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『精霊の守り人』(上橋菜穂子著、新潮文庫)

c0077412_114297.jpg「バルサが鳥影橋を渡っていたとき、皇族の行列が、ちょうど一本上流の、山影橋にさしかかっていたことが、バルサの運命を変えた。」という冒頭の文で、読者は一気に物語の世界に引き込まれる。
舞台は、山を背にして大河を抱く都とその周辺。皇子、星読み博士、薬草師、呪術師、などが活躍する古代の物語であり、日本の平安時代あたりを思わせるが、バルサ、チャグム、シュガ、トロガイなどの登場人物の名前や、建国の祖、新皇国といった言葉からは韓半島の古代も連想される。そんないつともしれず、どこともしれない世界には、地霊や水霊の住む域界が人間界と共生しているのであるが、そのせいで皇子チャグムは命を狙われる羽目に陥ることになる。この皇子のために雇われた用心棒・バルサがこの物語の主人公で、物語の主人公には珍しく、おばさんといえる年頃の、日焼けした顔に小じわが見える女性、というところがいい。殺害計画、逃亡、追跡、死闘が繰り広げられる一方で、親子の情、師弟の情、友情、などがふんだんに盛り込まれていて、物語を読む楽しさが堪能できる。
巻末の解説で「歴史や言い伝えの意味する真実、行事に残された手がかりなど、作者の文化人類学的アプローチがよく生きていて……私たちの棲む世界が、私たちの姿が浮き彫りになってくる」と恩田陸が、また「日本独自であると同時に国際的なテーマにつながる本格的なファンタジーの時代が到来した」と神宮輝夫が絶賛している。(2008.7.13記)
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by nishinayuu | 2008-10-04 11:04 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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