『剣の歌』 (キムフン箸)

c0077412_10331373.jpg 『칼의 노래 1』(김훈著、생각의 나무)
タイトルを日本語に訳すと「剣の歌」となる。日本が朝鮮にしかけた侵略戦争「文禄の役」(1592年)「慶長の役」(1597年)の際、朝鮮海軍を指揮して日本を退けた武将、李舜臣が一人称で語り進める小説。
感情を露わにしない抑制のきいた簡潔な文によって、戦いに臨む心境、王に対する複雑な思い、部下や民百姓への労り、家族への深い愛、などが語られていくうちに、語り手の人物像が鮮やかに浮かび上がってくる。李舜臣を韓国史上の偉大な英雄として外側から描くのではなく、思索的な一人の人間として内側から描いており、それがこの作品を李舜臣に馴染みのない人たちにも訴える普遍性のあるものにしている。因みに、翻訳がフランス、スペイン、台湾、そして日本でも出ているということだ。

さて、韓国版のこの本は、中身もさることながら装丁も実にすばらしく、黒地に金色で水軍の船団が描かれた表紙に、帯が縦方向(!)についている。こんなところにも作り手の意気込みが見えて興味深い。けれども、この帯にある「21世紀韓国文学の代表小説!」という惹句は、これでいいのだろうか、と考えてしまった。21世紀が始まったばかりの時点で代表的小説が出てしまったら、この先の韓国文学はどうなるのだろう?(2008.7.28記)
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by nishinayuu | 2008-10-25 10:46 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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