2017年 09月 17日 ( 1 )

『ロスチャイルドのバイオリン』(アントン・チェーホフ、訳=児島宏子、未知谷)


c0077412_12135624.jpgСкрипка Ротшильла(Антон Чехов)

絵=イリーナ・ザトゥロフスカヤ(Ирина Затуловская

物語の舞台はロシアの小さな町。主人公の一人はロシア人のヤーコフ、通称ブロンザ(青銅)。妻のマルファと一部屋きりの小さな家で暮らすヤーコフの本職は棺桶作りだが、ときたまバイオリン弾きとして副収入を得ている。ロシアの歌の演奏に長けていて、オーケストラの席におさまるとたちまち顔が紅潮し、演奏に熱中する。もう一人の主人公はユダヤ人のロスチャイルド。ヤーコフが呼ばれていくユダヤ人オーケストラでフルートを吹いている。もちろん、著名な富豪とはなんの関係もない。このフルート奏者はとても楽しい曲でさえ、なんとも哀れっぽく吹く。

別にこれといったわけもないのに、ヤーコフはだんだんユダヤ人、とりわけロスチャイルドに対して憎しみとさげすみの情を抱くようになり、言いがかりをつけ、悪口を浴びせたかと思うと、殴りかかろうとさえした。それでヤーコフはどうしても人が足りないというとき以外はオーケストラに呼ばれなくなる。

そんなある日、長年連れ添ったマルファが病にかかり、はるか昔の思い出をヤーコフに語りながら逝く。幼くして亡くなった明るい髪の子ども、三人で歌を歌った川の畔の柳の木陰……。けれどもヤーコフはなにも覚えていない。

やがてヤーコフ自身も病にかかって、川の畔にやって来たとき、憎しみや悪意でいっぱいだった自分の人生が大きな損失だったことを悟る。いよいよ最期のとき、ヤーコフは司祭に言う。「このバイオリンをロスチャイルドにあげてください」。

本書は児童書の体裁の絵本になっている。絵の作者は1954年モスクワ生まれ。父は宇宙ロケット設計者で母は画家という家庭で育ち、5歳の頃から絵と詩をかいたという。フレスコ、絵画、陶器、書籍デザイン、詩作、詩集など、広範囲に活躍しており、作品は世界12カ国の美術館に収蔵されているという。(本書見返しより)

「ロスチャイルドはヤーコフから一サージェン離れたところで立ち止まった。」という文があり、2.134㍍という注がついている。さらに調べてみた結果は以下の通り。

サージェンは中世ロシアの単位で、ウクライナ、エストニア、ラトビアなどでも用いられた。古くは長さが一定しなかったが、18世紀以後は1サージェン=3アルシン=2.134㍍に固定され、メートル法施行によって廃止された。

2017.7.8読了)


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by nishinayuu | 2017-09-17 12:14 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)