『ベラスケスの十字の謎』(エリアセル・カンシーノ著、宇野和美訳、徳間書店)

c0077412_2135886.jpgベラスケスの有名な絵『女官たち』には、解明されていない謎がいくつかある。王と王妃が室内にいる姿ではなく、鏡の中の小さな映像として描かれているのはなぜなのか。王の家族の絵の中にベラスケス自身の姿が大きく描かれているのはなぜなのか。ベラスケスがサンティアゴ騎士団に入団したのは絵が完成した後のことなのに、絵の中のベラスケスの胸に騎士団の十字の紋章が描かれているのはなぜなのか。十字の紋章はあとから書き加えられたと考えられているが、ではいったいどんないきさつでだれが書き加えたのか。それらの謎を、史実とフィクションを交えながら解き明かしていくミステリー・ファンタジー。17世紀のスペイン王宮の雰囲気がかいま見え、絵に描かれた一人一人の人物にも親近感が湧いてくる。
語り手は絵の中でマスティフ犬に足を乗せている少年ニコラス・ペルトゥサト。彼の隣にいるのはマリバルボラという名の、大人になっても背が低いままの女性。この女性の後方に立っている輪郭のはっきりしない男が、物語の中では語り手、ベラスケスと並んで重要な役割を果たしている。
なおこの絵は1656-57年に制作されたもので、原題はLas Meninas。この物語では『侍女たち』となっているが、一般に「女官たち」と呼ばれており、マルガリータ王女を中心に数人の女官たちが描かれた集団肖像画である。(2008.7.2記)
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by nishinayuu | 2008-09-20 21:35 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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