『すべては消えゆくのだから』(ローランス・タルデュー著、赤星絵理訳、早川書房)

c0077412_9314931.jpg題名から推察できるとおり、消失の物語である。事は夫婦の一人娘が、ある日突然消えてしまったことから始まった。それによってふたりのそれまでの人生――愛し合い、かわいい子どもにも恵まれて幸せだった日々もすべて消えた。夫は妻のもとを去り、妻は田舎へ移転することによってふたりのつながりは完全に消えたのだった。それから15年。記憶から消し去ったはずの妻から、死ぬ前にもう一度だけ会いたい、という手紙が届く。
イアン・マキューアンの『時間の中の子ども』が蘇った。子どもが突然消えるという痛ましい事件に遭遇して壊れそうになった夫婦が、徐々に生きる力を回復していく、という再生の物語だった。事件の起きた時点まで読んだとき、もう読みたくない、と思ったが、その気持ちをぐっと抑えて読み進めた結果、すばらしい結末に到達できた。そのことを思いながら読み進めたが、そうするだけの価値はあった。一言で言えば、死に行く妻が夫に残したかけがえのない贈り物の物語である。(2008.7.13記)
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by nishinayuu | 2008-10-09 09:44 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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