2017年 08月 28日 ( 1 )

『済州島で暮らせば』(金蒼生、新幹社)


c0077412_09382963.jpg著者は大坂で生まれ育った在日コリアン二世。中学までは日本名で日本の学校に通い、高校から朝鮮学校に通ったという。2011年、60歳のときに、「生まれる地を選べなかった。せめて死に場所は選びたい」と、父祖の地である済州島に夫とともに移住し、定住している。


本書は2011年から2016年までの思いと体験を綴ったエッセイ集。新参者の素朴な驚きと感動ではじまった著者の済州島暮らしは、やがて島の歴史と文化を熱く語る済州島人としての暮らしへと変容していく。本書は観光地としての済州島しか知らない読者には、本書の帯にあるように「済州島の深層心理と出会う済州島入門書」となるだろう。それと同時に本書の後半部分は「韓国社会の性格と行動パターンに出会う韓国入門書」としても読める。

2014年の「現在を撃つ四十五年前のエッセイ」の冒頭に、台風のせいで雨が降り続いて外仕事ができないので、手許にある『小林勝作品集』を読む話が出てくる。この作家や作品集については置いておいて(!?)、著者がこのときの台風の名前ノグリ(狸)について「何故こんな名前が採用されたのだろう」と疑問を投げかけている点について一言。

2000年から台風の名前は「台風委員会」の加盟国(14カ国)が提案した140の名前を発生順に付けることになり、韓国はケミ(蟻)、チェビ(燕)、ナリ(百合)、ノグリ、チャンミ(薔薇)などを提案している。2014年に8番目に発生した台風がちょうどノグリの番だったというだけのことだ。あるいは著者はそれを承知のうえで、台風委員会に提案する前の段階で、名前の候補の中から「何故こんな名前が採用されたのか」と韓国の提案者に疑問を呈しているのだろうか。疑問の真意がわからない曖昧な文章に、しばし悩んでしまった。ついでに言えば、本書は校閲、校正の不備が少なくないため、内容にも全幅の信頼は置けないように思えてくるのが残念だ。(2017.5.26読了)


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by nishinayuu | 2017-08-28 09:40 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)