最後のプレゼントだと思っていたが……。

メモ:回転木馬の見物人に見える側を「ロマンス・サイド」と呼び、いちばんてっぺんに取り付けられる木馬を「フライング・ジェニー」と呼ぶ。

2017.9.28読了)


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by nishinayuu | 2017-11-20 09:40 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)